回転寿司店で迷惑行為をする少年の行動が報じられています。本人は法的に反省を促されることに加え、親も責任能力を問われるケースが多いです。被害を受けた会社にとっても時価総額が著しく毀損するだけでなく、今や顧客の主力ともいえる海外来日客へのイメージ悪化懸念から強い態度で臨むようです。全国の親世代が気になるのは、我が子が当事者となる可能性です。
親にはどれくらいの責任があるのか
メディアで報じられているケースの場合、親にはどれくらいの責任があるのでしょうか。まず今回の責任は刑事と民事で問われます。損害賠償の規模に関して筆者は弁護士ではないため、公的に言及することはできませんが、回転寿司企業の通常営業や信頼、来店動機を阻害したとして営業妨害による賠償責任が命じられる可能性があります。そのうえで、該当行為に生じる賠償責任の違いと、それをどのように回避できる可能性があるかをFPの知見からお伝えします。
親には監督責任義務がある
前提として故意(わざと回転寿司店で報じられているような行為をした)場合、子どもとはいえ責任を負う責務があります。同様に重過失という概念もあります。重過失とは簡単に予見できるのに予見しなかったケースです。
回っている寿司にワサビを縫ってレールに戻し、それを食べた別の顧客が被害を被ることが理解できていれば故意です。予見できなくても、ワサビが辛いもので、大量に食べるとどうなるか理解していれば重過失というところでしょうか。
続いて過失のケースです。子どもが立ってお茶を飲んでいて、不注意でこぼして隣客に火傷をさせてしまったという場合は、過失に該当する可能性があります。この時の問題は一般的に子どもが12歳までの場合は、その行動を起こしたことによる影響を判断できないとされ、過失責任が無くなるとされます。これを「事理弁済能力」といい、よくニュースで耳にする責任能力の前段階です。事理弁済能力が認められない場合は、子どもの代わりに親が責任を負うケースが多くなります。
次いで子どもが13歳から15歳だと子どもと親の両方に責任が問われるケースが多く、15歳以上だと子どもが単独で賠償責任を負うという区分けが一般的です。これらは過失の場合で、回転寿司に限らず自転車事故や公園で遊んでいたときにボールが外に出て通行人にケガをさせてしまったケースなどが該当します。自転車事故は数千万円におよび賠償額が裁判で認定され、自転車保険が全国に広がり、かつ義務化される契機となりました。
親としてこのようなリスクを予防するには、子どもが迷惑をかけたときの損害を保険で保障する「個人賠償保険」が選択肢に上がります。ただ、この保険に加入したからといって昨今のメディアにある行動を子どもが起こしたときに保障の対象にはなりません。詳しく見ていきましょう。
家族も補償範囲に含まれている個人賠償保険でリスク回避策を
結論からお伝えすると、保険の保障範囲となるのは過失かつ事理弁済能力の対象年齢の賠償責任が生じた場合です。
わんぱく盛りの幼児が回転寿司レーンで遊んでいてお寿司をひっくり返す事例や、テーブル席で誤ってお茶を臨席の顧客にかけてしまった場合などは過失性が強いため、個人賠償保険の対象になるでしょう。それでも万が一被害を受けた当事者から過失責任を問われるリスクを実質免除し、家計への影響を抑えることができます。
病気やケガに対する医療保険やもしものための終身保険、収入の不安定化に対する収入保障保険などは知名度を上げてきているものの、日常生活のなかでは想像が及ばないことは現実です。何かが起こってから動き出すのは遅いので、昨今のニュースを他山の石としてリスクを軽減するようにしましょう。親が保険に加入したときに、生計を一にする家族も保障の対象に含まれるのも特徴です。
個人賠償保険はどこで申し込めるのか
個人賠償保険は生命保険会社で検討および申込をすることができます。 街中に数多くある乗合代理店でも該当保険を扱っていれば加入検討することが可能ですので、年頃のお子さんがいらっしゃる際は早期に検討することをお勧めします。
繰り返しになりますがメディアで騒がれているのは極めて故意性が高いものです。ただ世の中の潮流としてこういうニュースが報じられると、あくまで過失で「しか」ないものも被害者(社)サイドの態度が硬化し、思わぬ賠償責任を負うことも可能性としてあります。個人賠償保険の保険料は決して高いものではないものです。子どもに元気に育ってもらうためにも、保険を活用してのリスク摘み取りを組み立てていきましょう。
最後に故意性の高い子どもの行動に関しては、さまざまな回避策・解決策を考えたのですが「物事の善悪を教える」しか無いような気がします。それが何よりも難しいことは承知しつつ、保険を使って回避可能なリスクは回避していきたいですね。