GAFAはグーグル(上場会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック(現在はメタ・プラットフォームズ)、アマゾンの頭文字をとったものです。この4社がデジタル経済の覇者となり、株式市場に君臨しています。GAFAは未来を見据えて挑戦を続けているようですが、盛者必衰は世の常。GAFAの次に備えるのもいいかもしれません。
雪の結晶はクラウドで生まれる
スノーフレイク(Snowflake)は「雪の結晶」という意味です。なんとも美しい社名で、会社のロゴにも雪の結晶が使われています。同社のホームページに掲載された社名の由来についての説明には「雪の結晶はクラウド(雲)で生まれる」というものがありました。クラウドコンピューティングの技術を使い、ビッグデータの保管や分析といったサービスを提供するスノーフレイクにとってクラウドには重要な意味があるようです。
このほか「雪の結晶には同じ形がない」のも理由のひとつに挙げています。それぞれの顧客ニーズに合わせ、最も適切なサービスを提供できる点を社名に反映させたと説明しています。納得できるような感じがしますし、後づけのような気もしますが、ネーミングとは得てしてそんなものかもしれません。
2020年9月にニューヨーク証券取引所に上場したスノーフレイクは新規株式公開(IPO)から大きな注目を集めました。もともとユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業)としては知られた存在で、評価額では世界的にみても上位だったのですが、IPO時のサプライズで、その社名が広く知れ渡りました。
赤字の新興企業に異例の投資
サプライズとはウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイがIPOに応じ、投資に踏み切ったというものです。バフェット氏は「理解できないものに投資しない」という投資信条で成功を収め、IT銘柄への投資に慎重な姿勢を貫いてきました。
現在91歳のバフェット氏はすでに後継者を指名しており、バークシャー・ハサウェイの保有銘柄のポートフォリオも変わりつつあると伝えられています。「理解できない」としてGAFAへの投資が後手に回り、チャンスを逃したとの反省も変化につながったようです。
それにしても赤字を続けている新興企業、しかもクラウドベースのデータウエアハウジングという難解な事業を展開する企業のIPOに応じ、いきなり投資するのは異例中の異例です。バークシャー・ハサウェイは2020年9月に7億8500万ドルをスノーフレイクに投じました。GAFAへの投資機会を逃した反省で、次のプラットフォーマーを見据えた投資だったとの見方も一部では出ているようです。
主力事業は企業のデータ活用支援
スノーフレイクはデータ活用を簡素化するプラットフォーム「スノーフレイク」を通じ、企業にデータマネジメント・ソリューションを提供しています。日本語版のホームページをみると、事業内容はデータウエアハウジング、データレイク、データエンジニアリング、データサイエンス、データアプリケーションの開発といった横文字が並んでいます。
データウエアハウジングは直訳すればデータの倉庫業務。企業が日々積み上げてゆく業務上のデータを格納し、仕分けしてビジネスの意思決定に役立てる状態に整えるプロセスです。機能的な倉庫では商品がきちんと仕分けされ、スムーズに出庫できるのと同じイメージでしょうか。クラウド上のシステムであるため部署間で共有するのも容易です。
従来型のデータベースでは部署や事業ごとに縦割りでデータを保管するケースが多く、横の連携を実現するにはデータのインポートやコピーに膨大な時間が必要でしたが、クラウドを利用した「スノーフレイク」では関係者全員が同じデータウエアハウスにアクセスし、データの分析結果なども共有できます。
「スノーフレイク」はクラウドでの使用を前提に設計、開発されたプラットフォームで、顧客の需要に応じて容量や機能を拡張できる柔軟性を持ち合わせています。また、サービスを利用した分だけ支払う仕組みのため、導入のハードルも低いとされています。会社組織の業務フローの効率化やシステム担当部署の負担軽減につながるメリットもあるようです。
2029年に売上高100億ドルは絵空事か
2022年1月末時点の顧客数は5961で、前年の4139に比べて大幅に増加しています。フォーブス誌が発表する「グローバル2000社(2021年版)」のうち490社がこの中に含まれているそうで、世界で上位2000社にランクされる大企業の4社に1社がスノーフレイクのサービスを利用している計算です。さらに年間のサービス収入が100万ドルを上回る顧客は184社。日本には2019年に本格的に進出し、事業を展開しています。
業績は売上高が毎年のように倍増していますが、販売費や研究開発費、一般管理費も膨らみ、純損失が少しずつ増えています。スノーフレイクが発表した業績見通しでは、2023年1月期のプロダクトの売上高が前年実績比66%増の18億9300万ドルです。また、2029年1月期にはプロダクトの売上高を100億ドル以上に増やすという大きな目標も掲げていますが、このセクターのトップランナーとしてサービスの標準化で主導権を握れば、100億ドル超えも絵空事ではないのかもしれません。