今回は、高PER銘柄に投資する際に、注意しておいた方が良い点について解説します。
なお、PERが高くなっている銘柄は
(1)成長(業績回復)期待が高い
(2)旬のテーマに沿っている
(3)大幅な損失が発生して利益が大きく落ち込んだ
このどれかに当てはまることが多いです。このうち、(3)に関しては、損失発生の時点で株価が大きく調整していることが多く、(1)(2)とは傾向も異なります。今回は(1)(2)のタイプ、すなわち人気先行型の銘柄にフォーカスして話を進めていきます。
高PER銘柄は流れに乗った時の上昇がハンパない
高PER銘柄は、この先の業績が大きく拡大しそうという期待を持たせてくれるものが多いです。そして、そういった銘柄の上昇局面にうまく乗れた際には、短期間で資産を大きく増やすことも可能となります。
これは医療従事者向けのサービスを展開するエムスリー(2413)の2020年近辺のチャートとなります。エムスリーは2020年の1年間で株価が3倍になった銘柄として、大きく注目されました。この時は大きな押し目を作ることなく、右肩上がりの上昇が長く続いたことが見て取れます。
流れが悪くなった時の下落もハンパない
ただ、強い上昇が続いていた銘柄も、急に流れが変わってしまうことがあるというのが株式市場の難しいところです。
こちらのチャート、これもエムスリーです。その前のチャート①が赤の点線までの値動きで、その後の値動きまで入れたものがチャート②となります。2020年の上昇分の大半を2021年以降に吐き出していることがわかります。
同社の業績が悪化したのかというと、そうでもありませんでした。同社の株価は2021年1月に頭打ち感が出てきましたが、2021年1月29日に発表された2021年3月期第3四半期では、純利益が前年同期比で61%増の267億円と大幅増益を達成しました。また、これを受けた翌営業日2月1日の株価も大幅高となっています。しかし、決算発表の前辺りから上値が重くなっていたこともあり、この時の上げは一時的にとどまり、以降は下げ基調を強めていきました。
高PER銘柄の急変は突然に
天井感が出てきてもゆっくり株価が下落していくのであれば、高値つかみをしてもダメージは少ないですし、早いうちに買っていた投資家も落ち着いて利益確定売りを出すことができます。ただ、実際には潮目が変わるのが突然で、株価も急に崩れることが多かったりします。
2022年に入って米国の長期金利が上昇基調を強めたことで、米国株が大きく崩れ、米国株との連動性が高いグロース株が軒並み売り込まれました。米国が金利を上げること自体は2021年の時点で分かっていたので、後から振り返れば、2021年後半がグロース株の売り場であったとは言えるでしょう。
ただ、レーザーテック(6920)や東京エレクトロン(8035)など大手半導体株は2021年の11月から12月にかけて騰勢を強めています。米国が2022年に利上げに踏み切ったとしても、成長期待の高い銘柄はまだ買えるといった雰囲気を醸し出していました。レーザーテックは今年の大発会(2022/1/4)に上場来高値を更新しており、やはり崩れ方は突然でした。
逆風下の高PER銘柄は下値のメドを見つけづらい
上昇相場が終わってしまった後の高PER銘柄は落ち着きどころが見えづらい、これが最大のリスクとなります。
PERが70倍の銘柄が急落して半値になったとしても35倍です。70倍を見ていた方からすれば、相当値ごろ感が出てきているようにも感じられますが、一般的には割安とまでは言えません。5分の1となれば14倍で、これでようやく妥当と言える水準です。高PER銘柄は成長期待が高いというほかに、人気を集めていたという側面もあるだけに、人気が離散するだけでも株価は下げやすくなります。
これが低PER銘柄の場合は、バリュエーション面の割安感が株価の下支え要因になると期待できます。この下値リスクが大きい小さいという点は、高PER銘柄と低PER銘柄の大きな違いと言えます。
高PER銘柄はこまめな利益確定も一考
高PER銘柄は高いリターンが期待できる一方、投資のタイミングを間違えると、下げが常識的なものとはならないリスクがあります。特に初心者の方で高PER銘柄に投資したい場合には、株価が高値圏にあったとしても、中長期の上昇トレンドが崩れていない銘柄を狙う方がリスクが少ないと思われます。急変がいつくるかというのは読みづらいところもあるので、大きく上昇した後で株価が伸び悩んだり、好材料に対する反応が弱めになった際には、「頭と尻尾(しっぽ)はくれてやれ」「利食い千人力」のスタンスでこまめに利益を確定しておくのも有効です。株式投資では、立ち直れないような大きな負けを回避することも、長期のパフォーマンスを上げるには重要な要素となります。