2025年上半期IPOで初値買いが成功した3銘柄とは?

IPOでは公開価格で購入できる投資家は限られます。しかし、初値(上場後に最初に売買が成立した値段)で買うことはそれほど難しくありません。今回は2025年上半期(1月~6月)IPOで初値買いが成功した(初値で買っても儲けが出た)銘柄のうち初値比上昇率上位3銘柄を紹介したいと思います。

なお、ランキングは2025年10月15日の終値をもとに算出し、チャートは10月15日までのデータを反映しています。



初値比上昇率1位:技術承継機構(319A)

製造業の譲り受け、譲り受け企業の経営支援を行う技術承継機構は、2025年2月5日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。初値は2700円で2025年10月15日の終値は8610円と3.2倍となっています。


技術承継機構の足元の業績ですが、25.12期上期(1-6月)の営業利益は5.1億円(前年同期比34%減)となっており、いまのところ低調な推移となっています。

しかし、8月25日に電源機器の設計・製造・販売を行うアルファーシステム(長野県飯田市)の連結子会社化を発表。9月18日には自動車用ブレーキおよびEVの金属ばね部品の製造を行う多賀製作所(埼玉県さいたま市)の子会社化を発表。

さらに、10月1日には、精密切削加工・組立を行う山泰製作所(新潟県南魚沼市)および鋳造を行う山泰鋳工所(埼玉県川口市)の両社の子会社化を発表しています。


M&Aが順調に進んでいることから業績拡大期待が高まり、株価を押し上げていると考えられます。


技術承継機構の上場からに株価の動きについては、「あの株はいまいくら? 第59回 2025年2月IPOの技術承継機構(319A) 1Qは減益着地も株価は上昇」を参照してください。


【技術承継機構の週足チャート】



初値比上昇率2位トヨコー(341A)

工場屋根の補修と屋外インフラのさび取りレーザー装置が2本柱のトヨコーは、2025年3月28日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。初値は871円で2025年10月15日の終値は2384円と2.7倍となっています。


トヨコーについては、老朽化したインフラのサビや塗膜などをレーザーで除去する「CoolLaser」への期待の高まりともに株価が上昇しています。なお、トヨコーの事業については、「レーザーでサビを除去!? 売上構成を大転換する「トヨコー」の躍進」を参照してください。


トヨコーの足元の業績ですが、26.3期第1四半期(4-6月)の営業利益は1億4500万円(前年同期比3.0倍)と大幅な増益となっています。

ただ、1Qに「CoolLaser」の装置を2台納品も、代金回収の遅延が1件生じ、いったん納品した装置を回収する対応をとったとしていますので、「CoolLaser」の1Q業績への収益貢献は限定的です。なお、通期では「CoolLaser」12台の納品を予定しており、今後の収益貢献が期待されます。


【トヨコーの週足チャート】



初値比上昇率3位 JX金属(5016)

非鉄金属大手のJX金属は、2025年3月19日に東京証券取引所プライム市場に上場しました。初値は843円で2025年10月15日の終値は2041円と2.4倍となっています。


JX金属は2025年3月の上場から2025年7月まで株価は初値を下回る800円前後での推移となっており、市場からの注目度も低い状況が続きました。


流れを変えたのは業績修正です。同社は、26.3期1Qの決算発表と併せて、26.3期通期の連結純利益予想(IFRS)を従来の580億円(前期比15.0%減)から700億円(同2.5%増)に上方修正しました。要因としては、スマートフォンおよびAIサーバ用途での情報通信材料セグメントの製品需要が前回予想を上回るペースで拡大していることを挙げています。


この発表後から、同社のAI向け製品への期待が高まり、株価は上昇トレンドに転換。2025年8月から2025年10月まで株価は上昇が続き、2025年10月7日には2339円まで上値を伸ばしました。


【JX金属の週足チャート】



まとめ

2025年上半期(1月~6月)IPOで初値買いが大成功した3銘柄の初値比上昇率1位は技術承継機構の3.2倍(2025年10月15日時点)でした。


2024年下半期IPOで初値買いが大成功した3銘柄の初値比上昇率1位だったHeartseedは2.3倍(2025年1月15日時点)、2024年上半期IPO初値買いが大成功した3銘柄の初値比上昇率1位だったPostprime(198A)は58%高(2024年11月20日時点)でしたので、上昇率は高くなっています。


上昇率が高まった要因としては、日経平均株価が史上最高値を更新するなど、投資環境が良好であることが考えられます。銘柄選別が重要であることに変わりはないものの、早売りに注意すべき局面であると考えます。


日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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