米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。
景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回はテーマ性の高さで注目されるグローバルXのETFをご紹介します。
ベンチマークはIndxx・人工知能&ビッグデータ・インデックス
グローバルX AI&ビッグデータETF(AIQ)はIndxx・人工知能&ビッグデータ・インデックスに連動する投資成果を目指すETFです。この指数はIndxx社が算出・運用するもので、人工知能やビッグデータを開発したり、活用したりする企業で構成されます。ETFはナスダック市場に上場しています。
運用会社のグローバルX・マネジメント・カンパニーは、2008年に米国で創業したETF専門の資産運用会社です。2018年に韓国のミレー・アセット・グローバル・インベストメンツに買収され、ミレー・アセット・グループの傘下に入りました。
グローバルXはテーマ性の高いETFで注目され、米国インフラ開発、ウラン、銅採掘、ロボット&人工知能、リチウム&バッテリーといったテーマのETFが純資産額の上位にランクされています。
グローバルX AI&ビッグデータETFは純資産額が2024年10月18日時点で22億8200万ドルに達しており、上位につけています。純資産額に対する管理報酬は年0.68%。分配は年2回の実績が続いており、権利落ち日は6月と12月に設定されています。
AI技術開発や関連製品・サービスの提供、構成銘柄の要件に
このETFのベンチマークとなるIndxx・人工知能&ビッグデータ・インデックスでは、構成銘柄の要件(2024年1月31日時点)として、◇時価総額が5億ドル以上◇過去6カ月間の1日当たりの平均売買代金が200万ドル以上――を定めています。米国をはじめ、欧州やアジアの主要国の企業が構成銘柄の対象です。
また、事業内容としては、◇自前でAI技術を開発する能力があり、製品またはサービスに直接的に組み込んでいる◇AI技術をサービスとして顧客に提供している◇AIのアプリケーションに利用する半導体やストレージ製品、その他のハードウエアを製造する◇量子コンピューター技術の開発を手掛ける――などを挙げています。
こうした要件をクリアし、グローバルX AI&ビッグデータETFのポートフォリオに組み込まれているのは2024年10月18日時点で84銘柄です。
保有上位10銘柄のトップはアリババ集団、IBMが2位
保有上位10銘柄(時価総額構成比)は、首位が中国のネット通販最大手でAI開発にも力を入れるアリババ集団(BABA)で純資産に対する構成比は3.81%です。2位はAIに加え、量子コンピューターの開発でも先頭ランナーとされるIBM(IBM)で構成比は3.57%。3位はネットワーク機器のシスコシステムズ(CSCO)で構成比が3.46%、4位は法人向けソフトウエア開発のオラクル(ORCL)で構成比が3.45%、5位はクラウドサービスのサービスナウ(NOW)で構成比が3.40%です。
5位以下は、動画配信のネットフリックス(NFLX)の3.36%、中国のITサービス大手で香港に上場するテンセント(00700)の3.34%、SNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)の3.33%、顧客関係管理ソリューションのセールスフォース(CRM)の3.23%、ITサービスのアクセンチュア(CAN)の3.23%となっています。
AIのテーマで注目度が高い半導体のエヌビディア(NVDA)は構成比3.18%で11位。オープンAIに投資し、自社でもAIアプリケーションの「Copilot」を展開するマイクロソフト(MSFT)は構成比2.66%で15位です。
セクター別の構成比(2024年9月30日時点)は情報技術(IT)が65.9%と圧倒的なウエートを占めており、一般消費財が13.2%、コミュニケーション・サービスが10.0%、資本財が9.7%で続いています。国・地域別では米国が67.2%で断トツのトップで、2位以下は中国(10.9%)、アイルランド(4.3%)、韓国(3.7%)、ドイツ(3.3%)、カナダ(3.0%)、日本(2.9%)、オランダ(1.6%)の順です。
投資パフォーマンス、ダイナミックな動き
グローバルX AI&ビッグデータETFは2018年に上場した比較的新しいETFです。注目度の高いテーマのETFだけに、市場価格動向と分配金をもとに算出する投資パフォーマンスはダイナミックに動いています。
2018年に上場した後、2019年には市場価格の上昇率が38.4%、トータルリターンが39.1%に達し、2020年にはトータルリターンが52.7%と50%を超えています。ただ、ハイテク株が低迷した2022年にはトータルリターンがマイナス36.4%に落ち込んでいます。
一方、2022年11月に生成AIのチャットGPTが登場し、生成AIの注目度が急激に高まった2023年にはトータルリターンが55.4%と急回復。2024年も10月18日時点のトータルリターンが21.3%に達し、順調なパフォーマンスとなっています。