不動産各社が本決算を発表
4月に、大手不動産株5社(三菱地所、三井不動産、住友不動産、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングス)のPERを比較しました。
その後、各社が新しい期の見通しを発表しましたので、情報をアップデートしたいと思います。
各社最終増益を達成し今期も増収増益計画
不動産大手5社は終わった期の24.3期はそろって純利益ベースで増益を達成しました。そして、新しい期の25.3期に関しても、そろって増収増益を見込んでいます。
ただ、いずれも一桁台の増収増益計画にとどまっています。保守的とも言えますが、どの会社も25.3期の事業環境が24.3期と比べて著しく良くなる想定ではないことがうかがえます。
本決算に対する株式市場の評価はまちまち
各社とも今期の増収増益計画を提示しましたが、これに対する市場の反応はまちまちとなりました。決算発表直後の株価が買いとなったのは野村不動産と住友不動産の2社となりました。一方、三井不動産、三菱地所、東急不動産の3社はいずれも5月10日に決算を発表しましたが、発表翌営業日の13日は3社とも大幅安となりました。
また、上の表では前回4月2日と5月15日の株価を比較していますが、4月2日との比較で株価が上昇しているのは、三菱地所と野村不動産の2社のみとなっています。住友不動産は決算発表翌日の株価は大きく上昇しましたが、4月2日の株価と見比べると、大きく水準を切り下げています。
次の表は各社が今年の高値をつけた日になります。野村不動産は決算発表日が4月25日と最も早く、決算反応も良かったことから5月に入って高値をつけました。ただ、他の4社は3月後半から4月前半に高値をつけた後は伸び悩んでいます。
売上高急拡大に対する期待はやや後退
本決算は情報量が多いですし、各社の決算が出そろったところで横の比較をすることで、業界のトレンドをつかむことができます。
4月2日と5月15日の株価を見比べると、PERでは三菱地所>三井不動産>住友不動産>東急不動産>野村不動産の順に変化はありませんでした。また、PERの水準自体も各社そこまで大きな変化はありませんでした。本決算では不動産デベロッパーに対する期待値があまり変化しなかったと言えます。また、5社の中で評価を大きく高めた、もしくは落とした企業もなかったと考えられます。
増収増益見通しに対する株価の反応がそこまで良くなかった理由としては、前回挙げた「トップライン(売上高)の増加期待が高まるか」という点に関して、今回の本決算ではその期待がそこまで高まらなかったことがあるように思われます。
この先は、「日銀の金融政策が不動産株を刺激するか」「早い時期に上方(下方)修正が出てくるか」といったことが不動産株を見る上でのポイントとなります。今期見通しの増収率が最も高い三井不動産(+9.1%)や、増益率が最も高い住友不動産(+7.2%)の動向が中でも注目されます。