魅惑の海外ETF

バンガード・米国増配株式ETF(VIG)、10年超の増配実績のある米国株に投資

米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。


景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回は10年超の増配実績のある米国株で構成する株式指数をベンチマークとするETFをご紹介します。


手厚い配当で株主還元を重視、持続的な好業績が必須

米国市場では手厚い配当で株主還元を重視する銘柄も豊富で、こうした銘柄で構成する株価指数もいくつかあります。代表格はS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出するS&P米国ディビデンド・グローワーズ・インデックスです。


構成銘柄になるには、リバランス参照日までの 3カ月間の 1 日当たり売買代金の中央値(MDVT)が 100 万ドル以上(現在の構成銘柄は50 万ドル以上)といった流動性の条件がありますが、特徴的な要件といえそうなのが10年以上にわたり増配を続けているという点です。配当性向の高さではなく、長期におよぶ株主還元の実績が求められるというわけです。



バンガード・米国増配株式ETF(VIG)はS&P米国ディビデンド・グローワーズ・インデックスをベンチマークとするETFです。企業も株主還元の意欲だけでは10年以上続く増配は実現できません。配当原資を確保するには持続的な好業績が必須であり、構成銘柄が安定感のある優良銘柄になるのは自然な流れです。


VIGのポートフォリオでは、2023年11月30日時点で銘柄数が314に上ります。純資産は844億ドルで、日本円にして12兆円を優に超えています。VIGはETF上場の多いニューヨーク証券取引所アーカに上場しています。


保有上位銘柄の首位はマイクロソフト、アップルが2位

2023年10月31日時点の保有上位10銘柄(時価総額構成比)は、マイクロソフト(MSFT)が5.30%で最も大きく、アップル(AAPL)が4.40%で第2位にランクされています。3位以下はヘルスケアのユナイテッドヘルス・グループ(UNH)が3.64%、石油メジャーのエクソン・モービル(XOM)が3.11%、金融のJPモルガン・チェース(JPM)が2.97%、クレジッドカードのビザ(V)が2.66%、医薬品のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)が2.62%、日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(PG)が2.61%、半導体のブロードコム(AVGO)が2.47%、クレジッドカードのマスターカード(MA)が2.31%で続いています。



セクター別の構成比は、情報技術(IT)が22.4%で最も高く、金融の18.3%、ヘルスケアの15.5%、資本財の13.0%、生活必需品の12.3%、一般消費財の6.8%が続きます。手厚い配当の銘柄でITセクターが首位というのは少し違和感があるかもしれません。



セクター別構成比は情報技術が最大、アップルの増配が10年超に

ITセクターでは利益を配当ではなく投資に回して一段の成長を目指すというイメージが根強いからでしょうか。実際、2年前の2021年10月31日時点の実績では、セクター別構成比の首位は資本財の21.1%で、一般消費財の15.9%、金融の15.6%、ITの13.7%の順でした。


2012年に配当を開始したアップルの増配が10年を超え、2023年から構成銘柄の上位にランクされていることが大きいようです。また、米国ではITセクターの一角がすでに成熟産業の域に入り、配当を通じた株主還元を重視している点も構成比上昇の要因とみられます。


VIGの管理会社は世界3大資産運用会社の一角に位置づけられるバンガードで、管理報酬は純資産価額に対して年0.06%と低い水準です。分配金は年4回という実績が続き、権利落ち日は3月、6月、9月、12月で、2023年も12月まで同じ時期の権利落ちとなっています。


VIGの投資パフォーマンスは良好、2010年以降で11勝3敗

ETFの市場価格動向と分配金をもとに算出する投資パフォーマンスは良好です。前述のように10年を超える増配には長期的な好業績が不可欠であり、構成銘柄の上位には優良銘柄が並んでいます。


好業績を継続する銘柄は株価も上がるため、ベンチマークとなるS&P米国ディビデンド・グローワーズ・インデックスも長期的には上昇しています。2023年末時点のVIGの市場価格は170.40ドルで、2009年末の46.86ドルの3.6倍になりました。



年間のトータルリターンは2010年から2023年までの14年間でプラスが11回、マイナスが3回で、11勝3敗と大きく勝ち越しています。


しかも年間のトータルリターンがマイナスになった2015年はマイナス1.95%、2018年はマイナス2.00%、2022年はマイナス9.86%といずれも1桁台です。逆にプラスでは11勝のうち1桁台だったのはわずか2回だけで、そのほかの9勝はいずれも2桁台に達しています。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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