次のGAFAを探しています

【次のGAFAを探しています】第5回:ショッピファイ(SHOP)

GAFAはグーグル(上場会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック(現在はメタ・プラットフォームズ)、アマゾンの頭文字をとったものです。この4社がデジタル経済の覇者となり、株式市場に君臨しています。GAFAは未来を見据えて挑戦を続けているようですが、盛者必衰は世の常。GAFAの次に備えるのもいいかもしれません。


創業者はドイツ出身、カナダで運命の出会い

ネット通販向けの電子商取引(EC)プラットフォームの開発を手掛けるショッピファイの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のトバイアス・ルーク氏は1981年にドイツのコブレンツという小さな町で生まれました。6歳のときにパソコンを与えられたことがその後の人生を決定づけます。プログラミングやパソコンハードウエアの改造にのめり込み、10年後の16歳のときに学校をドロップアウト。大学には行かず、オープンソースのソフトウエア開発に参加するなどプログラマーの道を歩み始めます。


転機は冬のバケーションで訪れたカナダでの出会いでした。スノーボード旅行で現在の奥さんに出会い、2002年にはカナダ・オタワに移住します。ルーク氏は当時、プログラミングの燃え尽き症候群に陥っていたようで、事業パートナーとともにスノーボード製品のオンラインストアを立ち上げようとします。物品販売を生業にしようと考えたのです。


ただ、当時はオンラインストア用のソフトウエアが乏しく、あったとしても非常に高価でした。「適切なソフトウエアがないのであれば、つくってしまえ」と考えたルーク氏は自らプラットフォームの開発を手掛け、2004年にオンラインストア「スノーデビル」を立ち上げます。


「スノーデビル」は結果的に大当たりでした。オンラインストア・プラットフォームとしての評価が高く、ライセンスを供与してほしいとの問い合わせが相次いだようです。ルーク氏らはスノーボード用品販売とオンラインストア用プラットフォーム提供という二つの事業を天秤にかけ、後者を選択しました。燃え尽き症候群だったルーク氏はソフトウエア開発の分野への逆戻りを迫られたようです。


帝国への反逆者に武器を提供

スノーボードショップの「スノーデビル」から転身したショッピファイは順調に顧客を増やし、快進撃を続けます。2015年にはニューヨーク市場に上場。アマゾンを経由せずに自社のオンラインストアで製品を販売したい企業を取り込んで成長したことで、アマゾンはショッピファイをライバルととらえ、2021年にはショッピファイと同様の事業を展開するオーストラリアのセルズ(Selz)を買収しています。


ルーク氏もアマゾンを強烈に意識していたようで、「アマゾンは帝国を築き上げようとしている。ショッピファイは帝国への反逆者(アマゾンに取り込まれないオンラインストア)に武器を提供している」と語っています。


ショッピファイはニューヨーク市場またはナスダック市場に上場する銘柄の中で、時価総額で190位前後(ETFを除いています)。2021年末時点で175カ国・地域の約206万3000に上るオンラインストアが同社のプラットフォームを使っています。内訳は北米が全体の55%を占め、欧州・中東・アフリカが25%、アジア太平洋が15%、中南米が5%です。



ECインフラ構築のプラットフォーム

ショッピファイの具体的な事業は電子商取引(EC)インフラの構築です。オンラインストアの開設と運営に必要な機能一式をストアのオーナーに提供し、収入を得るビジネスモデルです。ウェブやスマホの画面を通じてネットショップの利用者が目にするフロントエンド業務では、表示や管理、販売などに必要なソフトウエアを提供します。


裏方業務に当たるバックエンドでは、製品と在庫の管理、注文の処理、決済、配送の手配、新たなバイヤーの発掘、顧客管理、商品の調達、分析、資金調達などを一元的に管理するソフトウエアを通じ、一連の機能を使えるようにしています。もちろんカスタマイズも可能で、オンラインストアのオーナーはショッピファイと提携するスペシャリストや専門業者に依頼し、デザインや機能を改良することもできるのです。


ショッピファイのプラットフォームは定額方式で利用できます。米国のサイトをみると、最も安い「ベーシックプラン」は月額29ドル、スタンダードの「ショッピファイ」が79ドル、高機能の「アドバンス」が299ドルです。このほか大規模なEC事業に対応する「ショッピファイ・プラス」は月額2000ドルからとなっています。ちなみに食品メーカーのハインツや動画配信のネットフリックス、フィットネスウエアのジムシャークなどが「ショッピファイ・プラス」を利用しているそうです。


米英で金融サービス、ストアの成長促進へ

業績をみると、まず売上高はサブスク・ソリューションと店舗向けサービスなどのショップ・ソリューションに大別されます。サブスク・ソリューションは上に記した定額プランのサービス料金が中心で、売上高の約3割を占めています。ショップ・ソリューションは決済サービスの手数料収入を中心に保管、配送、広告、マーケティングなどのサービスで収入を得ています。


ショッピファイは、ショップオーナーが商品を出品するアマゾン型ではなく、モール内にオンラインショップを出店する楽天型でもありません。個別のオンラインストアに開設と運営に必要な機能を提供し、さらに手厚いサービスでストアを育てるイメージでしょうか。実際、2016年に米国、2020年に英国とカナダで金融サービスを始めました。条件を満たしたストアに資金を提供し、事業の成長を促します。


さてこうした反逆者に武器を提供するような一連の取り組みが帝国を揺るがし、いずれ倒すことができるのか。日本でも事業の強化に乗り出したショッピファイの動きに一段と注目が集まりそうです。

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中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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