前回の【知っておきたいリスクの話】第1回「価格変動の観点から初心者が避けるべき株」では、個別銘柄の価格変動(ボラティリティ)に着目した選別方法をご紹介しました。今回は全体相場(TOPIX)と比較してリスクが高いか低いかを判断する指標であるβ値(ベータ値)をご紹介します。
β値とは
β値は株価指数(日経平均株価やTOPIX)に対する、個別銘柄の株価の感応度ということができます。
TOPIXを使用して算出したβ値が1の場合はその銘柄は理論上TOPIXとほぼ同じ割合で動くことになります。 では具体的にみていきます。
以下はTOPIX、三菱マテリアル(5711)、日本製鉄(5401)の2022年4月~7月の日足チャートです。ちなみに、β値(TOPIX90日で算出)は、三菱マテリアルが0.99、日本製鉄が1.02とほぼ1となっています。
【TOPIX】
【三菱マテリアル】(β値:0.99)
【日本製鉄】(β値:1.02)
どうでしょう?見比べるとほぼ同じような動きになっています。とくに日本製鉄はTOPIXとチャート形状も近いように思われます。
このようにβ値がほぼ1の銘柄の動きはTOPIXと近くなります。TOPIXが10%上昇すればその銘柄も10%上昇、TOPIX が10%下落すればその銘柄は10%下落するイメージです。
β値は高ければよい?
β値が1より大きければβ値を算出するときに使用した株価指数(ここではTOPIX)よりもリスクが高い(ハイリスク・ハイリターン)となり、 1より小さければβ値を算出するときに使用した株価指数よりもリスクが低い(ローリスク・ローリターン)と判断できます。
2022年7月28日時点において東証プライム上場企業でβ値(TOPIX90日で算出)が2を上回っていたのは以下の11社となります。β値が2の銘柄はTOPIXが10%上昇すれば20%上昇し、TOPIXが10%下落すれば20%下落するイメージです。したがって、ハイリスク・ハイリターンといえます。
7月28日時点において東証プライム上場企業でβ値(TOPIX90日で算出)が0.2を下回っていたのは以下の15社となります。β値が0.2の場合はTOPIXが10%上昇すれば2%上昇し、TOPIXが10%下落すれば2%下落するイメージです。こちらはローリスク・ローリターンですね。
上記の結果で注目してほしいのは鳥貴族ホールディングス(3193)です。鳥貴族HDのβ値はマイナスとなっています。β値がマイナスであれば株価指数と逆の動きをする傾向があるといえます。β値が-0.1の場合はTOPIXが10%上昇すれば1%下落し、TOPIXが10%下落すれば1%上昇するイメージです。
個別銘柄のβ値を確認しよう
個別銘柄のβ値(TOPIX90日)はトレーダーズ・ウェブの個別銘柄のテクニカルで確認することができます。以下はソニーグループのページです。この日のソニーGのβ値(TOPIX90日)は1.48ですので、TOPIXよりも値動きが大きい傾向にあるということがわかります。
最後に
β値は過去の実績をもとに算出されますので、将来必ずしもそうなるというものではありませんが、傾向をみる上で非常に有効です。
投資初心者だからといってβ値が低い銘柄に投資すべきというわけではありません。重要なことは、自身の投資する株式と全体相場の関係性を知っておくことです。
β値を把握しておけば、「TOPIXの動きから、なんとなく保有株の状況をイメージする」ことが可能になります。投資経験を積むことで、全体相場の上昇が続くと見込めば、β値の高い銘柄に投資し、逆に全体相場の下落が続くと見込めば、β値の低い銘柄(またはβ値がマイナスの銘柄)に投資するといった機動的な取引もできるようになると思います。
次回はβ値をみるときにセットでみるべきものである「決定係数」を取り上げます。