電気自動車(EV)の普及が進む中国では、車両性能の向上に加え、充電や電池交換などのエネルギー供給インフラの整備にも関心が集まっています。いまでは「いかに便利にエネルギーを補給できるか」が、EV普及の次の課題として重視されるようになっています。
EVはガソリン車と違って充電に時間がかかります。また、充電設備が十分に整っていない地域では、「長距離を安心して走れるだろうか」という不安も残ります。こうした課題を解決するため、自動車メーカーとエネルギー大手が手を組み、全国規模で充電網や電池交換網を整備する動きが加速しています。
特に注目されているのは、新たな施設を一から建設するのではなく、既存のガソリンスタンドを活用する方法です。すでに土地や電力設備が整っているため、建設コストや工事期間を大幅に抑えられます。利用者にとっても、これまで利用していたガソリンスタンドで充電できるようになれば利便性が高まります。


ガソリンスタンドが充電拠点に変わる
こうした取り組みの代表例が、中国最大のEVメーカーである中国の自動車・電池メーカー、BYD(01211/002594)と、シノペック(00386/600028)の提携です。両社はガソリンスタンド内の空きスペースを利用して急速充電設備を設置する計画を進めています。新たな充電施設を建設する場合に比べ、最短約1週間で開設できるケースもあり、整備スピードの速さが大きな強みです。
シノペックは中国全土で約3万1000カ所の給油・給電ステーションを運営しており、BYDもすでに6000カ所以上の急速充電ステーションを整備しています。両社が協力することで、全国規模の充電ネットワーク構築がさらに加速すると期待されています。
一方、吉利グループ傘下の商用車メーカー、吉利遠程は、CNOOC(00883/600938)と協力し、ガソリンや軽油だけでなく、メタノール燃料、EV充電、電池交換にも対応する総合エネルギーステーションの運営を始めました。利用する車両の種類に応じて複数のエネルギーを供給できる点が特徴で、今後の普及モデルとして注目されています。

電池交換というもう一つの選択肢
EVのエネルギー補給方法は充電だけではありません。近年、中国で急速に広がっているのが「電池交換」です。これは充電を待つ代わりに、車載電池を短時間で満充電済みの電池に交換する仕組みです。
世界最大の車載電池メーカーのCATL(03750/300750)は、この分野への投資を積極化しています。同社は北京汽車(01958)や宇通客車(600066)、奇瑞汽車(09973)などと協力し、電池交換に対応した車両を共同開発しています。特に長距離を走る物流トラックでは、充電時間を短縮できるメリットが大きく、運行効率の向上につながると期待されています。
乗用車でも電池交換ステーションの整備が進んでいます。利用者は状況に応じて「充電する」か「電池を交換する」かを選べるようになり、利便性が高まります。
CATLは2026年中に、超急速充電と電池交換の両方に対応したステーションを累計4000カ所整備し、中国約190都市と主要高速道路網をカバーする計画を掲げています。

インフラ競争がEV市場の成長を左右する
もっとも、課題も残っています。メーカーごとに電池の形状や規格が異なるため、どの車でも同じ電池交換ステーションを利用できるわけではありません。また、車両と電池を別々に管理する仕組みに対応した保険制度や会計ルールの整備も必要です。
そのため、中国政府や企業は充電設備や電池交換設備の規格統一を進めています。接続方式や通信規格、安全基準などを標準化することで、メーカーの違いを超えて利用しやすい環境づくりを目指しています。
中国のEV市場では、車両性能や価格競争に加え、「どこでも素早くエネルギーを補給できる環境」を整えられるかが新たな競争軸になりつつあります。自動車メーカーとエネルギー企業の連携は、EV普及を支える重要な基盤として、今後ますます存在感を高めそうです。



