GAFAはグーグル(上場会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック(現在はメタ・プラットフォームズ)、アマゾンの頭文字をとったものです。この4社がデジタル経済の覇者となり、株式市場に君臨しています。GAFAは未来を見据えて挑戦を続けているようですが、盛者必衰は世の常。GAFAの次に備えるのもいいかもしれません。
メキシコ出身の投資銀行家が創業
医薬品業界で特許ビジネスを展開するロイヤルティ・ファーマを創業したのは、メキシコ出身のパブロ・レゴレッタ氏。メキシコの名門私立大学、イベロアメリカナ大学で学位を取得した後、米国に渡り、投資銀行家としてキャリアを積んでいます。
レゴレッタ氏が30代前半だった1996年に投資銀行を辞めて立ち上げたのがロイヤルティ・ファーマです。研究機関や病院の研究部門、非営利団体、中小の製薬会社、そして世界的な医薬品大手などの医薬品開発に資金を提供し、開発を後押ししつつ、医薬品の承認に向けた手続きなども支援しています。
ロイヤルティ・ファーマは医薬品の特許ビジネスのパイオニアと称されています。社名の通り、資金提供と引き換えに医薬品の特許権の一部を取得し、その医薬品が商品化された場合に売上高の一部を特許料として受け取るビジネスを展開しています。
ここまでをみると、素晴らしいビジネスに思えます。書籍や音楽と同様、医薬品業界でも大ヒットを飛ばせば、特許料ががっぽり入ってくるのです。実際、ロイヤルティ・ファーマは年間の市場販売額が10億ドルを上回るブロックバスターズと呼ばれる医薬品の特許を14も抱えています(2022年8月時点)。
左うちわで夢の印税生活?
特許を取得した医薬品が売れれば売れるだけ、特許料も雪だるま式に膨らんでいきます。左手でうちわをあおぎながら、じっとしているだけで収入が入る「夢の印税生活」といえますが、そこにたどり着くのは容易ではありませんし、維持するのも大変なようです。
医薬品には新薬発見から開発、非臨床の安全性や薬効の検査、第1-3フェーズの臨床試験、承認手続きなど発売にこぎ着けるまでにいくつものハードルが待ち構えています。商品化するにはすべてを乗り越える必要がありますが、もちろん頓挫するリスクも隣り合わせています。
また、特許ビジネスでは医薬品のライフサイクルの早い段階で資金を提供したほうが有利ですが、その分リスクも高くなります。画期的な新薬発見でも開発段階や臨床試験段階でつまずくケースもあるでしょう。だからといって医薬品開発のライフサイクルも終盤に近づいたときに投資しても旨みは少なくなります。
そこで重要になるのが目利きです。さまざまな分野の治療薬のうち市場規模が極めて大きいものもあれば、市場規模は小さくても代えが効かない医薬品もあります。商品化の可能性や発売後のポテンシャルなどを精査し、リスクとリターンのバランスを考慮しつつ投資のタイミングを見極める必要があります。
高度の専門知識が必要、参入障壁は高く
医薬品の特許ビジネスは高度な専門知識と潤沢な先行投資の資金が必要で、参入障壁は極めて高いといわれています。新薬という未知の領域を適切に分析し、投資の是非を判断する作業は困難で、その判断ひとつで業績に影響が出るのですから。
ロイヤルティ・ファーマは、会長兼最高経営責任者(CEO)のレゴレッタ氏とマネジメント契約を結び、目利き役を丸投げしているようです。レゴレッタ氏が専門家を雇い、特許の取得というビジネスの核心を差配します。
一方、新薬の特許は一定期間後に期限切れを迎える宿命にあるだけにヒットを飛ばしたとしても「夢の印税生活」は長くは続きません。特許切れの後には後発医薬品(ジェネリック薬)が現れ、市場を奪ってゆくのです。左うちわの余裕はなく、常に疾走しつつポートフォリオを組み替えるというイメージなのかもしれません。
世界的な医薬品大手と取引
2021年12月期の年次報告書によると、現在の稼ぎ頭は嚢胞性線維症という遺伝性疾患の治療薬で、バーテックス・ファーマシューティカルズが販売しています。2021年の特許料収入は7億200万ドルです。それに次ぐのはバイオジェンが販売する多発性硬化症の治療薬で、特許料収入は3億6900万ドルに上ります。
このほかにも2021年には、アッヴィ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、メルク、ギリアド・サイエンシズ、アストラゼネカ、アステラス製薬、武田薬品工業などの医薬品で、特許料収入を得た実績があります。
2021年12月期の業績を測る指標では、調整済み特許料収入(非GAAP)が前年比18%増の21億2900万ドル、利益水準を図る調整済みキャッシュフロー(非GAAP)が19%増の17億6700万ドルと堅調でした。
バフェット氏が投資、短期間で全株を売却
ロイヤルティ・ファーマは実はバフェット銘柄で、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが2021年11月に4億7500万ドルを投資したと発表しました。ただ、保有期間は短く、2022年8月までにすべての保有株を手放したとしています。
2022年には米国での金融引き締めでテック株などの株価は大きく下げましたが、ロイヤルティ・ファーマの株価は比較的安定しています。バークシャー・ハサウェイが8月に保有株をすべて売却したと発表したときもあまり影響がなかったようです。景気動向に左右されにくいという点もロイヤルティ・ファーマの強みといえそうです。