株式初心者のためのPER入門

自動車株のPER

2024年2月6日に、トヨタ株の時価総額が日本の企業で初めて50兆円を突破しました。この日は3Q決算の発表がありましたが、通期見通しの上方修正が好感されて株価が大きく上昇しました。


そこで今回は、自動車株のPERについて掘り下げてみたいと思います。


自動車7社のPERを比較


ここでは、トヨタ(7203)、ホンダ(7267)、日産自動車(7201)、SUBARU(7270)、スズキ(7269)、マツダ(7261)、三菱自動車(7211)の自動車7社のPERを比較します。


おさらいとなりますが、PERは株価を1株純利益で割ることで求められます。2月9日までに7社全てが3Q決算を発表して通期見通しをアップデートしていますので、各社の発表数値をもとにPERの水準を確認していきましょう。



7社のうち最もPERが高いのは?


各社のPERは4倍台~13倍台まであり、7社の平均値は8.1倍でした。2月13日の時点ではスズキが最も高く、三菱自動車が最も低いです。トヨタは10倍近辺で上位ではありますが、7社の中で最もPERが高いわけではありません。


スズキはインドに注力しているという特徴があります。日本は少子高齢化が進み、若者のクルマ離れも指摘されています。インドという成長市場に強みを持っているという点で、スズキのPERは自動車株の中で相対的に高めとなっています。


なお、7社のうち、3Q決算発表時に通期の見通しを上方修正したのはトヨタ、ホンダ、SUBARUの3社で、それ以外の4社は見通しを据え置きました。トヨタやSUBARUは上方修正に株価が強い反応を示しました。逆に、据え置いた4社はそのことが失望を誘い、決算発表直後の反応が強い売りとなりました。結果、スズキを除くと、上方修正のあった銘柄はPERが高めとなり、据え置いた銘柄のPERは低水準となっています。


トヨタは業界底上げの旗振り役となれるか?


決算発表直後では明暗が分かれましたが、この先はオーバーシュートした動きは修正されていくことが予想されます。決算発表時にポジティブサプライズが乏しく、株価が下落した三菱自動車や日産自動車などの再評価機運が高まるようであれば、業界全体の底上げが期待できます。逆に、これらの銘柄が低PERの状態で放置された場合、決算で強く買われたPERが高めのトヨタやSUBARUが利益確定売りに押されやすくなります。


カギを握るのはトヨタになるでしょう。今期の純利益見通しを見ると、トヨタの4兆5000億円に対して、残り6社の合計が2兆2400億円で、6社合わせてトヨタの半分程度となっています。現状でトヨタのPERが7社平均を上回っているのは、妥当な評価がされていると言えます。


ただ、日本の企業で初めて時価総額が50兆円を超えてきたにもかかわらず、PERが10倍程度というのは物足りなさも感じられます。トヨタがこの先も強い動きを見せるようであれば、自動車株に対する期待値が上がります。そうなれば、PERの水準が切り下がった分、割安感が出てきた他の銘柄にも資金が向かう展開が期待できます。


2024年に入り、日経平均株価は非常に強い動きを見せています。また、2023年後半には円高が急速に進行しましたが、2024年に入ってからは円高は一服し、むしろ円安に振れる場面が増えています。自動車株が見直される要素はあるだけに、トヨタが業界の評価を底上げする旗振り役になれるかが注目されます。


日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

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