今回解説していく通貨はポンド円(gbp/jpy)です。テクニカル的は200円の大台をしっかり超えてきたことで上値余地が拡大。当面は押し目買い戦略が有効となるでしょう。ただ、ファンダメンタルズ面では懸念材料もあります。英インフレの下振れで中銀の利下げ観測が高まっているほか、英財政懸念もポンド売り材料として意識される可能性がありそうです。
今後のポンド円の相場焦点:英インフレ率が中銀見通しを下回り、追加利下げ観測高まる
まずは英国の現在の金融政策状況を確認していきます。
英中央銀行(BOE)の金融政策決定委員会(MPC)は2021年12月に金融引き締めを開始。2023年8月に政策金利を5.25%まで引き上げて、2024年8月から金融緩和局面へと移行。現在の政策金利は4.00%です。
●9月に開催された直近の会合では
・7人が据え置きを支持、2人が0.25%引き下げを主張。7対2で金利据え置きを決定
・英国の消費者物価指数(CPI)は2025年9月に4%でピークに達する見込み
・将来の利下げは段階的かつ慎重に実施する必要がある
・BOEの年内利下げ見通しは変更なし
などの見解が示されました。
その後に発表された英CPIがBOEの見通しを下回った(9月CPIは前年比3.8%、同コア指数は前年比3.5%)こともあり、市場では追加利下げ観測が高まりつつあります。金利先物市場では現在、年内にあと1回の利下げを7割程度織り込んだ状態です。
また、ポンド円相場を占ううえでは英国の財政状況にも注意しておきましょう。11月26日にはリーブス英財務相が予算案を発表予定。増税と支出削減を行う意向を示唆しています。これまでも英国の財政懸念はポンド売りの材料として意識される場面が目立っており、今回の予算案をきっかけにポンドが動意づく可能性もありそうです。
ポンド円の週足分析:上昇トレンドが継続、200円の大台も無事に突破
下図のチャートはポンド円の週足チャートになります。
現在も2020年3月安値を始点する上昇トレンド(チャート上の黄色実線)が継続中。さらに2024年10月30日につけた直近高値の199.81円(チャート上の青色実線)や節目の200.00円などをしっかりと上抜けて、昨年9月以降のレンジ相場も終了した格好となりました。
また、チャート下部に追加した「DMI」で確認しても、+DI>-DIで現在が上昇トレンドにあることを示唆。トレンドの強さを示すADXも低位ながら上昇へと転じており、当面は押し目買い戦略が有効となりそうです。
その際の上値目標は昨年7月11日高値の208.11円となるでしょう。
ポンド円の日足分析:今年4月からの上昇トレンドラインが押し目買いの目処に
今度は日足で短期的なトレンドも確認しておきましょう(下図のチャート、21日執筆時点)。
足もとは4月9日安値の184.39円を始点するしっかりとした上昇トレンド(チャート上の黄色実線)にあります。
週足分析で示した2020年3月からの上昇トレンドラインは現在180円前後とかなり離れていることもあり、目先は今年4月からの上昇トレンドラインを押し目買いの目処としたほうがよさそうです。同線は現在198円台で推移。来月にかけて200円台に乗せてくる予定です。
そのほかでは10月2日安値の197.49円(チャート上の青色実線)なども重要な下値の目処として意識されるでしょう。
なお、チャート下部に追加した「DMI」で確認すると現在は+DI>-DI(上昇トレンド)であることを示唆していますが、トレンドの強さを示すADXは上昇が一服。ADXが今後再び上昇していくかについても注目です。
今後の取引材料・変動要因をチェック:日英金融政策に注目
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は日・英の金融政策。日銀は金利の据え置きが濃厚です。同時に公表される展望リポートでは日銀のインフレ見通しを確認する必要があるほか、金融緩和を志向しているとされる高市政権との関係についても注視する必要があるでしょう。
英金融政策委員会(MPC)についてはまだ市場のコンセンサスも定まっていない模様。追加利下げに踏み切るのか、据え置きの場合でも議事要旨で利下げに投票したメンバーが増加するかなど、英MPCの決定次第でポンド相場も大きく上下に振らされるでしょう。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
10月24日 日本 9月全国消費者物価指数(CPI)
10月29-30日 日本 日銀、金融政策決定会合
11月6日 英国 英中銀(BOE)、政策金利発表
11月19日 英国 10月CPI
11月21日 日本 10月全国CPI