人気だった商品の第2弾は、一時期の高分配ファンドの代名詞でもあった公募投資信託「ブラジル・ボンド・オープン(通称:ブラボン)」です。ここ数年で投資を始めた人にとっては馴染みのない商品かもしれませんが、毎月分配型・年2回型合計で、過去に7800億円近い資金を集めた実績を持ちます。
※大和アセットマネジメントから抜粋
ブラボンとは?
名前の通り、ブラジルのボンド(債券)に投資をするファンドで、主にブラジル国債へ投資をするように設計されています。ブラジルと言えば、ファンド設立当初は、人口が多い、資源国、新興国ならではの高い経済成長が魅力的な国でした。
※IMF予想 22年8月時点
設定日の2008年11月は、ちょうどリーマンショック(同年9月)後の間もない時期です。米国は同年12月に実質ゼロ金利を実施しましたが、一方でブラジルの政策金利は当時12~13%。金利だけで見れば、6年くらいで元本くらいの利息がもらえてしまいますね。
分配金は累計で1万円越え
一時隆盛を極めたブラボンは、設定からの分配金総額が1万口当たり1万円を超えます(22年9月時点で12130円)。設定当初(08年11月)から保有している人は、仮に100万円投資していたら121万3000円の分配金(税金考慮せず)を受け取ったことになりますね。
22年10月4日時点の基準価格は4301円のため、当初の100万円は43万円に大きく目減りしています。一方で分配金と合わせればトータルリターンは64万円(+64%)です。設定後14年間の平均利回りは年4.6%(64%÷14)であり、預金と比べれば投資成果は十分に得られたといえるかもしれません。
最初の分配金は1万口あたり90円だったので、100万円買っていれば1カ月だけで9000円です。翌月から100円(10000円)、120円(12000円)、ボーナス分配で420円(42000円)と、預金とは比べ物にならない分配金がもらえたため、瞬く間に資産残高を拡大させました。
説明が難しいタコ足分配
筆者が証券会社に入社したころには、ブラボンはすでにブームも下火でした。当時の基準価格は7600円程度。分配金は1万口あたり90円だったため、当時の年間分配率は14%程度です。
分配金は利息と違い、ファンドの運用資産から捻出します。基準価格は1万口当たりの運用資産のようなものであり、分配金が1万口あたり90円支払われると基準価格も90円下がります。このため、運用益がなければ通常は分配金を出せません。
それでも分配金を出すとなると、特別分配金(元本払戻金とも)という扱いになります。参考までに、仮にブラボンが投資する債券の最終利回りが10%だとしたら、信託報酬(約1.5%)を差し引くと年率8.5%。基準価格7600円が1年に稼ぐ利息は646円です。12カ月で割ると、1カ月あたりに支払える分配金限度額は53円程度。月90円も出していたら差額の37円を債券の売買益と為替(円安進行)で賄うしかなく、それができなければ、いわゆるタコ足分配として身銭を切ることになってしまいます。
※大和アセットマネジメント
当時はこの仕組みが投資家にはちゃんと伝わっておらず、証券会社の営業員もちゃんと理解している人が少ないといった状況でした。このため、ブラボンを含めて過剰なタコ足分配を是正するため、金融庁が動き出す事態に発展した経緯があります。
今後はどうなのか?
タコ足分配への風当たりが強まった結果、ブラボンの分配金も徐々に引き下げられました。直近では、2020年8月分から20円に引き下げられた後、足元22年9月まで同水準が続いています。
基準価格4041円(8月31日)時点で見れば、分配率は5.9%。8月末時点における投資債券の最終利回りは12.2%となっているので、信託報酬1.5%を差し引いた利回りは10.7%です。これを踏まえると稼げる利回りの中から分配金が支払われており、運用は健全と言えそうです。
意外にも毎月分配型の残高は500億円以上(10月4日時点)あり、今でも多くの投資家が保有しているもようです。憶測ではありますが、流行った当初に買った年齢が65歳なら、もうすぐ80歳です。一方、最近はインデックス投資が主流であり、遅かれ早かれ相続や贈与で次世代に資産が引き継がれることとなれば、資金流出が続くかもしれません。
ただ、運用コストを踏まえても高い運用利回りがあるファンドのため、個人的には健全な運用が続く限り魅力的ではないか?とも思います。分配金が少額しか支払われない年2回型もあるので、ニーズに応じて検討するのも良さそうですね。