日銀の金融政策転換を受けて不動産株が上昇
2024年3月19日に日銀が金融政策を転換しましたが、この日に不動産株が大きく上昇しました。
そこで今回は、不動産株のPERについて掘り下げてみたいと思います。
不動産大手5社のPERを比較
ここでは、三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)、東急不動産ホールディングス(3289)、野村不動産ホールディングス(3231)の不動産大手デベロッパー5社のPERを比較します。
5社の中では三菱地所と三井不動産がPER20倍台となっており、住友不動産、東急不動産が15倍近辺。野村不動産は10倍台前半となっています。
高水準の利益を見込む企業のPERが高い
5社を見比べると、大手の中でも双璧をなす三菱地所と三井不動産のPERが高めとなっています。「PER8倍=割安?」の回では、PERを見る際に横の比較も重要であることについて触れました。今回、日銀の政策転換を受けて不動産株に資金が向かいましたが、このように何らかの変化によって業種全体の注目度が高まった際には、まずトップの企業が買われやすくなります。三菱地所と三井不動産のPERが相対的に高くなっているのは妥当な評価と考えられます。
また、②の純利益の見通しを見ると、三井不動産、三菱地所、住友不動産の3社が上位となっており、東急不動産、野村不動産の利益見通しは上位3社と開きがあります。これはあくまで見通しですので達成できるかどうかも重要ではありますが、現状では高水準の利益を見込む企業のPERが高めとなっています。
各社の来期の見通しに要注目
5社の24.3期の見通しを見てみると、三菱地所、三井不動産、住友不動産は、一桁%の増収計画となっています。24.3期の事業環境は世界的に長期金利が上昇傾向、もしくは高止まりしており、不動産デベロッパーにとっては必ずしも良いとは言えないものでした。
そのような中でも各社採算を重視した経営を行い、増収増益の達成に向けて努力しています。ちなみに第3四半期の着地に関しては、5社すべてが前年同期比で増収、三菱地所を除く4社が営業利益以下の増益を達成しています。
ここから不動産株の評価がもう一段高まるためには、先々でトップライン、すなわち売上高の増加期待が高まるかという点がカギになると思われます。日本がデフレを脱却して緩やかなインフレに向かう過程においては、不動産価格も上昇傾向になることが見込まれます。直近では3月26日の公示地価の発表を受けて翌27日に不動産株が強く買われる場面がありました。
不動産市場の事業環境が良くなることへの期待が高まれば、株式市場でも業界全体の底上げが進むことが予想されます。次の本決算の発表では、各社日銀のスタンスが変わったことを踏まえて事業計画を出してきますので、翌25.3期の売上高をどの程度見込んでいるかが注目されます。