米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。
景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回はハイテク株の代表的な株価指数、ナスダック100をベンチマークとするETFをご紹介します。
マグニフィセント・セブンが成長、20年で指数は12倍に
米国経済そして米国株の強みはいろいろありますが、イノベーションを生み出し、ビジネスに結びつける力もその一つです。無数に生み出されるチャレンジが淘汰され、生き残ったハイテク系の事業者はプライベートの資金調達を繰り返した後にナスダック市場への上場を目指すパターンが多いようです。
このためナスダック市場は新興企業向けの市場と形容されます。ただ、アマゾン・ドットコム(AMZN)やアルファベット(GOOGL、GOOG)といったかつての新興企業は巨大IT企業に成長した後もナスダック市場に上場したままで、ナスダック100に採用されています。
GAFAMにテスラ(TSLA)とエヌビディア(NVDA)を加えた7銘柄「マグニフィセント・セブン」はすべてナスダック市場に上場しています。ちなみに「マグニフィセント・セブン」は「七人の侍」を原案とした西部劇「荒野の七人」のタイトルだそうです。
こうした7銘柄がナスダック100の構成銘柄に採用され、株価が上昇したことでナスダック100も右肩上がりで推移しています。ナスダック100は金融株を除く時価総額の大きな銘柄で構成されており、ハイテク株の上昇が指数に反映されやすいのです。
米国市場全体の大型株約500銘柄で構成するS&P500に比べ、安定感には欠けますが、成長力は群を抜いています。実際、S&P500はこの20年間で指数が4.6倍になりました。これだけでもすごいと思いますが、ナスダック市場に上場する全銘柄で構成されるナスダック総合指数は約8倍、そしてナスダック100は約12倍になっています。
代表的なETFは「インベスコQQQトラスト・シリーズ1」
すさまじい上昇率の実績を持つナスダック100をベンチマークとする代表的なETFが「インベスコQQQトラスト・シリーズ1」(シンボル:QQQ、以下シンボルで表記)です。QQQの人気は高く、時価総額は約2093億ドルに上っています。
米国市場に上場するETFの中では、前回にご紹介したS&P500をベンチマークとするETF3銘柄、そして米国市場の大型株から小型株までを網羅する「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(シンボル:VTI)に次いで5番目の規模を持ちます。
運用会社はインベスコ・キャピタル・マネジメントです。グループ会社のインベスコ・リミテッド(IVZ)はニューヨーク証券取引所に上場しており、自らを独立系の投資管理会社と説明しています。ただ、2023年2月17日時点の出資比率はバンガード・グループが11.6%、ブラックロック(BLK)が9.9%、ステート・ストリート・コーポレーション(STT)が5.6%と世界3大資産運用会社がそろって大株主となっています。
QQQの管理報酬は純資産価額に対して年0.20%です。インベスコがQQQ用のポートフォリオとして発表した業種別ウエート(7月21日付)は情報技術が49.6%とほぼ半分を占め、圧倒的に高いです。コミュニケーション・サービスの15.0%、一般消費財の13.7%、ヘルスケアの7.2%、生活必需品の6.8%がこれに続きます。(詳細は円グラフ)
円グラフには金融が0.7%とあり、「金融銘柄を除く」という指数の条件に合致しませんが、これは世界産業分類基準(GICS)の基準が2023年3月に変更された影響です。オンライン決済のペイパル・ホールディングス(PYPL)は変更前まで情報技術セクターに分類されていましたが、変更後は金融セクターの銘柄となりました。ペイパル・ホールディングスの構成比は0.67%で、これが金融セクターの業種別ウエートに表れてしまうのです。
保有上位銘柄はIT大手が勢ぞろい
保有上位銘柄と時価総額構成比(7月21日付)ではアップル(AAPL)が11.62%で首位です。以下、マイクロソフト(MSFT)が9.84%、アマゾン(AMZN)が5.13%、エヌビディア(NVDA)が4.21%、メタ・プラットフォームズ(META、クラスA)が3.51%です。エヌビディアやメタ・プラットフォームズなど、このところ株価が急騰している銘柄がさらに上位に食い込んでいます。
6位以下はテスラ(TSLA)が3.17%、ブロードコム(AVGO)が3.09%、アルファベット(GOOGL、クラスA)が2.74%、アルファベット(GOOG、クラスC)が2.72%、ペプシコ(PEP)が2.16%となります。
分配金は年4回という実績が続いています。権利落ち日は3月、6月、9月、12月で、2023年も例年のペースで分配が行われています。
投資パフォーマンスは圧巻、5年間で市場価格3.4倍に
ETFの市場価格動向と分配金をもとに算出する投資パフォーマンスは、リーマンショック後に驚異的な水準が続きました。年間のトータルリターンが2010年から2022年までの13年間でマイナスになったのはわずか2回ですが、2018年はマイナス0.1%とほぼ横ばいです。
確かに2022年にはマイナス32.5%となり、前回にご紹介した「iシェアーズ・コアS&P500 ETF」(シンボル:IVV)のマイナス18.1%に比べても落ち込みは大きかったです。ただ、その前の市場価格の上昇はすさまじく、2017年から2021年のわずか5年間で市場価格は3.4倍になっています。
また、2022年に急落した後、2023年の戻りも迅速でした。2023年は7月21日までの約7カ月間でトータルリターンは41.4%に達しています。
米国では今後、どのようなイノベーションが生み出され、どのような新興企業が誕生して成長するのかは分かりません。ただ、そうした企業がナスダック市場に上場する可能性が高いと想像することはできそうです。