株式投資 超入門編

【第5回】 決算短信の読み方 ~ガイダンス編~

前回では、決算短信の「経営成績(一番上の項目)」について触れました。

↓これ

 

大和ハウス工業 2022年3月期決算短信より抜粋



前回の続きとして、今回は経営成績と同様に重要視される

「業績予想(通称:ガイダンス)」について説明していきます。


業績予想とは

黄色の丸で囲ったように決算短信(表紙)の一番下か、

次ページの最初の方に掲載されています。



業績予想は会社が発表する今期の見通しであり、2022年3月期通期(前期)の決算発表と同時に、2023年3月期(今期)の予想を開示するといった感じです。同時ではなく、ちょっと遅れて出す会社もあれば、業績予想を公表しない会社もあります。


例えば、スマホゲームの開発会社や証券会社など、一部の業界は基本的に業績予想を出しません。今後リリースするゲームがどれだけヒットするかなんて分かりませんし、日々動いている相場をもとに業績予想を立てることは困難ですよね。


一方、製造業やIT系などは、以前からの受注残やすでに進めている案件などがあります。業績は大体この程度になるだろうという予想が比較的立てやすいですよね。

ちなみに、決算短信を読み進めていくと、業績予想についての詳細も記述されています。

(目次にもちゃんとページが記載されています)

大和ハウス工業 2022年3月期決算短信より抜粋


今後の見通しは、何を理由にその予想を立てたのかを知るのに役立ちます。とはいっても、今期も頑張りますという決意表明しか伝わらない説明もたまにあるので、内容を鵜呑みにせず、この説明でこの予想は妥当か?と考えることも大切です。


業績予想をどう見る?


三井倉庫ホールディングス 2022年3月期決算短信より抜粋


上の予想は三井倉庫ホールディングス<9302>の業績予想です。半期(4~9月)と通期(4~3月)の両方の予想を出していますが、いずれも前期(2022年度4月~3月)と比べて減益の予想です。コロナ禍では通販(Eコマース)が活況だったほか、海上輸送がひっ迫していたことなどから前期は業績が好調でした。一方、今期は特需の一服などを想定して減益を見込んでいます。


これだけを見ると、株価にはよくない材料だと思いますよね。

しかし、発表翌日の株価は・・・


このように大きく上昇しました。

なぜ??と疑問に思われるかもしれませんが、これにはアナリストの予想平均である

「市場コンセンサス(市場予想平均)」が関係しています。


市場コンセンサスは会社側が発表しているものではなく、各々の証券会社などに所属するアナリストが算出した独自の業績予想を取りまとめたものです。

この時、三井倉庫HDの今期の営業利益予想210億円に対し、市場コンセンサスは206億円程度でした。アナリスト側も今期は減益になるだろうと想定していましたが、会社予想はアナリストよりも強気の予想。結果、市場が考えるよりも良かった(サプライズ)として捉えられ、株価が大きく買われることとなりました。


コンセンサスってどこで見られるの?


コンセンサスは基本的に情報ベンダーによって提供されており、QUICKコンセンサス(QUICK社)やIFISコンセンサス(アイフィスジャパン)がよく使われています。QUICKコンセンサスは有料となりますが、日本経済新聞電子版を購読している場合でも確認できます。


一方、IFISコンセンサスはホームページで無料閲覧ができます。SBI証券や楽天証券で見られるコンセンサスも、IFISコンセンサスの数値となっています。


注意する点もあり、情報ベンダーによって集計しているアナリスト予想の数が違うため、コンセンサスの数値に差があります。このため、「このコンセンサスが正しい」と見ずに、「コンセンサスはこれくらいなんだな」という認識にとどめておくほうがよいでしょう。加えて、コンセンサスを上回ったからといって必ずしも株価が買われるわけではないため、目安の一つとして使うほうがよいです。


なお、上場会社数は2022年7月末時点で3830社もあります。アナリストも上場会社すべてを分析(カバレッジ)することはできません。上述ではコンセンサスとの比較が重要と説明してきましたが、新たにカバレッジを開始しようとしても注目度の高い大型株に集中する傾向があります。このため、小型株のコンセンサスは少ない傾向にあります。


まとめ


株価は将来の成長を織り込んで買われますので、業績予想は非常に重要な指標となります。とはいっても、毎期必ず利益成長できるとは限らず、時にはつまづくこともあります。一方で、見かけ上の予想が良くなかったとしても、すでに市場は織り込んでいることもしばしば。


このため、業績予想を見る際は、前期比との増減率だけでなく、コンセンサスとの比較や、今後の成長期待などを自分なりに考えたうえで、買いか売りかを判断しましょう。


日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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