株式投資 超入門編

上場廃止の方法 TOBだけじゃありません(その1)

株式市場において、定期的にTOB(株式公開買い付け)が話題となります。A社(TOBする側)がB社株(される側)を1株いくらで買い占めるという方法ですね。ここ数年では、日本産業パートナーズを中心とした国内連合が電機大手の東芝に対してTOBを行うということで大きくニュースになりました。


TOBでは、基本的に株価にプレミアムを付けて実施します。現値が1株1000円だとしたら、1300円で買い取るといったような感じです。買値が1300円未満であればほぼ確実に利益が出ますよね。なので応募する株主も増えます。TOBする側としては費用がかさみますが、円滑に進めるためには重要なことです。たまたま保有株がTOBされるということで、儲かってしまった!という人も意外と多いのではないでしょうか。


上場廃止と聞くと、何かやらかしたの?というイメージはありますよね。上場廃止後に経営破たんした企業はいくつもあります。ただ、破綻するから上場廃止になるというのがすべてではなく、経営戦略上あえて上場廃止を選ぶというケースもあります。今回はシリーズものとして、TOB以外に上場廃止となるケースについて取り上げていきます。なお、第1回目となる今回は「合併」です。


合併とは

文字通り、A社とB社がくっつくことです。これにもいくつか種類があり、両社がくっついて新しい会社になる「新設合併」、A社を存続会社、B社を消滅会社としてB社の事業などすべてをA社が取り込む「吸収合併」などが存在します。M&Aという言葉をよく耳にすると思いますが、M&A のMは「Mergers:合併」です。市区町村においても合併が行われますよね。


もちろん、合併すると会社規模が大きくなる、ノウハウや顧客基盤を共有できる、競争力が高まるなどさまざまなメリットがあります。なお、新設合併だと派閥争いが起きやすいなどの問題もあり、銀行の合併ではそういった話も多いようです。人間関係をまとめるのは容易ではないですね。


株主への影響は?

株式市場において、上場企業同士が合併する場合は多くの株主が影響を受けます。最近だと、2021年10月にドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングスとココカラファインが経営統合(合併)し、マツキヨココカラ&カンパニーが誕生しました。


具体的なスキームは説明すると長くなるので省略しますが、この件ではマツキヨHDを株式交換完全親会社、ココカラファインを株式交換完全子会社とする株式交換が実施されました。ココカラファインの普通株式1株に対して、マツキヨHDの普通株式1.7株を割当交付するという内容であり、要はココカラファインの株主は自動的にマツキヨHDの株主になる手続きが行われたということです。それに合わせてココカラファインは上場廃止となりました。



一連の手続き後、マツキヨHDの社名がマツキヨココカラ&カンパニーに変更されたため、ココカラファインの株主は自動的にマツキヨココカラの株主となりました。その後の業績も良く、直近マツキヨココカラの株価は上場来高値を更新。株主にとっても嬉しい限りの結果ですね。


TOBとは違い、合併の場合は基本的に保有株が買い取られて終わり、ということにはなりません。合併後の新会社、または吸収する側の株主として引き続き保有することになります。TOBのように決まった価格で買い取られるわけではないので、必ずしも今より株価が高くなるという保証はありません。今後に期待して継続保有するもよし、合併が好感されて株価が上がったときに売るのもよしなので、ご自身の投資スタンスに応じて決めましょう。


ここ数年で合併を発表した例

 


日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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