株式投資を始めるなら押さえておきたいPER
「株式投資」と聞くと、いろいろ勉強したり、たくさんのことを覚えたりしないといけないと思われる方もいるかもしれません。実際、知識や情報は多くあるにこしたことはありません。ただ、「自分はまだ勉強不足だから・・・」という理由で株式投資に尻込みしてしまうのは、せっかくのチャンスを逃すことにもつながります。
「専業投資家になりたい!」など、投資だけで生計を立てようと考えるのでなければ、必要な情報はシンプルでも良かったりします。ここでは、これから株式投資をやってみたいと考える方々に向けて、最もポピュラーかつ、使い勝手の良い指標といえるPERについて解説します。
PERは株価の割安・割高を見る指標、だけど・・・
PERとはPrice Earnings Ratioの略で、日本語では株価収益率と言います。教科書的な解釈としては、株価が割安か、割高かを判断する指標となります。計算式は以下の通りです。
PER(倍)=株価 / 1株当たり当期純利益(EPS)
会社の利益を株式数で割ったものが1株当たり純利益(EPS)となり、株価がこのEPSに対して何倍まで買われているのかを見る指標がPERとなります。まずは、PERという指標があって、それは●倍という評価基準で捉えるということを覚えて下さい。
一般的には10~15倍であれば妥当な水準。10倍以下であれば割安と見なされます。20倍を超えてくると割安感はなくなり、50倍を超えてくると割高感が出てきます。100倍を超えてくると割高を通り越して過熱感が強いと見なされます。なお、分母が利益のため、赤字企業ではPERは算出されません。
PERが伝える「2つの側面」
これらが一般的なPERについての解釈となりますが、それではなぜ、割安な銘柄や割高な銘柄が存在するのでしょうか?割安だと判断できるのであれば買われるはずですし、割高なのであれば売られるはずです。しかし、実際にそうはなっていません。この謎を解くためには、一つの数字が持つ2つの意味に目を向ける必要があります。先ほどの表は割安、割高という側面からのアプローチでしたが、これに人気という要素を加え、さらに、それぞれの水準に対して、「良く言えば」「悪く言えば」という両面で評価したものが以下の表となります。
PERが10倍以下の銘柄は確かに割安ではあるのですが、割安のまま放置されているというのは人気がないことを意味します。一方、PER面では明らかに割高感があるのに、その水準で株価が取引されているというのは、成長に対する期待が高く、人気があることの裏返しでもあります。
各社のPERを調べてみよう
どういった銘柄を買ったら良いかのアプローチは様々です。「成長しそう」「株主優待が魅力」「有名な会社で安心感がある」「知り合いに勧められた」など、何が正しい、何が間違いといったことはありません。気になる銘柄が出てくれば、ぜひ、その銘柄のPERを確認してみてください。
PERは株式関連の情報サイトなどで確認することができますし、今ではグーグルなど検索サイトでも、銘柄名と「PER」を入れれば数値が出てきます。
参考までにいくつか挙げると
トヨタ自動車 (7203) 12.8倍
JR東海(9022) 21.1倍
資生堂 (4911) 49.5倍
三井物産 (8031) 6.0倍
(2022年6月30日時点の株価と、その時点での各社のリリースをもとに算出)
重要なのは、その銘柄がPERでみて割安なのか割高なのかをまず把握すること、そしてそのPERに対して、「良く言えば」「悪く言えば」の両面で銘柄を評価する視点を持つことです。例えば三井物産のPERは10倍以下で、割安か割高かで言えば割安です。ただ、割安の裏返しは「不人気、業績が安定しない」となります。三井物産は不人気ではありませんが、商社は原油価格の影響を大きく受けやすく、業績の安定性には欠けます。「PERで割安だからずっと持っていて大丈夫」という視点だけだと、相場の変化に対応できなくなることも多いです。
そして当然、低PERの銘柄を買う時と、高PERの銘柄を買う時とでは、スタンスや戦略も変わってきます。次回以降ではそれぞれのパターンについての注意点や投資に関するヒントなどについて解説したいと思います。