ある人材サービスの社長が40歳で心不全で亡くなったというニュースを耳にしました。筆者も今年40歳なので、他人事では無いなと実感します。その昔から40歳は「不惑」と呼ばれ、惑うことのない年齢に到達=大人としてひとつの到達点と見られていますが、それまで何とも思わなかった身体やメンタルの酷使が負担になり始める年齢でもあります。
普段私たちは毎日のやり繰りをしながら、老後についての準備をしています。本稿では40代・50代にして万が一のことがあったとき、元気なときは想像もせず毎日支払っていたものがどうなるのか、3つのテーマを中心に考えてみましょう。
40代50代で亡くなったとき、毎月支払っていた年金保険料はどうなるのか
毎月の給与(報酬)から金額が引かれている社会保険料。その中心が老齢年金の保険料です。これらの保険料にもとづいて原則65歳になったら公的年金が受給されますが、仮に50歳で亡くなったとして、遺族に「配偶者が貰うはずだった年金原資です」と年金受給権が移行されるものではありません。
年金制度は当人だけの積立方式ではなく、2022年現在現役世代の人は現時点の高齢者を保険料納付により支え、自身が高齢者になったらその時の現役世代が保険料を負担する「賦課(ふか)方式」を採用しています。
死亡時に残された配偶者や子どもの年齢においては遺族年金制度があります。当然この制度の恩恵を受けるには生前に年金保険料を継続して納めていた必要があるため、言葉は正確ではないですが「遺族年金によって一部は帰ってくる」ものです。
また受給権そのものではないですが、納めていた年金額に応じて死亡一時金が支給されます。死亡一時金はみなし相続資産として、法定相続人×500万円の非課税限度額を利用することができます。
ただ、多くの人は20歳から納めている年金なので、65歳から少なくとも20年は受け取りたいもの。年金制度には60歳から繰り上げて受け取る「繰り上げ年金制度」もあるので、上手に活用したいものです。
40代50代で亡くなったとき、iDeCo(個人型確定拠出年金)はどうなるのか
公的年金制度の賦課方式と異なり、積立方式なのが確定拠出年金制度です。特に最近は個人で運用するiDeCo(個人型確定拠出年金)が国の後押しもあり、急速に広まっています。こちらは積立方式のため、受取前に死亡した場合は相続資産になります。iDeCoを管理する金融機関に生前、受取人指定をすることも可能です。
そこまで包括して考えると、iDeCoは自分の老後資金であり、亡くなったときには家族の生活を補助する一時金として活用することができるでしょう。iDeCoを活用するから公的保険を納めないということはできませんが、若くしてのもしもに限定して考えると、公的保険よりも使い勝手が良いものです。メリットを上手に活用して、ライフプランに組み込んでいきましょう。
40代50代で亡くなったとき、ローン返済中の我が家はどうなるのか
40代50代でまさかの事態が訪れた際、最も気になるのは住宅ローンの返済です。特に配偶者が専業主婦(主夫)だった場合は、死亡後の返済を継続していけるのかと不安になります。
現実問題、死亡後には返済義務を引き継いでいく人を定めなくてはなりません。預貯金による返済も含めて返済能力がない場合は、金融機関に相談のうえでの売却も視野に入ります。ただ、生活の基幹である住まいに関する問題であるうえ、返済額も多額のため相続人の負担も大きいものです。そのため住宅ローンは、申込時にリスクヘッジをする仕組みがあります。「団信」と呼ばれるものです。
団信とは団体信用生命保険の略です。生命保険の一種で、住宅ローンの契約者が保険契約者になります。契約者に万が一のことがあった場合に支給される保険金は住宅ローンの残債に充当されるため、遺された家族が返済義務を負うことはありません。
保険料は毎月の住宅ローン返済金に付加して支払うため、団信を申し込むことで頭金が増える心配もありません(金融機関によって返済期間内の一時払いの場合もあります)。民間の住宅ローンはほぼ強制加入となっています。
住宅金融支援機構の運営するフラット35では申込が任意扱いのため、申込者が決めることができます。仮に団信を申し込まない場合は、住宅ローン分の返済をほかの手段でカバーすることをお勧めします。
3つのテーマでお伝えしましたが、総じて40代50代で亡くなったときのことを考えておくのが、現役世代最大のリスクヘッジでもあります。老後のために準備していたものだからこそ、万が一のことがあっても家族には何かの形で残しておきたいもの。
また、元気なうちにもしものことを家族と共有するのは気持ちも引けますが、死後に家族が一から確認することと負担は雲泥の差があります。共有のうえ、身体やメンタルのケアとともに、現役世代の毎日を楽しんでいきましょう。