米国市場ではETF(上場投資信託)への投資が活発です。大型株に投資するタイプから成長株の指標に連動するもの、米国債の指数をベンチマークとするETFなどさまざまなタイプがあります。
景気やマーケットの動向などに応じて使い分け、リスクを軽減させる手段として活用することも可能です。売買も手軽で、使い方次第で大きな武器になりそうです。そんな海外ETFの内容を簡単にまとめたこのコラム、今回は時代を映し出すテーマ性の高さで注目を集めるグローバルXのETFをご紹介します。
ベンチマークはグローバルX防衛テック指数
米国株やETFのティッカーシンボルは銘柄名をベースに設定するパターンが多いようですが、もちろん例外もあります。ハイイールド債(ジャンク債)ETFの「JNK」、サイバーセキュリティETFの「BUG(バグ=コンピュータの不具合)」など、一目でテーマや事業特性が伝わるユニークなシンボルが存在します。
今回ご紹介するグローバルX 防衛テックETFのティッカーシンボルは「SHLD」です。英語の「Shield(シールド=盾、防御)」を連想させるこの名称は、国家や人々の安全保障を守る防衛・セキュリティー技術を象徴しており、非常に覚えやすくテーマの本質を言い当てたシンボルといえます。

このETFがパフォーマンスへの連動を目指すベンチマークは「グローバルX防衛テック・インデックス」です。一般的な軍需産業に加え、サイバー攻撃対策、人工知能(AI)、ビッグデータ分析、ドローン、ロボティクス、最先端のセンサー、通信ネットワークといった軍事・防衛テクノロジーの領域に強みを持つ先進企業も組み込まれている点が特徴です。
テーマ型ETFに強みを持つグローバルXは、米国インフラ開発やロボット&AI、サイバーセキュリティーなど時代を先取りしたテーマで高い支持を得ていますが、2023年に設定された防衛テックETFも昨今の地政学情勢の激変に伴い急速に存在感を高めています。純資産に対する管理報酬(経費率)は年0.50%となっています。
ウクライナ・中東情勢が証明した「現代戦のハイテク化」
防衛テックETFが投資家から注目を集める背景には、激動する世界情勢と戦争の質の変化があります。2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻、そして中東におけるイランやその傘下勢力とイスラエルによる相次ぐ軍事衝突は、国際社会の安全保障環境を一変させました。
これらの紛争において明確になったのは、現代戦におけるテクノロジーの重要性です。ウクライナ戦線では、小型ドローンによるピンポイント攻撃、衛星通信を用いた指揮統制、AIを活用した戦場データの即時分析が戦況を大きく左右しました。また、中東でのミサイルやドローンによる過密攻撃に対しても、AIと高精度レーダーを組み合わせた高度な防空システムの重要性が立証されています。各国政府は自国の防衛戦略の刷新を迫られており、北大西洋条約機構(NATO)加盟国をはじめとする世界各国が国防予算を増やしています。
国別構成では米国が主体、欧州防衛大手も組み入れ
ポートフォリオの国・地域別構成比(2026年6月末時点)を見ると、軍事・技術革新の中心である米国が62.9%と最大の比率を占めています。しかし、世界の企業を対象としたETFとしては珍しく、欧州の企業が27%超という高い割合で組み込まれている点が特筆されます。欧州諸国は国防費の増額を進めており、欧州地場の防衛テック大手に対する政府の注文が増えているようです。

ポートフォリオの具体的な組み入れ銘柄を見ると、最先端のハードウエアからソフトウエア企業まで多岐にわたります。2026年6月末時点の構成比で最も大きいのは、地対空ミサイルの「パトリオット」や巡航ミサイルの「トマホーク」などを開発するRTX(RTX、旧レイセオン・テクノロジーズ)です。第2位は陸上兵器や原子力潜水艦、ITインフラに強みを持つゼネラル・ダイナミクス(GD)、4位は米主力戦闘機「F-35」を開発するロッキード・マーティン(LMT)、5位にはB-21次世代爆撃機や自律型防衛システムを開発するノースロップ・グラマン(NOC)といった米国の防衛メガ企業が名を連ねています。
テクノロジー企業ではパランティア・テクノロジーズ(PLTR)が構成比で第3位です。米国の軍や情報機関向けにAIベースの統合データ分析プラットフォーム「AIP」や「Gotham」を提供しています。
また、欧州勢も存在感が大きく、BAEシステムズが構成比で6位です。BAEシステムズは英国を代表する防衛企業で、戦闘機やミサイル、潜水艦、陸上兵器など分野は多岐にわたります。8位のラインメタルはドイツ企業で、装甲車両や高精度砲弾、軍用車両、防空システムなどを供給します。特にロシアによるウクライナ侵攻後に需要が急増したようです。

構成比の第9位がイタリアのレオナルド、第10位がフランスのタレスです。英国、ドイツ、イタリア、フランスを代表する軍需メーカーがトップテン入りするなどロシアの脅威が欧州の防衛産業を成長させているようです。
投資パフォーマンスと今後の展望
グローバルX 防衛テックETFは2023年に設定された比較的新しいETFですが、世界的な地政学リスクの高まりと防衛予算増額の波に乗り、力強いパフォーマンスを示してきました。分配金利回りは1%未満と配当インカムを狙う銘柄ではなく、中長期的なキャピタルゲインを目指す選択肢の一つと位置づけられています。

防衛産業への投資はESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から議論されることもありますが、民主主義と平和を維持するための抑止力としての防衛テクノロジーの重要性は高まっています。「盾(SHLD)」というティッカーシンボルの通り、不確実性が増す世界情勢下において、注目に値する銘柄といえるのかもしれません。



