前回は併合による上場廃止の例を取り上げました。今回は第2弾として、「スクイーズアウト」について取り上げていきたいと思います。初めて聞く人も多いかと思いますが、日本語に訳すと「締め出し」となります。
スクイーズアウトとは
「締め出し」のとおり、既存株主を締め出すことになります。株主の同意を得ずに強制的に株を買い取るので、これだけ聞くと反発が起こりそうですよね。また、こういった重要事項を決議するには株主総会での承認が必要です。
重要事項の決定には内容によって株主の過半数、または3分の2以上の賛成が必要なので反対が多ければ否決されそうですが、スクイーズアウトを発表する際は否決されないようにすることがほどんどです。
否決されないように・・とはどういうことかというと
<TOB>
株式公開買い付け(TOB)を実施して株の大部分を買い占めた後、スクイーズアウトを実施することで、応じなかった株主から強制的に残りの株式を買い取ります。スクイーズアウトが発表される際、TOBも併せて実施することが多いです。
<自社株買い>
自社株買いによって市場から買い付けることで、自社の保有比率を高めます。
<第三者割当増資>
スクイーズアウトすることに賛成している大株主などに対し、増資を実施します。大株主の保有比率が高まるので、これによって賛成側の議決権割合も高まります。
こういった方法によって、株主総会で賛成多数を図るわけですね。スクイーズアウトを実施する企業は、経営難に陥ってるケースが多くみられます。実施する理由には、非公開化(上場廃止)することで意思決定を迅速にし、会社を早期に立て直すといった目的などが挙げられます。株価が低迷していると買収されやすくなるので、そういったリスクを防ぐこともできますよね。
なお、スクイーズアウトでは基本的に株式併合も同時に行われます。何万、何十万株を1株にするため、ほとんどの一般株主が単元未満株(議決権なし)となります。
過去の事例
それでは、過去にあったスクイーズアウトの事例を紹介していきます。
<佐渡汽船>
フェリー運航の佐渡汽船が、2022年2月にスクイーズアウトを発表しました。バス会社などの公共交通機関を束ねるみちのりホールディングス、大株主である新潟県、佐渡市などを株主とする内容です。この時、みちのりHDに対して第三者割当増資も実施しました。
このときの株主に対する金銭交付は1株当たり30円です。発表前の終値は202円だったので、株価は数日で45円まで下落しました。ちなみに30円で上場廃止となることがほぼ確実となっても、何かあるんじゃないか?と期待する投資家がいたため30円まで下がることはありませんでした。
※佐渡汽船 2022年 日足終値ベース
<日医工>
ご存じの人も多いと思いますが、日医工は不正が発覚した後発薬(ジェネリック医薬品)メーカーです。業績が低迷し、立て直しのため最終的にスクイーズアウトを発表して上場廃止となりました。2022年~23年の出来事です。
このときの株主に対する金銭交付は1株当たり36円。発表前の終値は380円でしたが、数日で48円まで下落することに。こちらもすぐに36円にはならず、思惑から一時247円まで急騰するなどマネーゲーム化しました。ちなみに最終売買日の23年3月28日に付けた終値は35円です。
※日医工 日足終値ベース
このように、既存株主が大損して紙切れ同然となることが多いですが、そうでないケースもあります。上野にある洋食レストランの精養軒もスクイーズアウトにより上場廃止となりましたが、発表前の終値712円に対し、1200円を提示。コロナ後に同社の株を買っていた人は、もれなくプラスになりました。
精養軒のような事例があると、業績が低迷した銘柄はチャンス!?と考えてしまうかもしれませんが、佐渡汽船や日医工のようになるケースも多くあります。かなりリスキーなので、スクイーズアウト狙いの投資には十分注意したいところです。