昨年後半から今年にかけて、電線株の振れ幅が大きくなっています。
そこで今回は、フジクラ(5803)、古河電気工業(5801)、住友電気工業(5802)の電線大手3社のPERを比較します。
3社の比較ではフジクラのPERが高水準
電線大手3社のPERは、以下の通りとなります。
4月30日時点ではフジクラ19.6倍、住友電工11.2倍、古河電工10.5倍となっており、3社の中ではフジクラのPERが他2社に比べて高水準です。古河電工や住友電工に割安感があるとの見方もできますし、フジクラに対する期待値が高いという解釈もできます。
フジクラは2024年8月8日に通期見通しの上方修正と増配を発表しましたが、これを受けた翌8月9日は、買いが殺到して場中には取引が成立せず、ストップ高比例配分となりました。そして、電線株の躍進はここから本格化しました。
従来、フジクラは電線株の中では3番手の立ち位置でしたが、今では日々の取引の中でも全市場の売買代金上位の常連銘柄となっています。なお、ざっくり時価総額を見ると、住友電工が1兆8100億円台、フジクラが1兆5500億円台、古河電工が3100億円台となっています。
2025年に入り株価は調整色を強める
電線株は2024年の後半に人気化した一方で、2025年に入ると調整色を強めています。
足元の電線株はデータセンター関連との見方が強まっており、半導体株と連動することが多くなっています。半導体株も2025年に入って軟調に推移する銘柄が多く、人気が離散したような動きとなっています。
フジクラや古河電工は、4月の下げで今年前半につけた高値から半値以下にまで水準を切り下げる場面もありました。
3社そろって5月13日に決算発表予定
3社はそろって5月13日に本決算の発表を予定しています。
各社の前25.3期の純利益見通しは以下の通りとなっています。
古河電工は4.6倍増の計画と前の期からの利益の増加度合いがかなり大きくなっていますが、24.3期の利益が大きく落ち込んでおり、その反動の影響もあります。住友電工は利益の絶対額は大きいですが、前期との比較では6.9%増と小幅な増益計画となっています。市場の関心は、昨年上方修正を発表して一躍時の銘柄となったフジクラに向かうと思われます。
なお、計画に対する3Q時点での進捗度を確認すると、フジクラが79.8%(591億円)、住友電工が71.1%(1137億円)、古河電工が54.5%(164億円)となっています。
電線株に割高感はないものの・・・
現時点では、3社の中で最もPERが高いフジクラでも、それほど割高な評価とはなっていません。その点では、着地が計画に対して良好なものとなり、今期の増益見通しが提示されれば、株式市場では一定の安心感が広がると考えられます。
一方、今期の見通しが非開示、またはかなり保守的であった場合には、業績期待が大きく後退する可能性があります。業績期待が高まらない場合には、いくらPERで割安感があったとしても、市場からの注目度が低下して株価が下落することはよくあります。半導体株がさえない動きとなっていることで、生成AIやデータセンターに対する楽観的な見方が後退していることも気になる動きではあります。再び成長期待を高めることができるか、5月の決算が大きく注目されます。