最近の株式マーケットでは、中国のメモリー企業が上場するということが一部で話題となっています。その企業名は長キン存儲技術(CXMT、Changxin Memory Technologies)。正確にはCXMTの親会社が上場します。
メモリーというと、日本ではキオクシア、世界的には韓国サムスン電子やSKハイニックス、マイクロン・テクノロジー、サンディスクなどが有名です。これまでCXMTの名前を聞くことはほとんどありませんでしたので、どのような企業なのか調べていきます。
CXMTとは?
CXMTは中国最大のDRAMメーカーであり、2026年7月27日に上海証券取引所の科創板(スター・マーケット)へ、同市場史上最大規模となる上場を予定しています。科創板はハイテク企業が上場しており、米国でいうNASDAQに近いイメージですね。
CXMTは2016年に設立された中国・安徽省合肥(ごうひ)市を拠点とする半導体メーカーです。まだ設立10年目にもかかわらず、中国国内で汎用DRAMを大規模に量産できるメーカーに成長しました。
補足ですが、DRAMはパソコンやスマートフォン、サーバーなどに欠かせないメインメモリに使われる半導体。データを一時的に記憶する役割を担い、コンピューターの作業机と言われます。パソコンのメモリーを増設したら快適になった!という経験がある人は多いでしょう。DRAMはそのメモリーです。
飛ぶ鳥を落とす勢いの成長
DRAM市場は長らく、韓国のサムスン電子・SKハイニックス、米国のマイクロン・テクノロジーという大手3社がほぼ独占してきました。そこへ急速に食い込んできたのがCXMTです。
英調査会社オムディア(Omdia)によると、CXMTのDRAM生産能力・出荷量は中国で1位、世界で4位に位置しています。シェアの割合だけでみると世界大手3社とは依然として大きな開きがあるようですが、うかうかしていると距離をどんどん詰められる勢いには変わりありません。

※各種データを素に弊社作成
設立からわずか10年ほどで世界4位まで駆け上がったスピードは驚異的で、韓国・米国勢が強く警戒する存在になっています。製品面ではDDR4やLPDDR4X、最新世代のDDR5などを量産しており、AI向けに需要が急拡大する広帯域幅メモリー「HBM」への参入も進めていると報じられています。
科創板で過去最大のIPOへ
CXMTは2026年1月に科創板への上場手続きを開始し、当初は最大295億元(約6500億円)の調達を計画していました。その後、旺盛な投資家需要を背景に発行価格が引き上げられ、少なくとも579億元、最大で666億元(約1兆6000億円)を調達することとなります。
今回の調達規模は2020年に上場した半導体製造大手の中芯国際(SMIC)を上回り、科創板としては歴史上最大、中国市場全体では2010年の中国農業銀行に次ぐ史上2番目の大規模IPOとなります。
大規模な資金調達額となりますが、調達資金の使途は以下のようになります。

出所:CXMT のIPO目論見書
目論見書に記載されていたのは当初計画の295億元で、差額の50億元は自己資金や借り入れなどで対応するようです。実際には295億元を大幅に上回る調達額となる見通しなので、投資総額を引き上げるか、新たな投資を行うか注目されます。
CXMTの脅威
これまでDRAMは寡占市場でしたが、新たなプレーヤーが出現することで市場バランスが崩れる可能性があります。AI投資の影響でメモリー価格は暴騰し、これに頭を抱える企業が多く存在しています。最近では米アップルがCXMTなどからメモリー調達を検討していると報じられ、議論を呼びました。
中国と米国がバチバチに対立しているのは誰もが知るところ。安全保障上の理由などによってCXMT製品を規制するリスクが隣り合わせです。メモリー調達コストを下げる選択肢としてCXMT製品が筆頭に上がりますが、仮にCXMTが安価で大量のメモリーを提供すれば今のメモリー市況は下落するでしょう。CXMTは、政治的圧力の材料、AIラリー崩壊の材料にもなり得るため、その存在感は非常に大きいと言えます。



