「業績は好調なのに、なぜ株価が下がるの?」
「今が買い時なのか、それとも様子見すべきなのか…」
トレンドのファッションアイテムを手頃な価格で提供し、幅広い層から支持される「ファッションセンターしまむら」。その運営会社である株式会社しまむら(証券コード:8227)は、長年にわたり増収増益を続ける優良企業として、投資家からも高い評価を受けてきました。
しかし、2025年9月末の決算発表後、株価が一時的に9%以上も急落。好調な業績とは裏腹に、株価が伸び悩む場面が見られます。「過去最高益を更新したのに、なぜ株価が下がるの?」と疑問を感じている投資家の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、しまむらの株価が一時的に下落した理由を深掘りするとともに、企業の基本情報や最新の業績、そして投資対象としてのしまむらの魅力を分かりやすく解説していきます。
しまむらの株価はどうなっている?
まず、しまむらの株価の現状を見てみましょう。長期的に見れば、株価は堅調な右肩上がりのトレンドを描いてきました。
参照:Trading View
しかし、2025年9月29日に2026年2月期の上半期決算が発表された翌日、株価は一時9%を超える大幅な下落を記録しました。
決算の内容自体は、上半期として売上高・各利益ともに過去最高を更新するというポジティブなものでした。好決算なのに株価は下落という一見矛盾した状況が、多くの投資家の関心を集めているのです。
しまむらの株価が下落した3つの理由
では、なぜ過去最高益という好調な決算にも関わらず、しまむらの株価は下落してしまったのでしょうか?考えられる主な理由をいくつか見ていきましょう。
【理由①】市場の期待値に届かなかった
株価を動かすのは業績の良し悪しだけではありません。市場が事前にどれくらいの業績を期待していたかと、実際に出てきた数字との差が重要になります。
今回の場合、しまむらの上半期決算は過去最高益ではあったものの、多くのアナリストが予測していた市場コンセンサス(市場予想の平均)に届きませんでした。
第2四半期(6月~8月)単独で見ると、営業利益が前年同期比でマイナスに転じたことが、投資家にネガティブな情報として受け止められました。「これまで順調だった成長ペースに陰りが見えてきたのでは?」という懸念が広がり、期待していた投資家からの失望売りにつながったと考えられます。
【理由②】コスト増による利益率の低下への懸念
決算内容を見ると、売上は伸びているものの、それ以上にコスト(販売費及び一般管理費)が増加している点が、市場の警戒感を招きました。
近年の賃上げの流れによる人件費の上昇やデジタル販促・イベント強化による広告宣伝費の増加が、利益を圧迫する要因となっています。その結果、上半期の営業利益率は9.2%と、前年同期の9.5%から0.3ポイント低下しました。
「売上は伸びているが、儲けが出にくくなってきている」という状況は、将来の収益性に対する不安材料と捉えられ、株価にマイナスに作用します。
【理由③】在庫の増加と値下げ圧力への警戒感
もう一つ、市場が注目したのが在庫の状況です。8月末時点の在庫は、主力のしまむら事業だけでなく、アベイル事業やバースデイ事業でも前年を上回る水準となっていました。
アパレル業界において、在庫の増加は将来の値下げ圧力につながる可能性があります。売れ残った商品をさばくためにセールを行うと、利益率が低下してしまうためです。特に、バースデイ事業では、夏物商品の値下げを前倒しで行った影響で、粗利益率が低下したと報告されています。こうした状況から、投資家は「下半期以降も、在庫処分のための値下げが増え、利益が圧迫されるのではないか」と懸念した可能性があります。
しまむらの基本情報
しまむらは、1953年に設立された、埼玉県に本社を置く衣料品専門チェーンストアです。売上高ではユニクロ(ファーストリテイリング)に次ぐ国内第2位に位置します。
主力業態である「ファッションセンターしまむら」を中心に「アベイル」「バースデイ」など、ターゲット層の異なる複数のブランドを多角的に展開しています。郊外のロードサイド店舗を主軸としながら、近年は商業施設への出店も強化しているのが特徴です。
しまむらの強みは、トレンドを素早く取り入れた幅広い品揃えと、徹底した低価格にあります。各アパレルメーカーから商品を仕入れるだけでなく、近年はPB(プライベートブランド)や、インフルエンサーなどと共同開発するJB(ジョイントデベロップメントブランド)の強化にも注力しています。
直近5年間における一株あたりの配当金推移は、以下のとおりです。
2021年2月:110円(配当利回り1.9%)
2022年2月:120円(配当利回り2.4%)
2023年2月:130円(配当利回り2.0%)
2024年2月:140円(配当利回り1.7%)
2025年2月:200円(配当利回り2.2%)
しまむら株の今後の見通し
しまむらの株価が一時的に下落した背景には市場の期待値に届かなかったこと、コスト増による利益率の低下、在庫増への懸念など、市場が敏感に察知した結果といえるでしょう。
しかし、これは企業の本質的な強みが揺らいだことを意味するわけではありません。物価高が続く中で、消費者の節約志向はしまむらにとって追い風です。また、PB・JB商品の強化やEC事業の拡大といった成長戦略は着実に進捗しており、10期連続増収や12期連続増配という実績は安定性と株主への積極的な還元姿勢を物語っています。
投資を検討する際は利益率の低下が一時的なものなのか、それとも構造的な課題の始まりなのかを見極めなければいけません。しまむらのビジネスモデルと競争の厳しい小売業界における競争優位性をどう評価するかが問われるでしょう。
短期的な株価の動きに一喜一憂せず、しまむらが長年培ってきた顧客からの強い支持と、着実な成長戦略を信じられるのであれば、今回の株価調整は長期的な視点での投資を検討する良い機会となるかもしれません。