株式初心者のためのPER入門

日経平均のPER

日経平均株価にもPERはある


PER(株価収益率)は、株価の割高・割安(人気・不人気)を判断するのに使い勝手の良い指標ですが、個別株だけではなく、日経平均株価のような指数にもPERという概念は存在します。


日経平均株価は日本経済新聞社が選別する225社の株価をもとに算出されます。日本経済新聞のマーケットデータ面 「市場体温計」の欄に、日経平均採用銘柄のPERが掲載されています。ちなみに、2023年6月23日(金)時点のPERは15.05倍となっています。


指数の急上昇でPER面では割安とまでは言えない水準に


指数においても数字の捉え方は個別と同様で、高ければ割高(人気)、低ければ割安(不人気)と判断できます。以下の表では、2022年12月から2023年5月までの月末時点、および直近の日経平均株価とPERを載せています。日本経済新聞社では過去のデータについても公表しています。


これを見ると、今年の4月までは12~13倍近辺で推移していたのが、5月末には14倍台と水準が切り上がってきたことがわかります。そして、6月に入って13日には15.05倍と15倍台に乗せました。6月16日には15.33倍まで上昇しましたが、この後、日経平均の急ピッチな上昇にブレーキがかかってきたことから、PERにも上昇一服感が出てきています。


個別株でPERが12倍から15倍になるというのは、珍しい動きではありません。ただ、日経平均構成銘柄には様々な業種があり、足元の業績が良いものもあれば、そうでないものも含まれています。ですので、日経平均のPERが短期間で12倍台から15倍台まで上昇するというのは、結構なインパクトがあります。


PER15倍は割高とまでは言えないまでも、割安ではありません。5月から6月にかけて日経平均が大きく上昇した要因には、割安株を好むウォーレン・バフェット氏の来日や、東証によるPBR1倍割れ是正の働きかけなど、日本株の割安さにスポットが当たったという側面もあります。6月後半になって日経平均が調整色を強めていますが、PER面での割安感がやや薄れてきたことも買いが一巡した要因になっているかもしれません。


PERが分かればEPSも算出できる


PERの計算式は PER(倍)=株価 ÷ EPS(1株純利益)となります。


PERが何倍かということを継続的にウォッチしていくことも重要ですが、先の予想をしていくには、PERを算出する要素となるEPSにも注目しておいた方が良いでしょう。個別企業のEPSは決算短信などを見れば確認できますが、日経平均という指数のEPSというのはピンとこないかもしれません。しかし、株価とPERが分かれば EPS=株価 ÷ PER の計算式でEPSを算出することができます。


2023年6月23日の日経平均終値は32781.54円、この日のPERは15.05倍でしたので、EPSは32781.54 ÷ 15.05=2178.18円と計算できます。このEPSの水準をざっくりでも把握しておくというのは、日経平均の上値メドや下値メドを探っていくのに役に立ちます。


日経平均は上場来高値を更新できる?


日経平均が3万円の節目を超えて大きく上昇してきたことで、市場では「上場来高値を更新できるか?」という点に注目が集まっています。日経平均の上場来高値は1989年につけた38915.87円となります。


以下は、2016年から2022年までの年末値と、2023年の月末値および直近の日経平均株価に関して、PERからEPSを逆算したものとなります。



株価の水準を高めるには、PERとEPSのどちらか、もしくは両方が上昇する必要があります。


PERに関しては人気度合いを表す側面もありますので、12倍で評価されるか15倍で評価されるかは、その時々の状況に左右されます。そして、指数のPERになると、世界の中で日本株の人気が高まるかどうかがポイントとなります。直近でPERが切り上がった要因としては、上述のバフェット氏の来日のほか、日銀の金融緩和スタンス継続、政治の安定など、日本という国がクローズアップされる複数の要素が背景にあったと考えられます。


とはいえ、PERをコントロールすることは難しいので、株高が持続するかどうかを見ていくには、EPSが上昇していくかが重要となります。2017年の年末時点のPERは15.06倍で、直近の15.05倍と同程度でした。ただ、日経平均株価の水準を見てみると、当時と直近では1万円近い開きがあります。2017年と比べてEPSが大きく増加していることから、同じPER15倍まで評価されたとしても、株価の水準が大きく変わってくるのです。


2023年6月23日時点でのEPS(2178.18円)をもとに、この時点で上場来高値(38915.87円)をつけたと仮定するとPERは17.9倍となります。今まで以上に日本の成長性や変化が期待されるような状況にならないと、日経平均のPER18倍が許容されることは難しいでしょう。


そこで、EPSからアプローチしていくと、上場来高値がPERで12倍となるEPSの水準は、38915.87円 ÷ 12の計算で約3243円。15倍だと約2594円となります。3243円は現状の2178円からは49%上、2594円は19%上の水準です。


この先、日経平均のEPSが現状から2割近く拡大する期待が高まるようなら流れ次第で、5割近く拡大する期待が高まるようなら、無理なく上場来高値の更新が視野に入ってきます。企業業績を多く確認する時期に、日経平均のEPSの水準も変化が大きくなると考えられます。表を見ると今年は5月にEPSの明確な上昇が確認できますが、4月末から5月にかけては本決算が多く出てきました。次は1Q決算を多く消化した後、8月末辺りのEPSの水準が注目されます。

日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

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