株式初心者のためのPER入門

PER100倍超え銘柄の取り扱い方

マザーズ指数が遅まきながら年初来高値を更新


日経平均が節目の3万円を上回り、年初来高値を連日で更新してくる中、マザーズ指数も6月に入って年初来高値を更新してきました。


マザーズ指数の動きが良くなるということは、新興銘柄に資金が向かっていることを意味します。そうなると、高PER銘柄の物色が活発になることが予想されます。そこで、今回はPERが100倍を超えているような銘柄をトレードする上でのポイントについて整理します。


高PER銘柄の急変は突然に」でも、高PER銘柄の注意点について触れていますので、こちらも参考にしてみてください。


日本株が温まり、新興銘柄にも資金が流入


まず、このタイミングで新興銘柄に動きが出てきた背景としては


・米国の利上げに関しては、峠を超えた可能性が出てきた。

・日本株はPERやPBR面で過熱感が少ない大型株がまず上昇を先導し、相場を温めてくれた。

・これにより、もう一段リスクを取ってでも、リターンを追求したいと考える投資家が増えた。


ということが挙げられます。コロナ禍で新興銘柄が人気化した後、米国が利上げを積極的に行ったことでグロース株はしばらく嫌われました。特に新興グロース株は長期金利の上昇には弱いですし、株価が下り坂になるとダメージが大きくなる傾向があります。そのため、今年に入って日経平均の動きが良くなる中でも、多くの新興グロース株は物色の蚊帳の外に置かれる状態が続きました。


ただ、その中で日柄と値幅の両方で調整は進みました。米国でもダウ平均に先がけてナスダック総合指数が年初来高値を更新しており、グロース株が注目されても良い環境が醸成されつつあります。


人気の観点から高PER銘柄に脚光が当たる


基本的に高PER銘柄は、個別の業績を見れば割高感があるものの、人気になる要素を持っています。株式市場全体が強い局面では、この「人気」という要素が大きな意味を持ってきます。日経平均などの指数が上昇すれば、その一方で高値警戒感は出てきます。ただ、高値警戒感と同じくらい、何かを買いたいという欲求が多くの投資家の心の中に芽生えてきます。そのような時には、テーマを重視した物色が盛り上がることがあります。


今(2023年6月時点)であれば生成AIが引きの強いテーマと言えるでしょう。少子化対策、国防、電気自動車(EV)、新エネルギー、サイバーセキュリティなども折に触れて盛り上がりやすいテーマと言えます。


大型株でPERが15倍程度で評価されている銘柄の株価が大きく上昇して25倍になれば、どうしても割高感や過熱感が意識されます。一方、高PER銘柄は既に割高感は強く、この点におけるリミッターは外れています。PERが100倍から120倍になったとしても、それだけで割高感が急速に高まるということはありません。


入れ込みすぎないよう注意する


とはいえ、割高という点に目をつぶって投資をするというのは、やや乱暴な視点ではあります。初心者の方は、高PER銘柄への投資では成功体験が積み上がったとしても、入れ込みすぎないようにすることを心掛けておくことをお勧めします。


高PER銘柄に投資する際に陥りやすいのが、特定の銘柄に固執してしまうことです。自分の選んだ銘柄が上がりつづければ「めでたしめでたし」で良いのですが、大幅増益見通しを提示していた企業が一転して大幅減益になってしまうことは珍しくありません。壮大な将来構想が絵に描いた餅にすぎなかったということもよくある話です。銘柄に執着しすぎると、風向きが変わった時に「経験則からこれだけ下がれば上がるはず」とナンピンを入れて損失を拡大させてしまうこともあります。


情報量が少ない銘柄では、ネットやSNSなどの情報に翻弄されやすいといったこともあります。もし、ご自身がそういったタイプかもしれないと感じている場合には、その銘柄の情報収集に向ける労力のいくらかを、相場の歴史を勉強する時間に充ててみると、また違った景色が見えてくるかもしれません。高PER銘柄への投資に関しては、その企業の成長性や他社との違いを理解することも重要ではありますが、それと同じくらい長期金利の趨勢を見極めることが重要であったりします。


高PER銘柄の急変は突然に」でも流れが悪くなった時のリスクについて触れていますが、米国や日本の金利が上昇しそうな兆候が出てきたら、投資金額を抑える、利益確定・手じまいを検討する、高PER銘柄への投資はいったん休憩する、といった戦略は必要でしょう。


過去の高値は必ずチェック!


高PER銘柄に関しては、その銘柄が過去につけた高値の水準には注意を払っておく必要があります。かつて人気になって急落した銘柄では、高値圏で買ってしまい、売り場のないまま塩漬けを余儀なくされている投資家が多いと推測されます。その銘柄が戻してくれば、当然売り需要は発生します。


新規上場銘柄で、初値天井のような動きとなり、ズルズル下がったような銘柄も同様です。高PER銘柄では需給要因は重要です。何らかのきっかけで派手に上昇した銘柄が、過去の高値近辺で頭打ちとなって急失速することはよくあります。言い換えれば、過去の高値を超えてさらに上昇が続くような銘柄に関しては、売りを相当こなしてきており、基調が強いと考えられます。


リスクのコントロールがポイント


「高PER銘柄はハイリスクだから触らない」これはこれで一つの考え方ですし、堅実な資産運用という点では理にかなっています。ウォーレン・バフェット氏であれば、PERが100倍を超えているような銘柄には見向きもしないかもしれません。ただ、人気になっている銘柄というのは、比較的短い期間で大きな利益を得るチャンスがあります。


リスクは高めではありますので、そのコントロールは必要です。具体的な対策としては、運用資産の10%程度までにする、メンタル面で熱くなりすぎないよう意識する、流れが悪くなったらサッと撤退する、といったことが挙げられます。これらの点を心掛けた上で、全体の地合いが良くなってきた局面で高PER銘柄を狙ってみるという戦略は、効率的に資産を増やすという点で有効と考えられます。


日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

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