魅惑の海外ETF

iシェアーズ・バイオテクノロジーETF(IBB)、米国のバイオ医薬品セクターに投資

米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。


景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回は米国のバイオテクノロジー銘柄で構成する株式指数をベンチマークとするETFをご紹介します。


最先端の技術力を持つ分野に投資、ETFは便利な手段

米国市場では特定の産業分野の株価指数に連動するETFも豊富です。代表格はS&P500の構成銘柄を11セクターに分類したETFですが、さらに細分化したETFもあります。ロボットや人工知能(AI)、サイバーセキュリティーなど多彩ですが、バイオテクノロジーも有望な分野です。


米国市場に上場するこの分野の代表的なETFに「iシェアーズ・バイオテクノロジーETF(シンボル:IBB、以下はシンボルで表記)」があります。ベンチマークはNYSEバイオテクノロジー・インデックス(2023年11月3日付でICEバイオテクノロジー・インデックスから名称変更)です。


米国にはバイオテクノロジーの有望な銘柄が多いですが、重点を置く分野がそれぞれ大きく異なります。ひとつひとつの銘柄を選別しなくても世界最先端の技術力を持つ米国のバイオテクノロジーセクターの成長性を見越し、成長の果実を手にしたいと考えたときには便利な投資手段です。


IBBのポートフォリオでは、2023年12月11日時点で銘柄数が261に上ります。数多くの銘柄に分散投資されていますが、上位10銘柄のウエートが53.9%と過半に達しています。バイオ医薬品を開発する企業が圧倒的な存在感を示しているのです。


アムジェンが構成比で1位、米国を代表するバイオ医薬品銘柄

最も大きなウエートを占めるのがアムジェン(AMGN)で、構成比は8.84%です。米国を代表するバイオ医薬品銘柄で、ダウ平均を構成する30銘柄の一つでもあります。


売上高が最も多いのは関節リウマチ治療薬の「ENBREL(エンブレル)」で2022年12月期の実績では売上高全体の15.6%を占めています。骨粗しょう症の治療薬「Prolia(デノスマブ)」がこれに次いでいます。医薬品セクターでは年間の市場販売額が10億ドルを上回る製品を「ブロックバスター」と呼びますが、アムジェンはエンブレルとデノスマブを含め9種類のブロックバスターを持っています。



IBBの保有上位銘柄の第2位はギリアド・サイエンシズ(GILD)で、構成比は8.72%です。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症やウイルス性肝炎、新型コロナウイルス、がん、肺動脈性肺高血圧症などの治療薬が主力製品です。


抗HIV治療薬の分野に強みを持ち、主力製品には「Biktarvy(ビクタルビ)」、「Genvoya(ゲンボイヤ」、「Descovy(デシコビ)」、「Odefsey(オデフシィ)」などがあります。新型コロナウイルスの治療薬として日本で初めて承認された「Veklury(レムデシビル)」もギリアド・サイエンシズの製品です。ブロックバスターは合わせて7種類です。


リジェネロン、眼疾患やアトピー性皮膚炎の治療薬を開発

3位はリジェネロン・ファーマシューティカルズ(REGN)で、構成比は8.55%です。治療薬の対象となる主な分野は、眼疾患、アレルギー・炎症性疾患、がん、心血管疾患、代謝性疾患、感染症などです。


ブロックバスターは合わせて3種類にとどまっていますが、2022年12月期の売上高では眼疾患の治療薬の治療薬「アイリーア」が96億4700万ドル、アトピー性皮膚炎や喘息の治療薬である「Dupixent(デュピクセント)」が86億8100万ドルと圧倒的に大きく、事業の2本柱になっています。


4位がバーテックス・ファーマシューティカルズ(VRTX)で、構成比は8.52%。売上高を立てている製品は「Trikafta(トリカフタ)」など4種類で、すべて嚢胞性線維症の治療薬です。



IBBの保有銘柄では1-4位の構成比が8.5%を超えており、大きな差はありません。5位以下はシージェン(SGEN)、IQVIAホールディングス(IQV)、バイオジェン(BIIB)、モデルナ(MRNA)、メトラー・トーレド・インターナショナル(MTD)、アルナイラム・ファーマシューティカルズ(ALNY)の順です。


IBBの管理報酬は純資産価額に対して年0.45%です。分配金は年4回という実績が続き、権利落ち日は3月、6月、9月、12月で、2023年も9月までは同じ時期の権利落ちとなっています。


バイオ技術は成長分野、IBBは2010年以降で10勝3敗

ETFの市場価格動向と分配金をもとに算出する投資パフォーマンスは良好で、バイオテクノロジーセクターが成長分野だったことを裏づけています。年間のトータルリターンは2010年から2022年までの13年間でプラスが10回、マイナスが3回で、10勝3敗と大きく勝ち越しています。



特に2012-14年の年間トータルリターンは順に31.6%、65.8%、34.0%に達しました。また、2019-20年のトータルリターンが2年連続で25%を超えるなど爆発力があるようです。


医薬品開発は生成AIの活用が期待される領域です。今後もバイオテクノロジー分野への注目度は高まると見込まれます。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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