前回の【知っておきたいリスクの話】第2回「TOPIXを基準に保有株のリスクを知る」では、全体相場(TOPIX)と比較してリスクが高いか低いかを判断する指標であるβ値(ベータ値)をご紹介しました。今回はそのβ値をみる際に、併せて確認すべきものである「決定係数」をご紹介します。
決定係数の見方
決定係数は算出されたβ値がどれくらい信頼できるかを表しています。決定係数は0から1までの値をとり、1に近いほど算出されたβ値が信頼できるといえます。
【決定係数】
では、前回と同様にトレーダーズ・ウェブの個別銘柄のテクニカルでソニーグループのβ値と決定係数を確認しましょう。今回のソニーGのβ値(TOPIX90日)は1.44であり、その横の決定係数は0.60と記載してあります。
決定係数は1に近いほど信頼できるといいましたが、0.60という値は判断に迷いますね。一般に0.6以上であれば信頼できると判断する場合が多いようです。そして、0.8以上であれば非常に信頼できると判断してもよいでしょう。
逆に言えば、0.6より小さい場合はあまりあてにならないということですが、厳しすぎると対象が絞られてしまう可能性があります。もう少し甘めにみて、0.5以上は信頼できると判断してもよいと考えます。
決定係数と上場市場
決定係数が高い銘柄を見つけようとする場合、重要なことはβ値を算出するときに使用する株価指数です。
TOPIXを使用して算出したβ値は東証プライム市場の上場銘柄と相性が良い(決定係数が高い)と考えられます。日経平均株株価を使用して算出したβ値は日経平均採用銘柄と相性が良い(決定係数が高い)と考えられます。
したがって、東証スタンダード市場や東証グロース市場に上場している会社のβ値をTOPIXや日経平均株価を使用して算出した場合、決定係数は低くなると想定されます。
実際に、東証グロース上場のBASE(4477)のTOPIXや日経平均株価を使用して算出したβ値と決定係数をみてみましょう。β値は2.0~2.1程度となっています。決定係数については0.17~0.26とかなり低い結果となっています。
次に東証プライムに上場している会社で時価総額が大きい4社のβ値と決定係数をみておきましょう。
トヨタのβ値は1.2ですので、他の3社よりもTOPIXに近い動きをすると考えられます。なお、決定係数は0.52であり信頼できなくもないという水準です。
NTTのβ値は0.44と低いので、相場の先行きが不透明な時にリスクを抑える目的で投資できそうです。しかし、決定係数が0.16と低いので、β値の信頼性は低いと考えられます。
最後に
このようにβ値と決定係数はセットでみなければなりません。ただ、どちらも見方は単純ですので難しく考える必要はありません。
β値は高ければ高いほどリスクが高い、低ければ低いほどリスクは低いといえます。まれにマイナスになりますが、この場合は反対の動きをすると覚えてください。
決定係数は1に近いほど算出されたβ値が信頼でき、0に近ければ信頼できません。そして、0.5~0.6以上であれば信頼できると覚えてください。
次回は、人気の高いレバレッジ型上場投資信託のβ値と決定係数をみてみようと思います。