魅惑の海外ETF

グローバルX サイバーセキュリティETF(BUG)

米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。


景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回はテーマ性の高さで注目されるグローバルXのETFをご紹介します。


ベンチマークはIndxx・サイバーセキュリティ指数

米国株やETFのティッカーシンボルは銘柄名をベースに設定するパターンが多いようですが、もちろん例外もあります。例えば顧客関係管理(CRM)のプラットフォーム開発最大手でダウ平均の採用銘柄でもあるセールスフォースのティッカーシンボルは社名とはまったく関係のない「CRM」です。


ETFではユニークなティッカーもあります。「SPDR ブルームバーグ・ハイ・イールド債券 ETF」は格付けが投資適格未満の社債で構成する指数への連動を目指すETFで、ティッカーシンボルは「JNK」です。一般的に格付けBB以下の投資不適格といわれる債券をジャンク債(英語ではJunk Bond)と呼びますが、JNKは明らかにジャンク債を意味しています。


今回ご紹介するグローバルX サイバーセキュリティETFのティッカーシンボルは「BUG」。もともとは虫を表す言葉ですが、コンピュータの分野ではプログラムに含まれる誤りや欠陥を指し、パソコンの不具合全般を意味する言葉としても使われています。


大雑把な意味ではサイバー攻撃もバグを引き起こすと言えますし、サイバーセキュリティーとの関連性もあります。何よりも目を引きやすく、覚えやすいティッカーシンボルだと思います。このETFがパフォーマンスへの連動を目標とするのはIndxx・サイバーセキュリティ指数です。この指数はシステムやネットワークへの侵入・攻撃に対処するセキュリティープログラムの開発と管理を手掛ける企業で構成されています。


グローバルXはテーマ性の高いETFで注目され、米国インフラ開発、ウラン、銅採掘、ロボット&人工知能、AI&ビッグデータ、リチウム&バッテリーといったテーマのETFが純資産額の上位にランクされています。グローバルX サイバーセキュリティETFは2024年12月6日時点の資産運用残高が8億4396億ドルに上り、グローバルXが運用するETFの中でも規模が大きいほうです。


純資産額に対する管理報酬は年0.50%です。分配は最低年1回とされており、実績でも年1回です。権利落ち日は例年、12月に設定されています。


国別の指数構成比では米国が69.2%で圧倒的ウエート

このETFのベンチマークとなるIndxx・サイバーセキュリティ指数は構成銘柄について、サイバーセキュリティー技術への需要増が利益につながる企業と定義しています。一例としてシステムやネットワーク、アプリ、コンピューター、モバイル機器などへの侵入や攻撃を防ぐセキュリティー・プロトコル(通信の機密性に関連する機能を実現する技術)を開発・管理するビジネスを挙げています。


さらに構成銘柄の要件として、2024年1月末時点で◇時価総額が2億ドル以上◇過去6カ月間(新規上場銘柄は上場日以来)の1日当たりの平均売買代金が200万ドル以上――などが定められ、世界で40超の市場に上場する銘柄が対象です。ただ、実際の構成銘柄数は2024年12月6日時点で21にとどまっています。



21銘柄のポートフォリオの国・地域別構成比は米国が69.2%と圧倒的なウエートを占め、サイバーセキュリティーに強みを持つイスラエルが14.8%、日本が11.9%、韓国が4.1%で続いています。


構成比1位はフォーティネット、イスラエル勢も上位

ポートフォリオの時価総額構成比では、フォーティネット(FTNT)が6.70%で首位です。フォーティネットはサイバーの脅威に対応するセキュリティーオペレーションなど広範で総合的なサービスを提供しています。


時価総額構成比の第2位はクラウドストライク・ホールディングスで6.55%。「クラウド時代のサイバーセキュリティー」を標榜し、人工知能(AI)を主体に構築されたプラットフォームを展開しています。第3位はサイバー攻撃や情報漏洩から顧客を保護するプラットフォームを開発するZスケーラー(ZS)で、構成比は6.23%です。


第4位はパロアルト・ネットワークス(PANW)で5.99%です。現在の本社はカリフォルニア州に置きますが、もともとはイスラエル国防軍のサイバー部隊の中でも筋金入りのエリートが配属されるといわれる精鋭部隊「Unit 8200」の出身者が創業しました。



5位はイスラエルに本社を置くチェックポイント・ソフトウエア・テクノロジーズ(CHKP)で、構成比は5.73%です。こちらも「Unit 8200」の出身者が1993に創業しました。


「Unit 8200」は、通信を傍受して分析する諜報活動(SIGINT)や暗号解読を手掛けるとされており、出身者の配属された人員のスキルは極めて高いようです。パロアルト・ネットワークスもチェックポイントも「Unit 8200」で兵役を終えた若者を積極的にスカウトしていると言われています。


6位はアンチウイルスソフトの老舗ブランド「ノートン」とクラウドベースのセキュリティーサービス「アバスト」を傘下に持つジェン・デジタル(GEN)で、構成比は5.69%。日本勢ではデジタルアーツが4.68%で10位、トレンドマイクロが4.21%で16位となっています。


投資パフォーマンス、市場価格上昇で押し上げ

グローバルX サイバーセキュリティETFは2019年に上場したETFで、投資パフォーマンスの実績は約5年間です。分配金利回りはそれほど高くはなく、ETFの市場価格が上昇し、トータルリターンを押し上げています。



特に2020年には市場価格の上昇率が69.7%となり、トータルリターンは70%を超えました。米国の株式相場が低迷した2022年はトータルリターンがマイナス33.7%に落ち込みましたが、2023年に41.4%と復調し、2024年も好調に推移しています。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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