株式投資 超入門編

【第4回】 決算短信の読み方 ~経営成績編~

普段、ニュースで流れてくる企業決算。何気なく見ているだけだと、業績が良かった悪かったくらいの印象しかないかもしれません。しかし、株式市場では企業の決算発表が株価に大きく影響します。3カ月(四半期)に1回、全上場企業が決算を発表しますが、ここで投資家が主に見るのが「決算短信」です。


決算短信がどのようなものかというと

大和ハウス工業ホームページより


このような形式の書類になります。

フォーマットは決まっているので、決算短信と言ったらどの企業も上の画像のようになります。決算短信は投資家に業績や企業情報など分かりやすく伝えるためのもので、法律で定められているものではなく、証券取引所のルールに基づくものです。

もちろん、法律に則って作成する決算書類もあり、会社法では決算公告、金融商品取引法では有価証券報告書といいます。


今回は大和ハウス工業(1925)の2022年3月期決算短信を基に、経営成績の基本的な見方を解説していきます。


経営成績について

 

利益の実績値を見る部分なので、決算短信の項目の中でも特に重要な部分です。

今更ですが、決算はその期が終わってから発表されます。なので、上の段がちょうど終わった期の実績(前期)、下の段がさらに前の期となります。

実績値の右に%がありますが、それは前期との増減率を表します。

この表では、22年3月期は、21年3月期と比べて売上高が7.6%増加したという見方になりますね。21年3月期は5.8%減少となっていますが、ここに載っていない20年3月期との比較となります。


項目を見ると、売上高はイメージがつくけど営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の違いって何?と思われる方がいるかもしれませんので、簡単に解説します。


<営業利益>

売上高から、「売上原価(原材料費など)」と「販売費及び一般管理費(販管費、交通費や広告費など)」を引いた項目です。いわゆる本業で稼いだ利益になります。


<経常利益>

営業利益から、「金融収支(利息の支払いなど)」や「為替差益(差損)」を引いた項目です。

不動産業など、借り入れ額が大きくなりやすい業種を見る際によく使われます。


<親会社株主に帰属する当期純利益>

長いですが、いわゆる純利益です。最終利益ともいわれます。経常利益から法人税などを引いた項目であり、最後の最後に残ったお金となります。配当金の原資や内部留保(貯めておく)、今後の成長資金など、使い道が自由になったお金でもあります。

また、コロナ禍で企業に支給された時短協力金など、特別な理由による損益も大体は純利益で計算されます。



ややこしい会計基準


大和ハウスは会計方法が日本基準ですが、企業によっては国際会計基準(IFRS)や米国基準を採用していることもあり、減損損失などの扱いが変わるケースもあります。


会計基準は表紙のトップに記載されています↓

※連結子会社がいると(連結)、いない場合は(非連結)と表記されます


IFRSになると売上高が営業収益に変わっていたり、経常利益ではなく税引前利益になっていたりと、項目に変化が出てきます。調整後営業利益といった企業の独自指標が作られたりもするので、どれを見ればいいのか分からないなんてこともありがち。

なので、詳しい分析をする必要がなければ、基本的には会計基準が違っていても売上高(営業収益)、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益の3項目を見ればほぼOKです。



その実績は本当に良いのか? 会社計画やコンセンサスとの比較も重要


実績値


売上高や営業利益が前期比でプラスになっていると、業績は良かったんだなと思いますよね。しかし、大半の企業は期初に業績予想を発表しています。証券会社のアナリストも、これくらい稼ぐだろうという予想を出します。これらを超えているか、または下回っているかによっても、株価の動きが変わってきます。


<大和ハウス自身が発表した会社計画>


<アナリスト予想の平均値(市場予想やコンセンサスとも言われます)>

※情報元によって集計しているアナリスト予想の数が違うため、数値は微妙に変わります

(百万円単位)

売上高:4,379,789

営業利益:358,075

経常利益:354,504

純利益:238,402



これらの予想と実績値を比べてみると、売上高、営業利益、経常利益が予想を上回りました。

実績値の発表は5月13日14時でしたが、株価の動きは↓



決算発表後に買われ、13日は大きく上昇して終了。その後も数日上昇が続きました。決算内容が良かったため、株価が上昇した一例です。


厳密には、前期の実績値と同時に発表する今期の会社計画(通称:ガイダンス)なども非常に重要ですが、次回以降に詳しく取り上げる予定です。


日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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