学資保険は子どもが小さい年齢の際に親が加入する保険です。子どもが病気やケガに見舞われた際に治療費を保障します。また保険加入後に親にもしものことがあった場合に、以降の保険料支払が無くても保険が継続するという特徴があります。
なお、学資保険で最も期待されているのはその貯蓄性です。保障&貯蓄の両立性で学資保険は子どもの小さい家庭から高い支持を得ていたのですが、その傾向が大きく変わっています。
学資保険の貯蓄性が著しく低下した理由
最近保険会社との面談のなかで学資保険に入りたいと相談すると、学資保険はあまりお勧めできないので、ほかの貯蓄型保険はどうですか?と返されることが多いです。10年ほど前には返戻率110%を超えていた学資保険も多かったのですが、いまは皆無となっています。
返戻率という専門用語が出てきましたので、噛み砕いてみていきましょう。返戻率とは、保険に加入してから毎月継続して支払続けた保険料の総額に対し、その保険を解約した時に戻ってくるお金(解約返戻金)がどれくらい戻ってくるかの割合です。学資保険の場合親に何かあった場合は保障対象となるため残された家族の生活が守られる一方、何も無くても保険料相当のお金が戻ってくる仕組みの商品です。
この返戻率は解約したときにはじめて判明するものではありません。学資保険の申込時に将来の解約返戻金を約束する仕組みです。払込保険料以上の解約返戻金を約束できない學所保険は申込時に十分な貯蓄機能がないと見なされ、敬遠される要因になっています。
この情報には保険を相談する側の顧客にも浸透してきています。筆者は事業の1部として保険会社に参画していますが、相談者側から学資は選択肢にない、と面談の最初であらかじめ表明されることも増えてきました。保険会社から顧客への一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションとしても学資保険が敬遠されていることがわかります。
解約返戻金の上下はどうやって決まるのか
解約返戻金が低い、という言葉には2つの意味があります。1つは学資保険に加入してから数年後など短い期間で解約をした場合に返戻金が低い状況のことです。加入後数年の保険料は契約にかかる事務費用や営業費用に充当されるため、低く抑えられています。
もう1つの意味は、18年や20年といった学資保険が本来役立つべき期間まで加入を継続したとしても、返戻金が伸びないという意味です。加入者が支払った保険料原資は生命保険各社が発行した債権となり、市場に出回ります。
債権には金利がつきますが、発行時より返戻時の金利が高くなった場合、市場にて買い手がつかなくなり、保険会社は止むを得ず債権の価格を下げます。この経過が影響して、解約返戻金が下がるという仕組みです。
ただこの説明には不明瞭な部分もあります。解約返戻金は申込時に決まっており、保険加入中の債権価格推移とは関連性が無いはずです。1つの仮説ですが、この債権の説明は変動保険の特徴であり、一般部分は株など別の運用で整備されている可能性もあります。
保険の商品構成において重要な部分のため、あまり開示されていない部分でもあります。各保険会社によって異なる部分も多いのではとも予測されています。
貯蓄性が低い学資保険は本当に無価値なのか
学資保険に限らず生命保険はそもそも、貯蓄性だけで選ぶものではありません。学資保険の持つ保障や万が一契約者である両親に万が一のことがあった場合、以降の保険料を納めなくても保険が継続できる点、一定期間保険を継続すると祝い金が受け取れる仕組みなど、学資保険には独自のメリットもたくさんあります。
生命保険はそもそも貯蓄性だけで加入を決めるものではありません。貯蓄性の視点から見て価値が低くとも、他の構成として学資を選ぶ選択肢は残しておき、加入者に選ばせるべきだと思います。最近外資保険など生命保険でトラブルが起きるのは保険会社(保険の募集人)と加入検討者の知識に差があるからであり、その差を埋める努力は不可欠なものだと思います。
この傾向は過渡期なところもあります。これまで生命保険の手が届かないところを保険会社は自助努力で新たな商品を生み、顧客に届けてきました。持病があり保険に加入できない人に対して引受緩和型の保険が生まれたり、保険会社でカバーできないニーズに対して少額短期保険が生まれたりすることで、業界が継続的に発展しています。
学資保険もいまのままではマイナスの印象が強いものですが、いずれ体制の整え、名前を子ども保険やファミリー保険(共済などでこのような名称の保険はあります)、再度注目の対象になるタイミングが到来するのではと筆者は考えています。
特にこれからの日本にとって子どもと、一生懸命に子どもを育てる親は国の宝です。まだ収入も低くリスクへの耐性が高くはない世帯にとって保険が更に役に立てるよう、新たな商品開発を見守り続けたいと考えています。