人気だったあの商品のいま

人気だったあの商品のいま 「グロソブ」

人気だった商品の第3弾は、毎月分配型投信の元祖と言われる「グローバル・ソブリン・オープン(通称:グロソブ)」です。設定は1997年12月と、運用開始から約25年の歴史をもつ日本でも屈指の長寿ファンドでもあります。


純資産額は、毎月型だけでみても最盛期の2008年でなんと5兆7685億円!

3カ月決算型などと合わせると、シリーズ合計で6兆円を超えました。前回ご紹介した「ブラボン」とはケタが1つ違いますね。今回、なぜ「グロソブ」がここまで人気を集めたのか説明していきます。


当時はマイナーだった外債投信


97年と言えば平成不況の最中で、アジア通貨危機や山一證券が破たんした年でもあります。そんな不景気の状況で、同年12月に「グロソブ」は誕生しました。当時の投信市場は日本株投信が中心だったようですが、新しい風を吹かせるべく当時では珍しいグローバル債券に投資する毎月分配型として運用が始まります。


当時はまだ海外投資がマイナーだったこともあり、最初は売れ行き好調というよりも徐々に資産を伸ばしていきました。なお、「ボンド」は債券全般を指しますが、「ソブリン」は国債や政府機関債など信用力が高い(高格付)ものに限定されます。

 

※三菱UFJ国際投信から抜粋


「グロソブ」には「ほぼ」と付けましたが、日本で初の毎月分配型は「アライアンス・ハイ・イールド・オープン(現アライアンス・バーンスタイン・ハイ・イールド・オープン)」だそうです。こちらは97年1月に設定されており、「グロソブ」よりも1年近く早いですね。


なお、こちらも98年5月には純資産を3800億円近くまで急拡大させており、結構な人気があったようです。「ハイ・イールド」とあるように、格付けがA未満の債券を中心に投資をしており、「グロソブ」よりリスクが高い商品と言えます。


毎月分配型の火付け役


残高が急拡大し始めたのは2000年を過ぎたあたりでした。98年12月から投信の銀行窓販が解禁されて「グロソブ」の取り扱い社数が増加するなか、ちょうど団塊世代が退職し始めました。そうすると、分配金が多く基準価格の値持ちも良かったため、退職金の運用先として「グロソブ」を買う人がどんどんと増えました。そして、2008年には計6兆円にまで達した流れです。


今はゼロ金利下ですが、2000年以降の日本はすでに長期金利2%以下が定着する時代でした。10年定期預金で元本が2倍になる時代はすでに終わっており、お金をどうやって増やそう?と悩む人が増えた時期でもあります。


2003年以降、世界的な金利低下などを背景に「グロソブ」の基準価格は7000円台後半で安定していました。当時は1万口当たり40円の分配金だったため、1000万円買っていたら毎月5万円程度の分配金(分配率6%)がもらえた計算です。株のリスクは取れない人からすると「年金+αとしてはうってつけ」に見えますよね。


このころから毎月分配型の人気がうなぎ上りとなり、さらに高い分配金が期待できる「新光US-REITオープン(愛称:ゼウス)」や「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド」など当時を席巻した高分配投信が誕生しました。


人気はく落もジェットコースター


前述のように隆盛を極めた「グロソブ」でしたが、リーマンショックを契機として解約が相次ぐことになります。

 

※三菱UFJ国際投信から抜粋


リーマンショック後、為替市場においてドルとユーロが暴落(円高)したことで、両通貨の投資比率が多い「グロソブ」の基準価格も大きく下落しました。また、米国をはじめとして先進国がゼロ金利を導入。金利低下は債券価格の上昇要因ですが、それ以上に円高が進んだため、プラス要因以上に下落してしまいました。


また、リーマンショック後の基準価格下落に伴い、長らく続けていた40円分配金を一時30円に引き下げたことも売りに拍車をかけました。いったん35円に戻ったものの、再び40円になることはなく、今度は20円に引き下げられ、過剰分配是正の流れもあって今では5円です。


リーマンショック落ち着いた後もゼロ金利政策がしばらく続いたため、債券運用難の時代に突入します。信託報酬を差し引くと実質マイナスになる懸念もあり、金融機関も販売を自粛せざるを得ない状況です。それならば、時代に見合った投信に乗り換えてもらったほうが良いということで、2015年4月、ついに毎月分配型の純資産が1兆円を割れることとなりました。


今後はどうなのか?


なんやかんやあってブームが終わった「グロソブ」ですが、解約は続いているものの意外にも毎月分配型の純資産は3000億円程度(22年10月)もあります。分配金も大幅に引き下げられ、22年9月末時点の実績で計算した分配率は年1.2%程度。ファンドの平均最終利回りは3.7%のため、信託報酬年1.375%(税込み)を差し引いても、分配率は実質的な利回り2.3%を上回りません。


こうしてみると時代に沿った運用方針に転換したともいえるので、比較的安定した債券運用のニーズがあれば、いまから「グロソブ」に投資するのはありかもしれません。ただ、債券型投信は数多く存在しており、同じ三菱UFJ国際投信が設定する低コスト投信「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」と比べても、パフォーマンスに大きな差はありません。


※DZHフィナンシャルリサーチ作成

※グロソブは分配金再投資 17年2月27日を10000として比較


一応、「グロソブ」の分配金を再投資した仮定で見ると設定来から2倍以上になっており、投資成果は出ています。アクティブファンドでもあるため、今後インデックス以上の成績が出るかもしれない・・・と思う人は候補に入れても良さそうですね。



日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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