魅惑の海外ETF

iシェアーズ ラッセル2000 ETF(IWM)、米国の小型株に注目集まる

米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。


景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回は米国の小型株投資で人気のETFをご紹介します。


ラッセル2000指数は米国の代表的な小型株指数

iシェアーズ ラッセル2000 ETF(IWM)はラッセル2000指数をベンチマークとするETFです。ラッセル2000指数は米国の代表的な小型株指数で、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)の傘下にあるFTSEラッセルが算出・運用しています。


FTSEラッセルが算出する指数には、米国株式市場の時価総額の約98%をカバーするラッセル3000指数があり、このうち時価総額で上位1000銘柄で構成するのがラッセル1000指数、1001-3000位の約2000銘柄で構成するのがラッセル2000指数です。



米国株では上位の銘柄は世界中に名が知れ渡っており、圧倒的な時価総額を持ちます。iシェアーズ ラッセル2000 ETF を運用するブラックロックが発表した目論見書によると、2024年3月末時点でラッセル2000指数の構成銘柄は1945で、ラッセル3000指数のほぼ3分の2を占めますが、ラッセル3000指数に占める時価総額の割合はわずか5%。上位1000銘柄が全体の95%を占めているのです。


利下げサイクルで小型株への注目度高まる、事業環境が好転

時価総額では圧倒的に小さい小型株指数ですが、注目度は高まっています。契機となったのは金融政策の転換です。米国の利下げ観測が確実視されるにつれて小型株が買われ、ラッセル2000指数は2024年7月に急騰しました。


米連邦準備理事会(FRB)は2024年9月に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、約4年半ぶりとなる利下げを決めました。下げ幅は0.50%です。米国では利下げサイクルに入ると、中小企業の事業環境が好転するとされています。


まず中小企業は大企業に比べて資金調達の手段が少なく、変動金利の割合が高いとされています。利下げは資金調達コストを引き下げ、金利負担の軽減につながるのです。


また、利下げによる米国の景気浮揚効果も追い風です。米国の大企業は世界市場を相手にビジネスを展開するケースが多いのですが、中小企業は国内市場にビジネスの軸足を置くパターンが多いようです。このため国内景気の回復で業績が好転するとの連想が働きやすいと思います。


純資産額は10兆円規模、構成銘柄の知名度は低く

iシェアーズ ラッセル2000 ETFは、純資産額が約695億ドル(2024年9月末)と日本円で約10兆円に達し、米国でも規模の大きいETFです。運用会社はブラックロックで、ETF上場の多いニューヨーク証券取引所アーカに上場しています。分配方針は年4回です。


規模は大きいのですが、中小企業だけに構成銘柄の知名度は低いと思います。ラッセル2000指数の保有上位10銘柄(時価総額構成比)は、バクサイトが0.51%で最も大きく、FTAIアビエーション(0.50%)、インスメッド(0.43%)、スプラウツ・ファーマーズ・マーケット(0.42%)、ファブリネット(0.32%)、アプライド・インダストリアル・テクノロジーズ(0.32%)、ミューラー・インダストリーズ(0.31%)、フルーア(031%)、エンサイン・グループ(0.30%)、UFPインダストリーズ(0.30%)の順です。



セクター別の構成比は、金融が17.9%で最も高く、ヘルスケアの17.5%、資本財の17.0%、情報技術(IT)の12.8%、一般消費財の10.0%、不動産の6.5%、エネルギーの5.3%が続きます。


投資パフォーマンス、利下げサイクル入りで今後に期待

ETFの市場価格動向と分配金をもとに算出する投資パフォーマンスは総じて良好ですが、米国の金融政策の方向性に連動するパターンが見て取れます。例えば、2022年は年間の市場価格が21.6%下落し、分配金を含めたトータルリターンがマイナス20.5%でした。


2022年は利上げサイクルに入った時期です。FRBはパンデミックを受けて2020年に大幅利下げに踏み切り、2021年も低金利を維持しましたが、2022年にはロシアがウクライナに侵攻したことで原油価格が急騰し、世界的に物価高に見舞われました。


米国の政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は、2022年初めの段階で0-0.25%でしたが、同年末には4.25-4.50%にまで上がっています。



逆にパンデミックが景気を直撃した2020年はiシェアーズ ラッセル2000 ETFのパフォーマンスは良好で、トータルリターンは19.6%に達しています。2020年3月には、パンデミックを受けてFRBが臨時のFOMCを開き、合わせて1.50%の利下げを決め、2022年まで政策金利を維持しています。


過去の経緯を考慮すれば、iシェアーズ ラッセル2000 ETFは利上げ局面でパフォーマンスが悪化し、利下げ局面では逆に向上しています。ということで今後しばらくは小型株指数の動向が注目されそうです。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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