以前自宅の新築時に家を建てて火災保険を検討するとき、「この地域は大地震が起きないから地震保険は必要ない」という会話がよくされました。1995年の阪神淡路大震災の被災地も、もともと大きな地震は起きないとされた場所でした。いまは日本全国一律のリスクとして、地震保険の大切さが叫ばれるように変わりました。
時が経って2020年代です。前年からこれまで計測したことのないような短期間集中豪富の予報が開始され、「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」という専門用語は一般の人でも知っている異常気象の言葉として浸透しました。地震以上に、大雨の降らない場所はありません。線状降水帯に対して、我々は保険でどのような備えをすることが必要なのでしょうか。
参照:気象庁HP
線状降水帯は火災保険の水害保障で対応する
線状降水帯は水害にあたるため、火災保険での補償対象となります。ただ火災保険の補償範囲に水害が含まれている保険商品と、含まれていない商品があるため注意しましょう。水害補償がついていても「建物」だけが対象の場合と、「建物・家財」が対象の商品があります。
(1)何があるかわからないので家財補償も検討する
建物のみが対象だと、床上浸水の場合に被害を受けた家具や家電が補償されないことになります。通常の水害ならば河川から遠い、住居の構造としてメゾネットなどは家財の補償まで必要無いと言われましたが、昨今の集中豪富は前例をはるかに超える被害の恐れがあります。万が一の線状降水帯による集中豪富で補償外になるくらいであれば、家財も含めた補償体制の整備を優先すべきではないでしょうか。
まずは現在加入している火災保険を見直し、水害への補償を十分なものとしましょう。線状降水帯は夏場だけのイメージですが、台風の季節や春先の大雨も含めると水害補償は1年を通じて必要です。ただ、水害補償は火災保険のなかに含まれていたり、特約に設定されていることが多いです。特約は主契約(火災保険)なしでは加入できないものなので、選択肢が限定されてしまいます。
(2)少額短期保険(少短)による家財保険も検討
そこで方法のひとつとして、水害に特化した少額短期保険(少短)も存在します。保険料相場は月2000-3000円です。
通常、家財補償を含む水害特約は火災保険に付帯しているものです。ただ賃貸物件の場合、火災保険は家主もしくは管理会社が指定したものに加入する人が多いです。一応管理会社は「火災保険はどうしましょうか?」と聞いてはくれますが、新居への入居に心躍っている人は知らずのうちに「お任せします」と答えていることも。
一度入った火災保険をキャンセルして水害付きの保険に入り直すのは骨の折れるもの。そこで水害補償に単独で加入できる少短の水害補償が存在感を増します。ただ、手がかかったとしても従来の火災保険に特約をつけた方が、同等の保険料で補償が上というケースもあります。その場合は面倒くさがることなく、後からの特約付帯で問い合わせましょう。
線状降水帯による自動車への被害はどうなるのか
線状降水帯による被害を見ていると、駐車場に置いてある自動車の被害も甚大です。
集中豪雨による自動車への補償は、自動車保険の補償対象となります。自動車保険のホームページを見ると、集中豪雨(ゲリラ豪雨)への補償がしっかりと明記されています。海沿いに自動車を置いていた際の、高潮による水没も補償の対象です。
なお、津波による水害の場合は地震保険の対象となり、自動車保険では補償されませんので注意しましょう。かつ多くの保険会社の場合、水没補償のあった自動車保険は翌年の等級が1段階下がります。
保険以外に線状降水帯から被害を抑えることはできないのか
保険による補償が充実しているからといって、線状降水帯に対し油断することはできません。自宅のなかにある日常風景は全損されたからといって戻ってくるものではないし、何より今日の水害は生命へのリスクが著しく高いものです。線状降水帯から身を、そして財産を守るにはどうすればいいのでしょうか。
2022年6月から、気象庁による線状降水帯の予報(参照)が開始されました。半日前を目安に地域へ警報が発令されます。ただ高齢者のなかには浸透していない人も多く、逃げ遅れの危険性があります。まずは家族・親族に対して、このような予報が出されたら単純な大雨警報ではないことを共有しましょう。
そして家財・自動車も線状降水帯から守ることが必要です。ただニュースで大雨の規模を見れば、何か簡単に手を打てば防げるようなものではないことに失望感を感じます。まずは予報体制の充実という最新事情についていき、身を守る手段を講じること。そして家具の位置を高くするなど、少しでもリスクを回避できるようにすること。水害保険と日々の備えが功を奏して、線状降水帯に対し少しでも日常生活を壊されるリスクが無くなることに期待したいものです。