最近では、ハイベータと呼ばれる投資手法が話題になっています。ベータ(β)は金融分野では市場感応度と呼ばれており、市場平均に対してどれだけ動くか?といった指標になります。
それぞれの銘柄にベータ値があり、例えばA銘柄のベータ値が1.5だとすれば、市場平均(日経平均やTOPIXなど)が10%上昇した際に株価は15%上昇するといったイメージです。反対に言えば市場平均が10%下落すると株価は15%下落することになるので、ベータ値が大きいほどリスクも大きいと判断できます。ちなみにリスクというと損のイメージが先行しがちですが、金融分野では変動の大きさを指します。
ベータ値について
ベータ値の計算式はアナリストなどの専門家でもない限り覚える必要はありませんが、次のような計算式で算出されます。
これだけ見ると混乱しそうですが、ざっくりまとめると一定期間の間で日経平均などの指数の上下に対して、それ以上に値動きが良ければベータ値も高くなるといったイメージです。つまり、その時の人気銘柄は基本的にベータ値が高いといえますね。
各社のベータ値は?
前述の説明を踏まえると、相場の上昇局面でベータ値が高い銘柄に投資すれば指数を上回るリターンが期待できます。ということで、どのような銘柄のベータ値が高いのか気になるところ。全銘柄だと膨大なため、時価総額1兆円以上の東証プライム銘柄に絞ってランキングにしてみました。オレンジが上位10銘柄、青が下位10銘柄です。
※弊社スクリーニングにより集計 8月18日時点 TOPIX90日との比較
このような結果となりました。上位10銘柄は直近で投資家人気の高い銘柄がずらっと並んでいますね。キオクシアは2.24とベータ値が高く、TOPIXが10%上昇すれば株価は22.4%上昇する、TOPIXが10%下落したら株価は22.4%下落するといったハイリスクハイリターンの状態です。
一方で下位になると1を大きく下回っていますね。神戸物産はなんとマイナスとなっており、TOPIXが上昇すると株価は下落するという逆相関の状態です。さまざまな事情がありますが、要因としてはTOPIXは外需企業(円安メリット)の影響が大きいこと、反対に神戸物産は内需企業(円安デメリット)であることが考えられます。
ちなみに、ベータ値が1であればTOPIXなみ、1未満になるとTOPIX以下の変動率ということになります。きんでんは0.09なので、TOPIXが10%上昇したとき0.9%程度しか上昇しないということになります。
ベータの活用
前述のとおり高ベータは市場平均よりもリスクが高いため、上昇相場の際により値上がりを求めることができます。半面、相場が急落した際の影響も大きいので注意が必要ですね。積極的に売買する人であれば、高ベータであることを逆手にとって空売りすることも投資手法としては有用といえます。
低ベータは市場平均よりもリスクが低いということになるため、いわゆるディフェンシブ株としてみることができます。相場上昇の局面では思ったほど上昇しないかもしれませんが、相場下落の際には底堅い値動きが期待できます。低ベータかつ好配当といった組み合わせで、守りの投資を考えることもできますね。
ベータ値が高い低いに関しては、どちらが良いというわけではありません。リスクを取りたい場合は高ベータ、反対にリスクを抑えたい場合は低ベータを選ぶといったように、自分の投資スタンスにあった方を選ぶと良いでしょう。なお、ベータには個々の業績、財務、需給動向などが加味されていません。ベータ値が大きい小さいだけでは判断せず、総合的に判断することも大切です。