「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は技術承継機構(319A)をみていきます。
同社は製造業と製造業に関連する事業の譲り受けおよび譲り受け企業の経営支援に取り組む連続買収(譲り受け)企業です。なお、買収ファンド(PEファンド)とは違い、譲り受けした会社の譲渡は基本的には想定していないとしています。
連続買収企業は「統合重視ではなく、各社の自主独立を重視」、「グループ内のベストプラクティス横展開に注力」、「譲り受け→譲り受け先のバリューアップ→ キャッシュフロー創出→さらなる譲り受け」が特徴とのことです。
2024年12月27日時点で10社の企業を譲り受けしており、なかでも2019年11月に子会社化した薄膜材料開発製造および冷間鍛造を行う豊島製作所の売上高が大きく、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)の連結売上高に占める割合が10%を超えています。
そのほか、以下を譲り受けています
・樹脂プリント・樹脂加工の東洋マーク
・自動はんだ付装置などの開発製造のFAシンカテクノロジー
・シート材・コイル材切断機の製造販売のエムエスシー製造
・高機能フィルム・金属箔・紙などの加工機・巻取機の設計・製造の篠原製作所
・各種産業機器・機械の部品の切削加工の京和精工と天鳥
・精密板金加工、金属箔加工のキンポーメルテック
・CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製品の設計・製造のエアロクラフトジャパン
・工事用保安機器の製造のティオック
同社の上場については、公開規模が33億円と荷もたれ感のある水準だったものの、2025年の東証第一号上場ということもあり、堅調な初値形成が予想されていました。では、技術承継機構の上場からの株価の動きをみていきます。
技術承継機構の株価推移(上場から2025年5月15日まで)
2025年2月5日に東証グロースに上場した同社の初値は2700円と公開価格2000円を大きく上回りました。初値形成後も堅調な展開となり、14時過ぎに買い気配になるとそのままストップ高(3200円)に到達し、ストップ高のまま上場初日の取引は終了しました。
上場2日目には3900円まで上値を伸ばしますが、その後は売りに押され3000円台前半まで値を下げました。このような状況で、上場後初の決算発表を迎えます。なお、同社では一時的費用による利益のブレを取り除き、定常的なキャッシュフローを表示するために調整後のEBITDAを重視しています。
同社は2025年2月14日に、24.12期通期の調整後EBITDAは21.6億円(前の期比27.1%増)だったと発表しました。既存譲受企業において取り組んできた製品販売の強化やコストの削減が寄与したとのことです。なお、25.12期通期の調整後EBITDA(のれん等償却前利益)予想については24.0億円(前期比11.4%増)としています。
この決算発表を受け、翌17日は買いが殺到し、ストップ高となりました。18日も買いが続き、一時4720円まで上昇しましたが、さすがに2日間で1045円の上昇は行き過ぎであり、19日は売りに押されました。ただ、ここで崩れないのが同社のすごいところです。20日から再度上昇基調となり、25日にはストップ高となり、5000円の大台乗せとなりました。
その後も下値を切り上げる展開が続き、3月18日には6340円まで上昇しました。これが上場来高値(2025年5月15日時点)となっています。ただ、1カ月程度で初値2700円の倍以上の株価となっていますので、さすがにそこからは売りに押されました。トランプ関税ショックも加わったことで、3000円台半ばまで下落しました。その後は下値を切り上げる展開となり、足もとの株価は4000円台半ば~後半で推移しています。
【技術承継機構の日足チャート(上場から2025年5月15日まで)】
今後について
同社は2025年5月15日に25.12期1Q(1-3月)の調整後EBITDAは4.4億円(前年同期比22.0%減)、営業利益は2.9億円(前年同期比27.1%減)だったと発表しました。
減益での着地となったことで翌16日の株価は下落スタート。しかし、売り先行もその後は買いが入り値を上げる展開になりました。これは減益の要因が一時的なものだったためと考えられます。
今回の減益はエアロクラフトジャパンにおいて、1Qに受注見込みであった利益率の高い開発案件が後倒しになったためであり、一時的に利益が伸び悩んだものとしています。一方で、今期中に受注予定であり、通期の業績予想に変更はないとしています。
また、2025年4月にはセンターレス研削・平面研削加工と自社開発製品(「コッくん」シリーズ)の販売を行うミヤサカ工業、金属・非鉄金属の熱処理および表面処理を行うサンテック産業の譲り受けを行うなど、新規の譲り受け活動にも積極的に取り組んでいるとしています。
製造業の連続買収によって成長するビジネスモデルは、買収を実施し、実績を積み上げていかなければなりませんが、上場後の譲り受け活動も順調で2025年5月15日時点で譲り受け企業は12社となっています。今後も譲り受け企業が順調に増加し、業績に貢献してくれば同社の評価も大きく可能性がありますので、引き続き注目していきたいと思います