GAFAはグーグル(上場会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック(現在はメタ・プラットフォームズ)、アマゾンの頭文字をとったものです。この4社がデジタル経済の覇者となり、株式市場に君臨しています。GAFAは未来を見据えて挑戦を続けているようですが、盛者必衰は世の常。GAFAの次に備えるのもいいかもしれません。
ロブロックスはメタバースの有望企業
2021年10月にフェイスブックが社名をメタ・プラットフォームズに変えたことは日本でも大きな話題になりました。メタバース(インターネット上の仮想世界)に事業の重点を置く方針を打ち出し、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の代名詞ともいえる社名をあっさり変えてしまったのです。
メタ・プラットフォームズはSNSでは突出した存在で、「フェイスブック」の月間アクティブユーザー数(MAU)が30億人弱、「ワッツアップ」が約20億人、「インスタグラム」が約10億人に上ります。ネット上の交流という機能を提供するSNSの先頭ランナーであるメタ・プラットフォームズが、次の交流の場としてメタバースを選んだのであれば、その将来性は有望だと思えてきます。
2021年にニューヨーク市場に上場したロブロックスはメタバースの有望企業として注目されています。主力事業はオンラインゲームのプラットフォームの運営で、ロールプレーイングやアクション、アドベンチャー、シューティングなど多岐にわたるジャンルのゲームが公開され、その数は5000万本を超えるといわれています。パソコンやスマートフォンのアプリなどを通じてログインでき、ほとんどのゲームが無料ですが、課金を通じてアイテムを購入することもできます。
また、「ロブロックス・スタジオ」というソフトウエアを使い、利用者がオリジナルゲームを開発することも可能。ゲーム自体の出来栄えは別にして自作ゲームを公開できるという楽しみもあるようです。
メタバースとはなんぞやという問題
オンラインゲームとメタバースは相性がいいとされますが、ここで行き当たるのがメタバースとはなんぞやという問題です。ネットで調べても定義はさまざまですが、ロブロックスのデイビット・バシュッキ最高経営責任者(CEO)は「アバター(仮想世界の中の自分の分身)のアイデンティティの確立」「参加者との交流」「コンテンツの多様性」「没入体験」「経済性」などを挙げています。
このほか「三次元の世界」「大規模なユーザーの同時接続」「コンテンツの自由な制作」などがメタバースの要件になるとの意見もあります。ひとつひとつの項目をみると、オンラインゲーム・プラットフォームの「ロブロックス」はほとんどすべてをクリアしているように感じます。ゲームを媒介して参加者同士が交流する仮想空間を提供する事業。ロブロックスが注目される理由になっているようです。
ロブロックスが脚光を浴びるようになった契機は、世界的なパンデミックです。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、さまざまな国・地域が行動制限に踏み切りました。ロックダウンでリアルな世界の行き場を失った子どもたちが集まったのが「ロブロックス」などのオンライン上の仮想空間だったのです。オンラインゲームとしてユーザー数が圧倒的に多い「フォートナイト」も子どもが集まる空間でしたが、ユーザーが交流する仕組みを持つこともあり、世界中で利用者が急増しました。こちらもメタバースの有力候補とみられていますが、運営会社のエピック・ゲームズは未上場企業です。
1日当たりの利用者数、5400万人を突破
「ロブロックス」にも数多くのユーザーが訪れ、その数は段階的に増え続けています。2022年1-3月期は1日当たりのアクティブユーザー数(DAU)が5410万人に達し、2021年10-12月期の4950万人からさらに増加しました。DAUの内訳は米国・カナダが1240万人、欧州が1500万人、アジア太平洋が1260万人、その他が1420万人となっています。特定地域に偏ることなく、バランスがとれている印象です。
日本語版もあり、アジア太平洋のユーザー数は順調に伸びていますが、中国版では曲折があったようです。ロブロックスは香港上場のテンセントと提携し、2019年に合弁会社のロブロックス・チャイナを立ち上げました。2021年7月には「ロブロックス」中国版のモバイルアプリをリリースしましたが、その年の12月には運用を中止。5カ月足らずで運用を終えた理由は明らかになっていませんが、中国政府がITサービス事業者への締め付けを強化する中、メタバース的なプラットフォームを警戒したとの見方も出ているようです。
ナイキやグッチ、「ロブロックス」内に仮想空間
一方、毎日毎日、世界中から5000万人以上が訪れる「ロブロックス」の集客力を大手企業が見逃すはずもありません。2021年にはナイキが「ロブロックス」内に「ナイキランド」という仮想空間を作りました。利用者のアバターはスポーツ系のゲームで遊べますし、ナイキのシューズやウエアを身につけることもできます。
また、2022年6月にはイタリアの高級ファッションブランドのグッチが「ロブロックス」内に常設空間の「グッチタウン」を開設しました。グッチはこれまでもロブロックスと提携してきましたが、常設空間をつくるのは今回が初めてです。アバターがミニゲームで集めたコインを使い、グッチブランドの服などを着用できる仕組みとなっています。
さらに6月には化粧品ブランドのジバンシイが仮想空間「ジバンシイ ビューティハウス」を「ロブロックス」内に開設しました。アバターにメークを施すといった使い方をする予定で、いずれアバターで試した製品を購入できるようになる見通しです。
メタバースとしての「ロブロックス」の弱点は利用者層といえるかもしれません。その成り立ちゆえに子どもの利用が圧倒的に多く、2020年1-9月期にはDAUに占める13歳以下の割合は54%に達していました。ただ、最近は若者の利用も増えているようで、2022年1-3月期のDAUに占める13歳以下の割合は47%にまで低下しています。このまま若者層の割合が上昇していけば、プラットフォームとしての価値はさらに高まりそうです。