「保険」解体新書

どこで発生しても不思議ではない昨今、地震保険の最新事情とは

2021年4月17日深夜、四国と九州のあいだにある豊後水道で大地震が発生し、愛媛県と高知県で震度6弱を観測しました。2024年1月の石川県・能登地方の地震に続き、大きな地震が続きます。かねてより懸念されていた南海トラフ地震との関連性を気象庁は否定したものの、度重なる地震の到来に不安は増しています。


万が一の地震からの復興において、頼りとなるのは地震保険です。地震保険は広く活用されているものの、定期的に変わる最新事情はあまりキャッチアップされていません。


2022年の地震保険の値下げ

最新の2022年10月まで、地震保険は4段階の保険料改訂を実施しています。2017年、2019年、2021年はいずれも保険料は値上げとなりました。


この3度の改定はいずれも2011年の東日本大震災の影響や、南海トラフ巨大地震の被害予測をまとめたものです。


これに対し2022年10月の改定では全国的に見ると値下げ水準となりました。上記3度で値上げしたものの、繰り返し発生する巨大地震の影響から更に大幅な保険料引き上げが必要であり、保険料不足の解消が急務でした。


一方で耐震性の高い住宅が普及しています。ハウスメーカー各社に求められる住宅の特徴として、耐震性は最上位で優先される性能です。


2022年10月の都道府県別改定率(抜粋)

改定率を都道府県別に見ていきましょう。

地震保険はマンションなどの「イ構造」と、木造一戸建てなどの「ロ構造」に分かれます

特に大都市圏に加え、過去大きな地震のあった都道府県がどのような増減となっているのかを分析します。


(イ構造) 単位:円


引用:損害保険料率算出機構



(ロ構造) 単位:円

引用:損害保険料率算出機構


まず、都道府県によって大きく保険料が異なることがいえます。保険料が高いところは人口が多いところと、大型の地震が頻発するところです。大きな地震が1度起きたというよりは、定期的に地震が発生し、誤解を恐れずにいえば住民の方々も「常に想定している」ところほど、保険料が高いことが読み取れます。全体的には値下げ傾向でも、都道府県別では大きく値上げしているところも少なくはありません。


この傾向を前提とすると、2024年の能登や四国に関しても、次回改訂においてすぐに保険料が必ず上がるとは言い切れません。ただ、能登の地震は特に木造建築への被害が大きく、必要保険料を考察すると次回改訂で大きく影響を受ける可能性もあります。



地震保険には加入しておくべき

2022年の査定内容や今後の保険料増減の不透明さを見ると、地震保険には加入しておくべきといえます。現行の保険料のうちに加入しておくことはもちろんですが、最近は「地震の起きやすい都道府県」が後付けになっています。


さすがにこの地域は(地震リスクは)大丈夫でしょう、と言われていたところでM(マグニチュード)6を超える地震が突発的に発生することを考えると、結果的に地震が起こらないのに保険料負担するリスクよりも、万が一の地震発生に備え、補償体制を高めておくリスクの方が優先されるべきです。


かつて「災害は忘れた頃にやってくる」という言い伝えがありました。最近は地震が起きるリスクを忘れている方は皆無でしょう。それほど至るところで大きな地震が発生しています。これから持ち家という選択をした方に限らず、何かしらの事情で地震保険を見送った方も、本当に不要なのかともう一度再検討するタイミングかもしれません。

この連載の一覧
どこで発生しても不思議ではない昨今、地震保険の最新事情とは
投資と保険を組み合わせた変額保険の仕組み、メリット・デメリットとは?
一時払い終身保険が専門家に敬遠されがちなのは何故か
自治体の医療費は無料だから医療保険は不要!の落とし穴
我が子が回転寿司店で迷惑をかけることに親が保険で備えることは可能なのか
40代で結婚した家庭の資産活用術
学資保険はなぜお勧めでは無くなったのか
国民年金にも傷病給付がある?コロナ禍によって変わった公的保障
出産育児一時金の改正までにできることは無いのか
第一生命によるM&A ペット保険の市場規模はどこまで伸びるか
コロナ保険の販売停止から見る「少短の保険よりも現金で貯めておいた方が無難だよね」への考察
生命保険は各社商品が似ていて区別がつかないときどうするか
フードデリバリーと自転車保険
あと5年、公的年金を納めましょう!をどのように腹落ちさせるか
「私たちのことはいいから」のなかで、親の資産リスクをどうやって見守るか
ミサイルで被害が生まれたら損保の対象になるか
家計視点から2022年版10月恒例の物価上昇と円安への対策を考える
ブームから時間が経過し、現在のFIREをライフプランからどう考えるか
生命保険視点から見た家族信託制度とは?
保険に加入している人にとって「インシュアテック」はどのような役割なのか
コロナ禍で夫の事業が失敗したとき、妻はどのようにリスクヘッジすべきか
線状降水帯のリスクは全国一律!火災保険に水害給付をつけることの重要性
「公的保障があれば生命保険は要らない」の公的保障は複雑すぎないのか
40代50代で亡くなったとき、老後のために準備していたものはどうなるのかを考える
60歳を超えても働くのがより当たり前に?令和4年在職老齢年金の変更ポイントと生命保険
誰も行き先のわからない為替変動のなか、外資保険は誰にアドバイスを求めるべきか
明日の気温は41℃?生命保険は熱中症を保障できるのか
家族ではない人間が法人保険を使って会社を「継ぐ」ということ
3人に1人はがんになる、という言葉とがん保険の関係
20代30代に「生命保険は何もいらない」という考え方を専門家が解説する

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

工藤 崇の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております