不動産投資入門

不動産投資における収益還元法とは?計算方法や積算法との違いについて解説

不動産投資において物件を決める際に必要なのが収益還元法です。投資用物件を選ぶ際に適正な価格かどうか見極めるためには収益還元法の知識が欠かせません。


本記事では不動産投資における収益還元法の概要や計算方法、積算法の違いについて解説します。


不動産投資における収益還元法とは 

不動産投資における「収益還元法」とは、該当物件が将来生み出すと予想される収益を基準に価格を算出する方法です。収益還元法で算出した価額は「収益価格」と呼ばれます。


該当物件が投資に適している物件なのか説明する際にも使用できるため、還元収益法を用いれば「投資すべき物件なのか見極められる」「銀行への説得材料となる」といったメリットが得られます。


収益還元法の2つの計算方法

収益還元法の計算方法として次の2つが挙げられます。


● 直接還元法

● DCF法


それぞれ詳しくみていきましょう。

1.直接還元法 

「直接還元法」とは、不動産から得られる一定期間(一般的に1年間)の純利益を、一定の還元利回りで除して不動産価格を算出する手法です。


後述のDFC法よりもシンプルな計算式で算出できるものの、式で利用する純利益と還元利回りを算出する場合は複雑な計算をしなければなりません。


2.DCF法 

「DCF法(Discounted Cash Flow)」とは不動産を所有することで、毎年の利益を基準に資産価値を算出する評価方法です。


対象不動産の所有期間中で得られると思われる純利益と売却時の予想価格を現在価格から割り引いた合計値が不動産価格となる想定で計算されます。正確な数値を算出できるため、資料として提供できれば、銀行融資を有利に進められるでしょう。


不動産投資に関する収益還元法の計算例

ここでは上記で解説した「直接還元法」と「DCF法」の計算例についてみていきます。どのような計算内容となるのかそれぞれ詳しくみていきましょう。


直接還元法による計算例 

直接還元法の計算式は次のとおりです。


● 1年間の純収益÷還元利回り


1年間の純利益は「年間家賃総額-年間諸経費(管理費・固定資産税・修繕費など)」で求めることができます。


1年間の家賃総額が1,400万円、1年間の諸経費が300万円、還元利回りが4%だったとしましょう。この場合、「(1,400万円-300万円)÷0.04」となり、物件の収益価格は2億7,500万円となります。


年間諸経費は築年数が長いほど高くなる傾向にあり、一般的に家賃の20~30%を占めるとされています。ただ、正確な数値は物件ごとに異なるため、購入前に計算しておいた方がよいでしょう。


また、直接還元法の算出に影響する還元利回りの数値は、不動産投資を実際に運用しないことには確定しない数値です。


明確ではない数値は、国土交通省が発表した「不動産鑑定評価基準」という資料において、「類似の取引事例」から数値を求めるべきとしています。


全国の利回り相場は、株式会社LIFULLが運営する不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」で算出することが可能です。


例えば、「東京都中央区」で検索すると下記のようになります。


 

東京都中央区の利回り相場は、調査日2022年8月15日時点で4.7%ということがわかります。


DCF法による計算例 

年間の家賃収益が「200万円」、3年後の物件売却額が「2,000万円」、割引率が「3%」だったとしましょう。各年の収益を割引率によって現在価値に変換する場合の計算式は次のとおりです。


● 年間家賃収益÷(1+割引率)のn乗


そのため、次のように算出できます。


● 1年目:200万円÷(1+0.03)=約97万円

● 2年目:200万円÷(1+0.03)の2乗=約94万円

● 3年目:200万円÷(1+0.03)の3乗=約91万円


現在価格での3年間の収益合計額は約282万円です。次に、将来の売却価格の現在価値を算出していきましょう。計算式は次のとおりです。


● 売却額÷(1+割引率)のn乗


今回の割引率「3%」、3年後に売却予定のため、「2,000万円÷(1 + 0.03)の3乗」となり、現在価値の将来の売却額は「約1,830万円」です。


3年間の収益合計と売却額を合算すると「2,112万円」となり、この価格よりも低い価格で購入できればお買い得と判断できるでしょう。


収益還元法と積算法の3つの違い

収益還元法と積算法の違いとして次の3つが挙げられます。


● 収益に対する考慮の有無

● 用いられる場面

● 土地と建物への考え方


それぞれ詳しくみていきましょう。


1.収益に対する考慮の有無 

収益還元法は物件が将来生み出すかもしれない収益をもとに価値を算出します。一方、積算法は土地や建物を別々にして価値を算出するため、収益は考慮されません。


そのため、収益を考慮しない分、積算法では価値が高いにも関わらず収益還元法では価値が高くないということが起こりやすいです。

2.用いられる場面 

収益還元法と積算法はそれぞれの計算法の特徴から使われる場面が異なります。どんな状況で使用されるのか見ていきましょう。


【収益還元法】

● ホテル

● 店舗


【積算法】

● マンション

● アパート

● 一戸建て


収益還元法は物件の将来得られると予想される収益を出す時に使う計算法です。ホテルや店舗など入居率や空室率を考慮しなければならない商業施設に使用されます。


一方、積算法は物件をいくらで売却できるかについて着目した計算方法です。そのため、投資物件をはじめ物件を売却する際に使用されます。


3.土地と建物への考え方 

収益還元法は不動産収益を考え、土地と建物はセットです。一方、積算法は基礎価格の算定が重要なため、土地と建物は分けて計算しなければなりません。土地は環境や景気、建物は構造や築年数によって、価値が大きく異なります。


まとめ

収益還元法は投資用物件を購入する際に適正な値段なのか見定めることもできます。収益還元法には「直接還元法」と「DCF法」の2つの手法を使うことで、銀行から融資を受ける際にも有利に働くことができる計算式です。


計算式には収益還元法以外に積算法を使って計算します。物件の用途によって計算式の使い方が異なるので良く考えて計算しましょう。2つの計算式を使って優良物件を探してみてください。


「いまから」 編集部

カジュアルな投資情報メディア「いまから投資」の企画・運営を行っています。「いまから! これから! いまさら?」投資や資産運用をはじめる人にわかりやすいコンテンツを提供します。お金や暮らしにまつわる幅広い情報もわかりやすくお伝えします。

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