株式初心者のためのPER入門

PERとPBRの違いを整理

株式を分析する上で、PERと同じくらいメジャーな指標がPBRとなります。今回はPBRについて掘り下げながら、PERとの違いについて解説していきます。


PBRは1倍が解散価値


PBRはPrice Book-value Ratioを略したもので、日本語では株価純資産倍率と言います。計算式は以下のようになり、1倍が解散価値と同水準、1倍以下は割安と見なされます。

ちなみに、PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)の計算式は以下となります。分母に純利益を取るか純資産を取るかの違いとなります。

PERの方は分母が利益ですので、年によっては変動が大きくなることもあります。それに比べると分母に資産を取るPBRは変動がマイルドになる傾向があります。また、PBRは一般的にはその銘柄が割安かどうかを分析するのに活用する指標となります。1倍割れの銘柄は割安と見なされますが、PBRが2倍、3倍の銘柄が割高と判断できるかというと、必ずしもそうではありません。


PER同様に割安=不人気でもある


ただ、PBRに関してもPER同様に、割安な銘柄は不人気の要素があるという視点を持っておくことが重要です。投資ツールのスクリーニング機能などを使ってPBR1倍割れ銘柄を探すことはそれほど困難な作業ではありません。投資家目線からすれば絶対的に割安なものを買っておけば儲かるはずですから、PBR1倍割れ銘柄にはすかさず買いが入ってもおかしくはありません。しかし、実際には長くPBR1倍割れに甘んじている銘柄も多くあります。


PBRが1倍を割り込んでいる銘柄は、どちらかというと地味な業態が多いです。PBR1倍割れというのは、理論的には企業が解散すれば投資家には株価以上のリターンが期待できることにはなります。ただ、解散せず、目立った業績を挙げることもなく、投資家からの注目度も高まらなければ、低PBRのまま放置されることはあり得ます。割安に放置されていたとしても、その割安な状態が解消されるきっかけが訪れるとは限らないというのが、低PBR銘柄の悩ましい点となります。


PBR1倍割れの是正期待が2023年の株高に


仮に、注目した銘柄のPBRが0.5倍であったとします。ということは、現状から2倍となるPBR1倍水準までの評価余地があるとは言えます。ただし、必ずそうなるわけではありません。「PBR0.5倍だから上がらないのはおかしい」と考えてしまうと、不人気銘柄ばかり抱えてしまうリスクもあります。PBR1倍割れ銘柄に着目して投資を行う際には、(1)5年、10年、もしくはそれ以上の長期戦になるかもしれないと意識しておく、もしくは、(2)値動き(テクニカル要因)、相場のトレンドなど、プラスアルファの要因を踏まえて銘柄を選別する、といった視点が必要となります。


ちなみに、2023年の5月から6月にかけて日経平均が3万円の大台を突破して一気に3万3000円台まで駆け上がりましたが、この時の日本株の上昇要因の1つが「PBR1倍割れ是正の動き」でした。東証が低PBR企業に対してそれを改善するよう要請しており、株主還元を強化するなど対応策を講じる企業も出てきました。そして、こういった動きが大きなうねりになるとの期待が株高にもつながりました。


海外投資家の日本株に対する評価が高まってくれば、それはプラスアルファの要因になります。PBR1倍割れ企業の多くがその是正に向けて動き出せば、日本株全体の底上げが期待できます。日経平均が上昇基調を強めた際には、低PBR銘柄がリリースを材料に強く買われる場面もありました。2023年は例年に比べると低PBR銘柄が注目されやすい環境にはなっていますので、この流れがさらに加速していくかが注目されます。




日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

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