シリーズ3回目は「上場維持基準」です。現在、東京証券取引所ではプライム、スタンダード、グロース、TOKYO PRO Market(プロ向け市場)の4つの市場があります。プロ向け市場は個人投資家が参加できないので、あまり気にしなくても大丈夫です。
どのようなサービスにもルールがあるように、取引所に上場するためのルールももちろんあります。このため、それぞれの市場で定められた基準を満たせない場合、残念ながら上場廃止となってしまうかもしれません。有名な大企業なら大丈夫でしょ!と思わず、取引所が定めているルールをぜひ一緒に見ていきましょう。
各市場の上場維持基準は?
今回はプロ向け市場を除く3市場について、それぞれの上場維持基準をみてみましょう。ぱっと見てわかりずらい項目もあるので、都度説明していきます。
※東証より弊社作成
株主数はすぐにわかりますが、「流通株式」という一見イメージしにくい項目があります。発行済み株式総数とは違い、取引所が定めている定義に当てはめた株式の数を指します。
算出手順は以下の通り
※東証ホームページより引用
このように[ ]の中に当てはまる株式が多いと、基準を満たせなくなる場合があるということです。創業者など大株主の保有株数があまりにも多い場合は、市場で売り出すなどにより減らす必要も出てきます。
最近では上場維持基準を満たすために売り出しを発表する企業も増えてきていますが、需給悪化を懸念して株価が下落することも多いです。保有銘柄が売り出しをするかしないか、大株主の保有状況がものさしの一つになりそうですね。
「純資産の額が正であること」とは、要は債務超過ではない状況のことです。負債額が純資産額を上回っており、倒産のリスクがある場合は上場どころではないですよね。
現在は猶予期間
以前の東証1部~マザーズから市場が再編され、前述のとおりプライム~グロースが始まりました。再編してすぐに上記の上場維持基準が適用されると多くの企業が上場廃止となってしまうため、取引所は新基準を適用するまでの猶予期間を定めています。
予定では2025年3月に経過措置が終了し、1年間の改善期間が設けられます。26年3月までに基準を満たせなかった場合、管理銘柄・整理銘柄に指定され、原則として6カ月で上場廃止となるスケジュールです。このため、基準を満たせていない企業は今まさに改善を進めている最中で、現状はプライムだったとしても泣く泣くスタンダードを選択申請するというケースも増えてきました。
ちなみに、経過措置として適用される上場維持基準は以下の通り。
※東証より弊社作成
ほかのルールは?
これまで説明した上場維持基準のほかにも、取引所が定めている上場廃止基準があります。例えば有価証券報告書の提出が遅れた時が挙げられ、上場企業はこの書類を金融商品取引法(金商法)によって提出することが義務付けられています。法律を守れない場合は上場できないということですね。
また、有価証券報告書に虚偽の記載があったり、監査法人が内容を不適正と判断した場合にも上場廃止となる可能性があります。
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株主数が多く流動性も高い大型株は、おそらく再編の影響もあまりないでしょう。一方、中小型株だと、企業によっては上場を維持するためにあらゆる手段を講じる必要も出てきます。前述したように売り出しを行う企業も増えてきているので、需給悪化のリスクが高まっていることに注意して銘柄選びをしたいところです。
上場廃止シリーズはこれでいったん終了しますが、今後取り上げたいテーマが出てきたときにまた解説していきたいと思います。