知っておきたいリスクの話

【知っておきたいリスクの話】第6回「投信選びの必需品~シャープ・レシオ~」

【知っておきたいリスクの話】では、これまでボラティリティやベータ(β)値について、実践的な内容を中心にみてきました。

今回は投資信託選びの必需品ともいえるシャープ・レシオをご紹介します。シャープ・レシオをみれば、「本当にそれがよい投資信託なのか?」を判断することができます。



リスクとリターンはセット

例えば、大損する可能性がある投資信託Aと、大損する可能性はほとんどない投資信託Bがあるとしましょう。

過去1年間で投資信託A、投資信託Bともに10%のリターンだったとします。リターンの観点のみだと、「投資信託Aと投資信託Bはどちらも10%のリターンをあげた良い投資信託である」と判断してしまう可能性があります。


ここにリスクという観点を加えると、「大損する可能性があった投資信託Aよりも投資信託Bのほうが良い」と考える人がほとんどでしょう。


このようにリターンだけではなく、リスクをみるのも重要です。実際の投資信託も「大損する可能性がある、もしくはない」と表記されていればわかりやすいですが、そんな表示はされていません。ではどうやって、リスクとリターンをセットでみればよいのでしょうか?確認すべきはシャープ・レシオとなります。



シャープ・レシオと計算式

シャープ・レシオはリターンとリスクの関係をみるものです。計算式は以下となります。


シャープ・レシオ=(投資信託のリターン-無リスク資産の利子率)÷標準偏差


「投資信託のリターン」は対象期間の平均リターンであり、大きいほど良いといえます。

「無リスク資産の利子率」とは、元本保証(元本割れリスクがない)の商品の利率と考えてください。一般的には短期国債の利回りなどが使用されます。なお、安全資産の利子率と言い換えることもできます。


この「投資信託のリターン-無リスク資産の利子率」を超過収益率といいます。「全体のリターン」から「ノーリスクで得られるリターン」を差し引き、「リスクをとったからこそ得られたリターン」だけ抜き出すというイメージです。


ただし、日本国内では普通預金などの利息は無いに等しい状況が続いています。したがって、無リスク資産の利子率は考慮せずに計算しても結果に大きな相違はないと想定されます。今回は無リスク資産の利子率は考慮しない以下の簡便な式でシャープ・レシオの計算例をみていくことにします。


シャープ・レシオ=投資信託のリターン÷標準偏差


「標準偏差」は、リターンのブレの大きさを示しており、ボラティリティとも呼ばれます。ボラティリティについては、【知っておきたいリスクの話】第1回「価格変動の観点から初心者が避けるべき株」で出てきました。

ボラティリティは価格変動の大きさを示していますので、価格変動が大きい(リスクが高い)、小さければ価格変動が小さい(リスクが低い)と判断します。標準偏差も同様に大きければリスクが高い、小さければリスクが低いとみることになります。



シャープ・レシオの計算

例えば、以下の投資信託があったとします。



シャープ・レシオを計算すると以下になります。



シャープ・レシオはリスクを取ったことによって得られたリターンを測るものであり、高ければ高いほど良いと判断できます。上記の場合、リターンが一番低い投資信託Cが最も良い投資信託となり、リターンが一番高い投資信託Bが最も悪い投資となります。


シャープ・レシオはその投資信託のリスク(標準偏差)とリターンの関係を一目で確認できますので、簡単に優劣を判断することができます。

注意点としては、あくまでも過去の実績であり、将来を保証するものではないということです。有用ではありますが、過信しすぎるのは良くないと覚えてください。



最後に

標準偏差など計算できないとしても大丈夫です。金融機関がサイト上にシャープ・レシオを掲載してくれています。例えば、ゆうちょ銀行のウェブサイトの「取扱ファンド一覧」には、取り扱う投資信託のリターン、標準偏差、シャープ・レシオを掲載しています。


「投資信託は種類が多すぎてどれを選んだらいいかわからない」という声をよく聞きます。まずは難しく考えずに、シャープ・レシオの高い投資信託を探してください。そこからその投資信託がどのような資産に投資しているのかや手数料など、詳しくみていけばよいと考えます。結果的にそれが近道になると思います。

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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