過去の「あの銘柄を買ってみた!」で取り上げた銘柄について、その後の値動きがどうなったかを追跡します。
今回は、2025年3月に取り上げたテンシャル(325A)について見ていきます。
短期間で株価が急騰
テンシャルは値動きを見た期間(2025年3月5日~4月7日)では、1カ月で約15%の下落と大きく水準を切り下げました。しかし、その後は基調が大きく変化しています。2025年4月7日の終値は1934円でしたが、6月17日の終値は6090円と、株価が3倍増となっています。
上方修正が好感されて連日のストップ高
テンシャルは6月13日の1Q(2-4月)決算発表時に、通期の見通しを上方修正しました。答え合わせでも触れましたが、テンシャルは決算期を変更しています。決算期の変更があると、投資家目線では前年との比較が容易ではなくなります。2025年2月に上場したばかりで過去のデータも少ないだけに、今回の上方修正はポジティブサプライズと受け止められました。
発表を受けた6月16日と17日は取引時間中に値が付かず、ストップ高比例配分となりました。2日連続のストップ高比例配分は、かなり強い動きです。
上方修正の理由の中には、「5月から6月にかけてのギフト需要も想定以上に取り込むことができている」との記載がありました。5月には母の日、6月には父の日があり、テンシャルが上方修正を発表したのは父の日(6月15日)の2日前でした。テンシャルの主力商品「BAKUNE(バクネ)」は、高価格ではありますが、母親・父親へのプレゼントには適した商品といえます。
今回の上方修正により、営業利益予想は従来の3億9000万円から6億4900万円へと大幅に引き上げられました。今年の夏も猛暑が予想されています。体調管理の重要性についてメディアで特集する機会が増えそうな点は、リカバリーウェアを販売する同社にとって追い風と考えられます。
新興市場の活況も株高をサポート
上方修正は株式市場で好感される材料ではありますが、発表を受けた株価が連日のストップ高となったことに関しては、新興市場が活況となっていたことも大きいと考えられます。
トランプ政権の不確実性が強まったことで、日本株の物色では内需優位の様相が強まりました。その中で、グロース250指数は4月中旬以降に騰勢を強めており、上値追いの流れが続いています。
グロース市場で「買える銘柄探し」の動きが盛り上がる中、テンシャル株も4月中旬以降は見直し買いが入っており、初値の2600円や上場直後の3月3日につけた3085円を上回りました。チャートの形状が良くなってきたところで好業績が確認できただけに、上方修正発表後には値幅を期待した買いが殺到しました。
ここからは出来高に注目
2日連続でストップ高となった後、6月18日の株価(終値:5910円)は3%近い下落となりました。この時点でPER(株価収益率)は90倍台と、業績好調を加味しても過熱感はありますので、いったんはクールダウンの動きが出てくるかもしれません。
ここからは出来高に注意を払う必要があります。グロース市場の銘柄は熱しやすく冷めやすい傾向がありますので、上昇一服感が出てきた際には失速の度合いが大きくなる可能性があります。
ただし、高くなったところでも買いたい投資家が多い場合は、マイルドな下げになる、もしくはほとんど下げずに改めての買いが入るといった展開も期待できます。一方的に下げ続けるケースでは買い手が離散するため、出来高が膨らみません。
水準的には心理的節目の5000円がポイントとなりそうです。上方修正前の株価も高値圏で推移しており、連続ストップ高になる前にテンシャル株を取得した投資家には含み益が発生している状況です。ただ、急騰の反動が大きく出てくるようだと利益確定売りが急がれます。
上方修正発表の翌営業日にストップ高となった6月16日の終値が5090円ですので、これを下回って5000円を割り込んでしまうようだと天井感が出てきます。この先は、5000円より上が定着して出来高が厚みを増してくるかどうかが注目されます。