今回解説していく通貨はユーロ円(eur/jpy)です。為替市場ははっきりとした円安・ユーロ高方向で推移しており、足もとではすでにユーロ導入来の高値を更新。今後も押し目買い方針が有効となりそうですが、その際の上値目標や下値目処などを確認しておきましょう。ファンダメンタルズでは欧州中央銀行(ECB)は当面金利据え置きとなる見込みで、日銀の来年以降の利上げスケジュールに注目が集まりそうです。
今後のユーロ円の相場焦点:欧州中銀当局者は現状に満足
まずはユーロ圏の現在の金融政策状況を確認していきます。
欧州中央銀行(ECB)は2022年7月に金融引き締めを開始。2023年9月に政策金利を4.50%まで引き上げて、2024年6月から金融緩和局面へと移行しました。現在の政策金利は2.15%です。
●ECBが金利の据え置きを決めた10月直近会合での声明文では
・インフレ率は引き続き2%の中期目標に近く、理事会によるインフレ見通しの評価に概ね変更はない
・適切な金融政策スタンスを決定するにあたっては、データに基づき、会合ごとに適切なアプローチを採用する
・理事会の金利決定は、今後発表される経済・金融データ、基調的なインフレ動向、そして金融政策の波及効果の強さを踏まえ、インフレ見通しとそれを取り巻くリスクの評価に基づく
などの見解が示されました。
声明文では先行きに金融政策に対する具体的な示唆は盛り込まれませんでしたが、インフレ率は2%の中期目標に近いとしており、ラガルドECB総裁もその後の記者会見で「現行政策は良好な位置にある」と言及。また、他のユーロ圏の中銀総裁からも現在のインフレ推移や金利水準に関して満足している発言が聞かれています。
現状でインフレ目標がほぼ達成できたことから、金融緩和局面はほぼ終了したと見てよさそうです。今後はインフレ動向をにらみながら、リスクに応じて政策を微調整していくことになるでしょう。
ユーロ円の週足分析:押し目買いをする際の下値目処は?
下図のチャートはユーロ円の週足チャートになります。

昨年7月につけた175.43円を上抜けて、足もとでは182円台までユーロ導入来の高値(史上最高値)を更新。チャート下部に追加した「DMI」で確認しても+DI>DI(上昇トレンド)、トレンドの強さを示すADXも急伸しており、現状がはっきりとした上昇トレンドであることが示されています。
今後も基本的には押し目買い方針が有効となりそうですが、足もとの上昇が急ピッチで進んできたことによる反動も気になるところです。
その際の下値目処になりそうな水準としては、前述した175.43円(チャート上の青色実線)や今年7月末につけた安値の169.73円(チャート上の黄色実線)、昨年10月高値の166.69円(チャート上の赤色実線)など。昨年8月から何度もサポートとして機能した水準である155.00円前後も目につきますが、そこまで進むと調整ではなく本格的なトレンド転換の可能性も出てきます。
ユーロ円の月足分析:次の上値目標は190円台
今度はより長期の視点でユーロ円の方向性を確認していきます。下図のチャートはユーロ円の月足チャートです。

はっきりとした上昇傾向を描くようになったのは2020年5月から。さらに2022年以降は上昇トレンドの勢いが強まり、現在は2022年3月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の青色点線)にあるようです。
すでにユーロ導入来の高値を更新しているため、ここからは未知の世界となります。
上値目標はひとまずチャート上のチャネルライン(今月時点で190円台、来月は191円台)となるでしょうか。さらに理論値的には昨年7月高値からその後の安値までの倍返し水準(196.44円付近)も可能性としては出てきます。
今後の取引材料・変動要因をチェック:日銀の追加利上げはすでに織り込み済みか
最後に今後1カ月間の主要な経済指標や重要イベント等も確認しておきます。注目は日本およびユーロ圏の金融政策。欧州中央銀行(ECB)は金利据え置きが見込まれる一方、日銀は前週に「日銀が12月会合で金利を引き上げる可能性が強まった」「高市政権も日銀の利上げ判断を容認する構え」などの報道が伝わっており、追加利上げ期待が高まっています。
もっとも、日銀の追加利上げに関してはすでに織り込んでいる面もあり、ポイントは植田日銀総裁の会見などで来年以降の金融政策に関してヒントが得られるかどうか。来年以降の利上げペースを市場は注視しています。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
・12月18日 ユーロ圏 欧州中央銀行(ECB)、金融政策決定理事会
・12月19日 日本 11月全国CPI
・12月18-19日 日本 日銀金融政策決定会合
・1月7日 ユーロ圏 12月消費者物価指数(HICP、速報値)



