あの株はいまいくら?

第68回 2025年8月IPOのアクセルスペース(402A) 株価は直近で上場来安値を更新

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は2025年8月に上場したアクセルスペースホールディングス(402A 以下、アクセルスペース)をみていきます。


同社は「AxelLiner事業」と「AxelGlobe事業」の2つの事業を運営しています。


「AxelLiner事業」は、小型衛星の開発・製造・打ち上げ後の運用に関して、打ち上げ機の手配や許認可の取得等の非技術的な手続きも含めて顧客向け小型衛星プロジェクトの開発・運用サービスを提供しています。


「AxelGlobe事業」は、同社グループが保有・運用する光学地球観測衛星コンステレーションが取得した画像データを販売、またはそれらの画像を加工・分析して情報を抽出し、ソリューションとして顧客にサービス提供しています。なお、農業や土地管理をはじめ、環境や金融、報道など、他産業での用途にも拡大しているとのことです。


25.5期の連結売上高構成比は、「AxelLiner事業」83.6%、「AxelGlobe事業」16.4%となっています。


同社の上場については、赤字上場ではあるものの宇宙産業への期待は高く、初値高騰が期待されていました。ではアクセルスペースの上場からの株価推移をみていきます。



アクセルスペースの株価推移(上場から2025年10月30日まで)

2025年8月13日に東証プライムに上場した同社の初値は751円と公開価格375円を大きく上回りました。上場初日は788円まで上値を伸ばしましたが、その後は売りに押され終値は674円となりました。


上場初日こそ高値を付けたあとに売りに押されましたが、上場2日目からは3日連続でストップ高となり、株価は1000円の大台に乗せます。上場6日目(2025年8月20日)には1141円まで上値を伸ばし、この1141円が現時点(2025年10月30日)での上場来高値となっています。


その後は1000円の大台を維持できず、800円~900円台での推移が続きます。次に動きが出たのは、9月10日です。同社は9月10日に、地球観測における国際的な連携を推進する枠組み「地球観測に関する政府間会合 (GEO: Group on Earth Observations)」のアソシエイトに、日本の民間企業として初めて認定されたと発表しました。


この発表を受けて、9月10日は986円まで上値を伸ばしました。さらに9月11日、12日の高値は1000円を超えましたが、終値での1000円の大台乗せとはなりませんでした。


終値で1000円の大台に届かなかったこともあり、その後の株価は下落トレンドとなります。徐々に下値を切り下げ、9月後半には700円台まで下落。このような状況のなか、上場後初めての決算を発表します。


同社は2025年10月15日に26.5期1Q(6-8月)の決算を発表。連結純損益は14.2億円の赤字(前年同期は4.1億円の赤字)となりました。主に将来の衛星開発に関わる研究開発費の増加の影響により、赤字拡大となりました。


この決算を受けた翌営業日(16日)の株価は買いで反応。811円まで上値を伸ばしたものの、その後は売りに押され終値は744円となりました。その後は、下値を切り下げる展開となり、とうとう600円台まで下落。10月28日には安値で597円まで下落し、これが現時点(2025年10月30日)での上場来安値となっています。



【アクセルスペースの日足チャート(上場から2025年10月30日まで)】



今後について

同社株は直近で上場来安値を更新しています。したがって、上場後に同社株を購入した人の多くが損をしている状況です。戻り待ちの売りが多いと考えられますので、今後も上値の重い展開が続くと想定されます。


なお、同社は11月10日に上場から90日が経過します。90日のロックアップについては、公開価格の1.5倍以上で解除となる価格条項が付されていました。公開価格の1.5倍は562.5円ですので、直近の株価水準でも売却が可能です。したがって、90日経過のタイミングで売りが加速することはないと考えられます。


最後に、2025年5月には同じ宇宙ベンチャーのアストロスケールホールディングス(186A)が海外市場で1800万株の公募による新株式発行を実施。10月には宇宙ベンチャーのispace(9348)も公募増資を実施しています。


赤字の宇宙ベンチャーは、どこかで資金調達が必要ですので、増資は仕方のないことです。ただ、宇宙ベンチャーの増資が続いていることはマイナス材料といえます。希薄化リスクという現実を突き付けられたこともあり、宇宙関連への夢が少し覚めてしまったように感じます。




この連載の一覧
第68回 2025年8月IPOのアクセルスペース(402A) 株価は直近で上場来安値を更新
【あの株はいまいくら?】第67回 2025年6月IPOの北里コーポ(368A) 公開価格割れが目前
第66回 2025年7月IPOのヒット(378A) 成熟感を打破できるかに注目
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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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