株式投資 超入門編

【第12回】LINE証券が証券業務から撤退 どう対応すればよい?

2023年6月12日に「LINE証券が証券事業から撤退する」といったニュースが流れました。LINE証券に口座を持っている人は言うまでもないですが、投資をしている人なら多少なりともドキッとしたはずです。筆者もその一人です。


今回のニュースを簡潔にまとめると「競争が激しくて採算が合わないのでLINE証券の業務を縮小します。株や投信を持っている人は野村証券に移管します。FX(外国為替証拠金取引)は続けます。」ということになります。


ニュースのヘッドラインだけ見てしまい「私の株はどうなるの!?」と心配になった人も多いと思いますので、気になると思われる点についてまとめてみました。


私の株はなくなるのか?

LINE証券の公表文を抜粋すると

「当社の提供する金融サービスにおいて一部事業内容を変更いたしますが、お客様がお預け入れのご資産につきましては開業から現在まで信託保全等、法令に従って分別管理をしており、本事業再編による影響はございません。」


と冒頭で説明しています。本文に「分別管理」とあるように、顧客の株や投資信託は信託銀行などで分別管理されています。取引している証券会社が業務をやめる、または破綻するなどの事態に陥ったとしても、自分の保有資産がなくなることはありませんので安心してください。


LINE証券に限らずどの証券会社も分別管理を行っていますので、万が一の際にはほかの証券会社に保有資産を移管できます。なお、前述のようにLINE証券の場合は野村証券に移管されます。


LINE証券でできなくなる取引

今後、LINE証券ではFX以外の取引が順次終了します。株取引については2023年7月中旬ごろに買い注文ができなくなり、24年中に売り注文もできなくなります。信用取引は23年7月中旬ごろに新規建てが終了、IPO(新規公開株式)は6月12日で終了です。


投信はNISA(少額投資非課税制度)を含めて23年12月ごろに買い付け停止、解約は24年中に終了とのこと。株・投信ともに、取引終了時までに売却していなかった場合は、野村証券に移管される予定のようです。おそらく野村証券で新たに口座開設の手続きをする必要がありますが、具体的にどのような手続きが必要になるかはまだ決まっていません。(23年6月12日時点)


  

※LINE証券公式発表を基に弊社作成


NISAの扱い

特に気になるのは、NISAの扱いがどうなるかについてだと思います。基本的にNISA預かりの株や投信は、他社にそのまま移管することができません。心配になるところですが、LINE証券の説明によると、つみたてNISA預かりについては「引き続き野村證券にてつみたてNISA口座(非課税口座)のお預かりとして管理されます」とのことです。


これなら無理に売却しなくてもよいので一安心できそうですね。ただし、野村証券以外の金融機関に移管する場合は、特定口座または一般口座に払い出す必要があります。つまり、野村証券以外に移管すると、つみたてNISA預かりではなくなる(課税対象になる)ということです。どちらが良いかは人それぞれですので、十分に考えたほうがよさそうです。


※LINE証券では一般NISAの取り扱いがないため説明内には記載されていません。


業界の競争激化は続く

サービスの提供環境は対面だけでなくネットも普及し、金融商品も種類が増えています。テレビやインターネットが普及する前は、サラリーマン投資家が昼休み中に証券会社を訪れることが当たり前だったと聞きます。今では考えられませんよね。


今回、LINE証券は証券業務から手を引く形となりますが、過去にも大きな出来事がありました。バブル崩壊による業績悪化などから、大手の一角だった山一証券が破綻したことは有名です。LINE証券がつぶれるわけではありませんが、競争に負ける証券会社、または新規参入など競争は続いていくでしょう。

現に、楽天証券は2024年から始まる新NISAに向けて、投信買付の楽天カード決済によるキャッシュバック率を再び引き上げると発表しました。コスト度外視で路線変更をしたのには、ここで顧客を囲い込まないと負けるといった危機感からでしょう。


出所:日本証券業協会の公表データを基に弊社作成


上の図のように、証券会社の数は以前よりも減っています。16年以降はやや持ち直していますが、LINE証券などネット証券の新規参入や、銀行系証券などの設立がこのころに当たります。


業界の競争によって今後も利用者が振り回されることがあるかもしれませんが、すでに説明したように分別管理によって保有資産は基本的になくなりません。万が一保管している信託銀行がつぶれた場合であっても、ほかの信託銀行に移管されるなどによって守られます。国内すべての信託銀行がつぶれたら話は別ですが、そんなときが来たら世の中は株どころではないかもしれません。


日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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