人気だったあの商品のいま

人気だったあの商品のいま 「グロイン」

人気だった商品の第3弾は、今でも根強い人気を誇るピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(通称:グロイン)です。2005年2月28日に設定された同ファンドですが、純資産額は現時点(22年10月18日)でも1兆円を超えており、ピクテでは不動の地位を確立している旗艦ファンドです。一時は毎月分配型のみで、なんと純資産3兆円!という時期もありました。

 

※ピクテ・ジャパンより抜粋 青線:分配金再投資 紫線:基準価格 網かけ:純資産



グロインってどんなもの?


世界の公益企業のうち、高い配当利回りが期待できる銘柄に投資をします。公益というと、電力・ガス・水道・電話・通信・運輸・廃棄物処理・石油といった生活に欠かせないサービスを指しますよね。


企業の業績は景気の良し悪しで大きく変わりますが、公益企業の業績は不景気でも比較的安定する傾向にあります。このことから、「グロイン」では安定収益が見込める公益企業に投資することで、長期的な資産拡大を目指そうというコンセプトです。現時点では、組み入れ銘柄はほぼ欧米(米国7割、欧州2割強)で構成されています。


高分配ファンドの代表格


2000年代に設定された毎月分配型の特徴にもれず、「グロイン」もかなりの高分配ファンドであり、今もその水準は高いです。22年10月18日時点の基準価格は2682円ですが、1万口当たりの分配金は20円。分配率は8.9%とかなり高いですね。月次レポートを参照すると、22年9月末時点では組み入れ銘柄の予想平均配当利回りは3.0%です。


運用コストは最大1.81%のため、「グロイン」購入者に還元できる実質的な配当利回りは1.2%です。配当利回りだけで分配金を支払おうとすると、毎月1万口当たり2円が妥当な計算になるため、今の10分の1とかなり少ないですよね。20円分配でもなかなかですが、これでもだいぶ引き下げたほうで、基準価格の兼ね合いもありますが50円だった時期もあります。


なお、毎月20円を支払おうとすれば、18円分は株の値上がりや為替差益で毎月稼がないといけません。毎月必ず基準価格を1%値上がりさせるとトントンになりますが、かなりハードルの高い目標です。


成績は優秀

1万円から始まったものが現時点では2682円まで下落しており、基準価格だけ見ると「なんだこれは!?」と思ってしまうかもしれません。しかし、毎月分配=悪という風潮がありつつも、設定来から見るとしっかり成績を残していることが分かります。


※ピクテ・ジャパン提供データを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

22年10月18日時点


2005年2月末は1ドル105円、1ユーロ138円だったので、円安による基準価格の押上げがなかったとしてもプラスとなりそうです。ただ、分配金を再投資した場合、しなかった場合でパフォーマンスの差が大きく開いており、毎月分配型の投資効率の悪さが如実に表れてしまっていますね。


今後はどうか?


22年は世界的な株安となり、資源高の影響を受けて公益企業の業績も悪化しています。しかし、分配金再投資で見ると直近一年は基準価格が上がっているように見えます。 


※21年9月末を10000としています


上の図は、「グロイン(1年決算型)円コース」と「グロイン(1年決算型)」の21年9月末~22年9月末までのパフォーマンスを比べたものです。どちらも基本的に分配金を出さないため、分配金再投資と同じように見ることができます。


「グロイン円」は為替ヘッジを活用しているため、円安の影響はほとんど受けません。

ヘッジコストの負担もあるとは思いますが、1年間のパフォーマンスはほぼ横ばいです。一方、ヘッジなしの「グロイン」は2割以上値上がりしていることが分かります。


「公益企業は不景気でも業績が安定しやすい」というと聞こえはよいですが、どんなファンドでも、良い時悪い時の波があるということが分かりますね。コンセプト上、公益企業にしか投資をしていませんが、一方でエネルギー価格の高騰が収まるにつれて投資先の株価も回復してくると、今後のパフォーマンスも改善しそうです。


インデックス型ではないので運用コストが高いと感じる人もいると思われますが、過去の実績などを踏まえると、長期的な資産形成には向いているファンドと言えそうです。ただ、効率を考えると「毎月分配型」ではなく、「1年決算型」を検討したいところですね。



日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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