いまから投資信託

<FPが解説>投資信託を選ぶ時にチェックしたい交付目論見書、読み方とは?

投資信託の交付目論見書は、投資信託を選ぶ上で重要な情報が詰まっています。


目論見書には①ファンドの目的・特色、②投資リスク、③運用実績、④手続き・手数料などが記載されていますが、どのように読み解くのでしょうか?


今回は投資信託の交付目論見書の読み方を解説していきます。


投資信託を購入する際には交付目論見書のチェックを

金融商品取引法では、新しい投資信託などを募集・売り出す時に目論見書を交付することが義務づけられています。


ネット証券会社で投資信託を購入する際にも、インターネットで交付目論見書を閲覧できます。目論見書には、交付・請求・訂正の3種類があります。


 

出典:内閣府 規制改革推進会議 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ「金融庁 提出資料」


投資信託を購入する際には「交付目論見書」をチェックすることをおさえておきましょう。

なお、金融商品取引契約を締結しようとする場合は「契約締結前交付書面」、金融商品取引契約が成立した時点では「契約締結時交付書面」が交付されます。


目論見書には以下4つの事項が記載されています。

1. ファンドの目的・特色

2. 投資リスク

3. 運用実績

4. 手続き・手数料など


投資家に人気のある三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の交付目論見書を参考に、読み方を解説していきます。


交付目論見書の読み方・チェックしておきたいポイント

以下はeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)交付目論見書の表紙です。

 

出典:交付目論見書「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」

①商品名、②商品の分類や属性区分、③委託会社が記載されています。


②商品の分類や属性区分で「アメリカの株価指数S&P500との連動を目指すインデックス型投資信託」という投資信託のおおまかな内容を把握できます。


2ページ目からは「ファンドの目的・特色」です。


1.ファンドの目的・特色

 

ファンドの目的と特色が記載されています。

目的にはファンドがどのような資産に、どのような目的で投資するのかが書かれています。

このファンドは「アメリカのS&P500指数の値動きと連動する投資成果」が目的です。


ファンドの特色では「どこの地域に」「どのような商品に」投資するかが分かります。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はアメリカのS&P500指数が対象で、S&P500に採用されている米国株式に投資することを把握できます。


「為替ヘッジをしない」というファンドの特色も書かれています。為替ヘッジとは為替の動きによる損失を回避(ヘッジ)する行為です。

「為替ヘッジあり」は為替リスクをおさえられますが、ヘッジをするためのコストがかかります。


為替ヘッジなしの商品は為替の影響を受けますが、ヘッジコストはかかりません。

短・中期の取引では為替ヘッジあり、長期の運用は為替ヘッジなしが適していると言われています。


次のページにはファンドの仕組みや投資制限・分配方針も書かれています。


ファンドの仕組みとしては、株式・債券などに直接投資するもの、投資家から集めた資金をベビーファンド→マザーファンド→株式などの流れで投資する「ファミリーファンド方式」などがあります。


eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)もファミリーファンド方式です。


eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は成長重視で分配金を目的とする人は少ないと思われますので、分配については割愛します。


2.投資リスク

 

投資リスクのページでは、基準価額の変動に影響を与える「リスク」を確認できます。


海外に投資する「為替ヘッジなし」のファンドには、為替レート変動の影響を受ける為替変動リスクがあることをおさえておきましょう。


一般的に円高になると基準価額がマイナスに、円安になるとプラスの影響があります。

価値が変動する価格変動リスク、投資先の信用性により生じる信用リスク、流動性が不十分になってしまう流動性リスクなどもあります。


eMAXIS Slimシリーズは人気があるため、流動性リスクが低い投資信託といえるでしょう。


3.運用実績

運用実績はファンドの実績をグラフなどで確認できます。

 


④は基準価額・純資産の推移です。

基準価額の推移は、インデックス型投資信託の場合「指数の推移と比較して、連動した動きをしているか」をチェックします。このファンドはS&P500との連動を目指していますので、過去のS&P500指数と比較してみましょう。


純資産はファンドの規模を表しています。純資産総額が小さすぎると途中で繰り上げ償還される可能性がありますので、ある程度規模が大きいことが望ましいです。


⑤は主要な資産の状況で、投資している銘柄をチェックできます。このファンドはアップル・マイクロソフトの比率が高いですが、S&P500は入れ替わりがあります。アップルやマイクロソフトの株価が下落すると他の銘柄の比率が上昇するでしょう。


⑥は年間収益率の推移は、ファンドの価値が1年間にどの位上下したのかを表しています。株式に投資するファンドですので、2018年からは-7.7%~44.5%と値動きの幅が大きいことが読み取れます。


4.手続き・手数料など

 

⑦は投資家が負担するコスト、⑧は投資者が信託財産で間接的に負担する費用です。

このファンドは購入時手数料がかかりませんが、手数料がかかる投資信託もあります。信託財産留保額とは、中途解約のペナルティ的な意味合いで科される手数料です。


⑧で日々の純資産総額に対して、年率0.09372%以内をかけた額が信託報酬(運用中の手数料)として差し引かれることが書かれています。

中・長期で投資する際には⑧の運用管理費用(信託報酬)を必ずチェックしましょう。


信託報酬は、保有している間はずっとかかるコストです。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)はインデックスファンドですので運用管理費用は低めですが、アクティブファンドは信託報酬が高い商品が多いです。


特に新興国に投資するファンドはコストが高めの傾向にあります。

投資対象が同じ地域で実績も同程度の場合は、手数料が安いファンドを選んだ方が良いでしょう。


交付目論見書の読み方を知っておこう

投資信託の交付目論見書の読み方を解説してきました。


このファンドの場合、把握すべきポイントは①為替リスクがあること(投資リスク)、②S&P500と連動しているか(運用実績)、③信託報酬(手続き・手数料など)です。

②は実際のS&P500の推移と比べて、ファンドの基準価額と連動しているか確認しておくことをおすすめします。


他のファンドでも交付目論見書を読む時には、リスク・運用実績・信託報酬をチェックしておきましょう。


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ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

大学在学中に2級FP技能士の資格を取得。会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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