魅惑の海外ETF

iシェアーズMSCI台湾ETF(EWT)、半導体・AI強者の台湾市場へ投資

米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。


景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回は世界的な半導体・人工知能(AI)産業の中心地として存在感を高める台湾株式で運用するETFをご紹介します。


ベンチマークはMSCIが算出する台湾株指数

台湾は世界の先進的な半導体製造サプライチェーンで中心的な役割を果たしており、ハイテク産業の成長とともに順調な経済発展を続けています。株式投資でその高い成長力を資産形成に生かしたいところですが、日本の個人投資家が台湾証券取引所の個別銘柄を直接買い付けるハードルは決して低くありません。


そこで台湾市場全体にバランスよく投資する有力な選択肢となるのがETFです。今回は「iシェアーズMSCI台湾ETF(ティッカー:EWT)」をご紹介します。


このETFは、世界最大の資産運用会社であるブラックロック・グループが展開する「iShares(iシェアーズ)」ブランドのもとで運用されています。純資産額に対する管理報酬(経費率)は年0.59%です。分配金は年に1回(主に12月)支払われています。


EWTが連動を目指すベンチマークは、世界的インデックス会社であるMSCIが算出する「MSCI台湾25/50インデックス」です。この指数は台湾市場の大型株および中型株を中心に構成されており、台湾株式市場の浮動株調整後時価総額の約85%をカバーしています。世界のIT・ハイテク産業の浮沈を反映しやすい点が大きな特徴です。


構成銘柄上位は世界をけん引するハイテク巨頭

このETFは、台湾市場を代表する77銘柄でポートフォリオが構成されています(2026年10月22日時点)。セクター別の構成比(ポートフォリオウエート)を見ると、情報技術(IT)が72.9%と圧倒的な比率を占めています。次いで金融が15.8%、素材が4.4%、資本財が2.6%と続き、IT・ハイテク産業を軸としながらも金融や伝統産業をカバーする構成となっています。



ポートフォリオの時価総額構成比で突出した第1位となっているのが、世界最大の半導体ファンドリー(受託製造)企業である台湾セミコンダクター(TSMC)です。構成比率は22.0%に上ります。TSMCはアップル(AAPL)やエヌビディア(NVDA)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)など世界の名だたるIT大手の最先端半導体製造を一手に引き受けており、世界のAI・半導体産業の基盤を支える絶対的王者です。


TSMCと蜜月関係にあるエヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は台湾出身で、将棋の藤井聡太六冠が尊敬するAMDのリサ・スーCEOも台湾出身です。ちなみにインテル(INTC)のリップブー・タンCEOとブロードコム(AVGO)のホック・タンCEOはマレーシア出身。米国の大手半導体メーカーのトップはアジア出身者で占められている状態です。


話を戻すと、時価総額構成比の第2位はファブレス半導体大手のメディアテック(聯発科技)で6.1%です。スマートフォン向けSoC(システム・オン・チップ)のシェアで世界トップクラスを誇り、近年ではAI処理能力を強化したチップセットや車載半導体領域へも積極的に事業を拡大しています。


第3位は電子部品および電源管理ソリューション大手のデルタ電子(台達電子工業)で構成比は3.4%です。データセンターやAIサーバー向けの効率的な電源供給システムや冷却技術、さらにはEV(電気自動車)向け部品など、省エネルギー関連技術で世界的に高いシェアを持っています。


第4位は電子機器受託製造(EMS)で世界大手のホンハイ・プレシジョン(鴻海精密工業/Foxconn)で構成比は3.3%です。iPhoneの主要組み立てメーカーとして知られるほか、最近ではAIサーバーの製造受託やEVの受託生産プラットフォーム展開など、ハイテク製造業の枠組みを超えた事業革新を進めています。


第5位は半導体の後工程(封止・テスト)で世界シェア首位を誇るASEテクノロジー・ホールディング(日月光投資控股)で2.9%です。TSMCなどが製造した前工程の最先端チップを高度にパッケージングする技術を持ち、AI時代の半導体製造に欠かせない企業です。


第6位は化学やプラスチック素材大手の南亜プラスチック(南亜塑膠工業)で2.6%。ハイテク株が多い中で、プリント基板材料などの電子材料も手掛ける伝統的な素材大手としてポートフォリオのアクセントとなっています。


第7位は、プリント配線板(PCB)やIC基板大手のユニマイクロン・テクノロジー(欣興電子)で2.1%。第8位も同じくIC基板や銅箔基板を手掛けるエリート・マテリアル(台光電子材料)で2.0%です。これらはAIサーバーや高性能通信機器に不可欠な高多層基板を供給しており、高成長銘柄として注目されています。



さらに第9位には半導体ファンドリー大手のユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC/聯華電子)が1.9%でランクイン。第10位には台湾最大級の金融コングロマリットである富邦金融控股が1.8%で入っています。同社は保険や銀行事業を通じて台湾経済の基盤を支えています。


投資パフォーマンスは長期で力強い右肩上がり

iシェアーズMSCI台湾ETFのパフォーマンスは、世界的な半導体需要の拡大とデジタル化の波に乗って極めて良好に推移してきました。半導体サイクルの影響を受けるため短期的な変動は小さくありませんが、中長期で見ると大きく上昇しています。


年ごとのパフォーマンス(トータル・リターン)を振り返ると、金利上昇やハイテク株安に見舞われた2022年には市場価格が急落しましたが、上昇トレンドに乗った年のリターンは強烈です。2023年は28%超、2025年も28%超で、2026年は10月23日時点で65%に達しています。



TSMCをはじめとするハイテク巨頭の成長をダイレクトに享受しつつ、台湾市場全体へ手軽に分散投資ができる「iシェアーズMSCI台湾ETF」。今後のAI時代やデジタル社会の深化を見据える投資家にとって、選択肢に入ってくるETFかもしれません。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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